表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
村娘だけど実は勇者の転生者でした  作者: 空豆だいす(ちびだいず)
村娘だけど実は勇者の転生者でした
43/155

村娘37→エリシアの仲間

 夕食時、あたしは全員が集まっていることを確認すると席に座る。ビアルもちゃんと来ているようで安心する。


「で、エリシア。話って言うのは何だ?」

「え、夕食の後じゃなくって?」

「気になったままだとおちおちゆっくり食事もできないしな」

「そう、まあ、わかったわ」


 まだ夕食は出揃っていないので、あたしは三宅について話すことにする。もちろん、前世の事については伏せているので、ノーウェル様から聞いた話だけにしておく。

 あの、悪いことがカッコいい事だ、面白いことだと思っている連中である。勇者として召喚されたとしても、100%悪いことにその力を使う筈である。

 金魚の糞①である広瀬は三宅を煽るに決まってるし、金魚の糞②の鈴木は化粧直しをしながらだるそうにしているが、基本的には三宅の後押しをする。

 つまり、どう考えても悪いことしか起きないのだ。

 まあ、この確信は前世の彼の記憶からわかることなんだけれどね。

 あたしはざっくりと脱走した勇者、三宅隆幸の話をした。


「マジか、なんて厄介な……」

「勇者が悪に堕ちたら、それこそ魔王じゃ無いの!」


 ビアルは左手を顔面に当て、ナシャは頭を抱える。メリルさんとシーヴェルクさんは知っていたのかそこまで驚いていない様子だ。


「ナターシア様の手に入れた情報通り、元勇者タカユキはこの街に滞在していたことは特定しています。ですので、リナーシス村に向かったというのも間違いでは無いかと推測されます」

「だが、目的がわからない。何のためにエリシア様の故郷に向かったのか、理由が推測できる情報はないのか?」


 確かに、そんな快楽主義者な連中が、なんで何もないあたしの村まで向かう必要があるのかは分からなかった。


「うーん、もしかして、エルに何か恨みがあるとか?」

「なんで会ったこともない人に恨まれなきゃならないのよ」


 まあ、恨んでいるとしたらアルフレッドぐらいなものだろう。あたしが逃げたせいで、あたしとの婚約がご破算になったわけだし。あと考え付くのはとくには無いかなとあたしは思った。何か一番重要なことを忘れている気がするけれど、思いつかなかった。あのことはあたしの中では封印されているのだ。

 あたしの様子に、メリルさんは原因が思い浮かんだらしい様子を見せたが、黙っている様子であった。顔に出ていたのかもしれない。


「……おそらくは、リナーシス村自体に恨みがある人物かと」

「どうなると、対象は絞れないわね」

「ああ、村に恨みを持つ連中なんて、それこそはいて捨てるほどいるだろうしな」


 侍女として雇われなかった奴隷や、他国に売り払われた奴隷は誰しもが思い至る。あたしの見える範囲にはいなかったが、もしかしたら差別されていた獣人なんかは村自体を恨むなんていうことは普通にあるのだ。


「メリル嬢は恨みによる怨恨の線でお考えですか?」

「ええ、それが一番確率が高いと思います。それに、堕勇者が興味を持たれてそれに共謀していると考えた方がしっくり来そうです」

「なるほど、それならば筋が通りそうですね」


 やっぱり、三宅たちは教会でも要注意人物扱いなのだろうか? あたしがそんなことを考えながらシーヴェルクさんを見ると、解説してくれた。


「堕勇者の4人は教会の大司祭以上の役職と、神官騎士には連絡が着ております。人類を救うつもりの無い堕勇者など、魔王と同じ厄災でしかありませんからね。俺には、堕勇者の討伐も任務のうちに入っております」

「そ、そうなんだ……」


 『人類を救うつもりの無い勇者は、魔王と同じ厄災』そう判断されるのが妥当なのだろう。

 しかし、秋葉原くんまで堕勇者認定されているのか、可愛そうに。

 召喚された(よばれた)側からすれば、ふざけるなと言う話であるけれども、こっちとしては魔王に対する兵器として召喚した(よんだ)のに、勝手にされたら兵器としてはポンコツもいいところである。勝手に動くならば廃棄処分と言うことであるのだろう。


