村娘43→絶望
たぶん、今までにないぐらい超絶閲覧注意です。
あと、胸糞悪いはなしなので、注意です。
あたしが連れてこられたのは、ほぼ更地と遺体ばかりになってしまったリナーシス村……の跡地であった。
もはや、残っているのは教会のみである。身体はあたしの言うことを完全に利かないので目の前の光景を認識することしか出来ないのだけれど、その光景だけでもあたしを絶望させるには十分であった。
あたしの家があった場所も、更地と化しているのが目に入ったのだ。
おそらく、教会を残しているのはわざとだろう。まるでショートケーキのいちごを残すかのように残しているのだ。そうでなければ教会を残している意味がない。
絶望をしたとしても、あたしが身体を動かせない以上、あたしは考えることしか出来ない。眉すらピクリとも自分の意思で動かせないのだ。どうしようもない以上は、どうやってこの状態を抜け出すかを考えるのみである。
それにしても、今の状態はものすごく気分が悪い。本当に人形の中に魂だけ閉じ込められたと言っても過言ではない状況だろう。回りも、合流したケリィに、ゴブリン混成軍と、もはやこの状況からの巻き返しは難しいレベルであった。
教会に続く道にはまだあたしの顔見知りの村人が農具を持って通すまいと対峙していた。
「エリシアを開放するんだ!」
ヴィアンさんが声を震わせながら、そう言う。それに対して、あたしは心の中で叫ぶ。お願い、今すぐに逃げてと。ケリィに三宅、それにゴブリン混成軍である。もう、逃げる以外の選択肢なんて無いはずである。
「“エリシア、あの邪魔者を殺せ”」
広瀬がそうあたしに命令する。
そんな、なんであたしが! いや、やめて!
あたしが脳内でそう叫んでも、あたしの身体は広瀬の命令に従って行動してしまう。
「はい、広瀬様」
あたしの身体は腰からロングソードを抜き放つと、農具を持っている村人を殺すために動き始める。それに、アーノルドさんが驚愕する。
「や、やめろ、エリシ……グアッ!」
「おい、エリシア! ギャア!」
あたしの身体は淡々と農具ごとヴィアンさんとアーノルドさんを叩き切る。
そんな! ヴィアンさん! アーノルドさん! ごめんなさい!
あたしは脳内で謝罪するが、身体は次の獲物を探して動いていた。
「ぎゃっ!」「ヒィッ!」「グハッ!」
気付けば、あたしの身体は教会を守るために立っていた知り合いの大人達10人を皆殺しにしていた。目を瞑ることも、狂うことも許されない。なんという地獄だろうか。
その様子にケリィがゲラゲラと笑い出す。
「最高ダ! 最高だヨ! お前ラの絶望で死ヌ顔が見たかっタんだよ! ざまァ見やガれ! 俺様をコケにした罰ダ!」
そう言って、ケリィはあたしが殺したバックバイツさんを足蹴にする。バックバイツさんはケリィのあたしに対する所業を聞いて、すぐに指名手配に動いてくれた恩人だ。あたしが切り殺すことになるなんて、思っても見なかったが。
この中にマーティ兄さんが含まれて居ないだけマシだったろうが、おそらく、今のあたしの身体は何の感慨も無く切り捨ててしまうのだろう。そのことが恐ろしい。
そんな希望も、すぐに絶望へと変わってしまう。もう、男手のほとんど死に絶えた村だ。だから、マーティ兄さんが出てきてしまった。
「エリシア! 何している! 正気に戻ってくれ!」
それに対して、広瀬が「へぇ、あの人がエリシアのお兄さんか」と呟くとこう命令した。
「“エリシア、お兄さんは達磨にして、他をお兄さんの目の前で殺しなさい”」
「はい、広瀬様」
マーティ兄さんの農具を剣で受け止めていたが、あたしの身体は蹴りを放ってマーティ兄さんに間を取ると、マーティ兄さんの四肢を切り裂いた。
「ぎゃああああああぁぁぁぁぁああぁぁっ!」
マーティ兄さんは壮絶な悲鳴をあげると、四肢を失ったマーティ兄さんはどさりとその場に落ちる。
苦悶と絶望の表情を浮かべたマーティ兄さんを尻目に、あたしの身体は残った村人とシーヴェルクさんが連れてきた騎士さんたちを相手に戦い始める。
「ショウ、手伝ったがいいか?」
「大丈夫、エリシアは強いから不要だよ」
「俺ラは高ミの見物ってやツだな」
そう、三宅たちはあたしの体が蹂躙している様子をただ楽しそうに高みの見物をしていたのだ。
「やめろぉ、エリシアァ……! エリシアァ!」
動けないマーティ兄さんの声が聞こえるが、あたしの身体は構わず皆殺しにしていった。
あたしの身体は騎士複数人相手にも剣術だけで普通に対応していた。盾を蹴り飛ばし、首を刎ねる。剣を叩ききり、フルプレートメイルごと騎士さんを真っ二つにしていた。
いや、なんであたしがこんなこと! 止めてええええ! 止めてよおおおおお!
あたしは心の中で血の涙を流していたに違いなかった。
気付けば、マーティ兄さん以外の全員を殺してしまっていた。
「エリシアァ!」
マーティ兄さんが怒りの表情であたしを睨む。
やめて、お願い、睨まないで……。
それに対して、広瀬はさらに残酷な命令をあたしにした。
「“エリシア、彼を一思いに殺して上げなさい”」
「はい、広瀬様」
マーティ兄さんの顔には、怒り、憎悪が張り付いていた。「よくも村を、村のみんなを裏切ったな」と言葉にしなくてもわかるほどである。
そのまま、あたしの身体はロングソードでマーティ兄さんの心臓を一突きにして殺した。
そう、殺してしまったのだ。
例え、身体をあたしの意思で動かせなくても、臭いも手の感覚も、全部伝わっているのだ。
あたしは慟哭することすら許されなかった。
「いやァ、いい見世物ダよ! 救世主ガ実の兄ヲ殺すノは、さイっこうダ!!」
晴れやかな、実に晴れやかな喚起の声を上げるケリィ。
もはや、あたしはケリィに対して恐怖なんて抱いていなかった。何も、無かった。もう、何も感情が沸いてこなかった。
「じゃア最後に、教会ニ居る人間ノ皆殺しモ、エリシアにお願いシようか♪」
「いいよ、もう目前だしね」
「ああ、好きにしたら良い」
楽しそうなケリィに、同意する広瀬と三宅。
ダメ、あそこにはお母さんとシエラが! シエラがいるの!
そんなあたしの願いはむなしく、あたしに命令が下る。
「“エリシア、教会に居る人間を皆殺しにしなさい”」
「はい、広瀬様」
あたしは絶望の中、教会を守る最後の門番である2人の騎士さんを殺しに駆け出した。
あれ、これってノーマルエンドだよねって思ったかた。
安心してください、ノーマルエンドですよ^^;
バットエンドだと、もっと悲惨にする予定でした。
自分で書いてて辛かったので、若干短めです。