「ビアル、ナターシア。これはこの国の王族および教会の極秘事項であるから、堕勇者の存在は広めないでくれ。ギルドにも賞金首にしないように通達してあるのは、堕勇者が冒険者では敵わないと判断されたからだ」

「それって……」

「我々のパーティで戦うならば、俺かメリル嬢のみで当たると言うことだ。エリシア様にもなるべく戦って欲しくない。それに、リナーシス村にいると所在がハッキリしているならば、教会からの神官騎士団の派遣も可能だろう」

「ガチなやつだな、こりゃ」


 シーヴェルクさんの判断に、ビアルは若干引きながら聞いている。


「ただ、早馬で来たとしても2日はかかる距離だ。堕勇者に4日も与えてしまえば、最悪リナーシス村は滅んでしまうだろう」


 あたしとしてもそのシーヴェルクさんの憶測はどうかと思う。すぐに飽きてしまうから、いてもあと1日待てば良いんじゃなかろうか。そしたら、三宅の居場所も不明になるのだろうけど。


「だから、現場に一番近い我らと、この街の神官騎士数名でリナーシス村に行き、タカユキを取り押さえる必要がある」


 決意をこめてそう断言するシーヴェルクさんの姿を見て、あたしは悟ったのだ。

 どうやら、あたしに『運命の日』が来たらしいということを。


 食事は普通にみんなで食べた。話題は主に三宅とその仲間についての推察である。ノーウェル様からの離して、三宅は相手を吸収して能力を奪う能力であることがわかっている。広瀬と鈴木に関しては能力の名称だけがわかっているくらいで、実際どのような能力かは判断がつかなかった。

 三宅が【オールフォーワン】、広瀬が【カンニング】、鈴木が【オールイズマイラブ】と言う能力名だそうだ。


「能力名から、どんな能力かわかりそうなものだけれどね」


 あたしは部屋で横になりながら能力の推測をしていた。と言っても、能力名はダルヴレク語でも種族共通交易語でもない。前世の世界で広く使われていたエイ語である。前世の彼は、残念ながらエイ語の成績が悪かったため、あたしにもあんまり理解できていなかったのだ。

 ただ、【カンニング】についてはどういう概念かはわかっていた。情報を盗み見ることである。情報を盗み見れる条件についてはわからないけれども、広瀬に関しては情報を盗まれないように気をつける必要があるだろう。

 そうそう、能力と言えば、あたしの【魔女術(ウィッチクラフト)】についても、実際どういう能力なのかはいまだにわかっていなかった。

 直感で推測はしているけれども、当たっているかはわからない。

魔女術(ウィッチクラフト)】についてはこんな感じで推測している。


 ①新しい魔法を作り出すことが容易である。その際に魔法に関する研究は不要である。

 ②魔法の適正が高くなる。

 ③魔法に関する理解が高くなる。魔法を見てどういう魔法か解析することが出来る。


 なんとも、この世界にいないと発揮しない能力である。まあ、チート能力であると言えばそうなんだけれどね。


 ああ、この際だ。あたしの手持ちのカードを確認しておいた方が良いだろうな。

 あたしは自分の手の甲を見つめながらそう思った。前世の彼が好きな例えならば、決戦前の宿屋な気分である。だからこそ、確認しておきたかった。


 あたしの祝福である《英雄》は、成長チートの祝福である。あたしが貴族のマナーの習得が異様に早かったのも、ロングソードの扱いが短期間でかなり上達したのも、この祝福のおかげである。ここまで移動する中である程度戦い方もわかってきたおかげか、理性の無い魔物相手で後れを取ることはなくなった。人間や知性のある魔物だと話は違ってくるのだけれどね。

 魔力も、使いきるまで使い切って回復させると、倍近く伸びることがわかったためその訓練をした結果、今ではビアルのような熟練の魔法使いよりも少し少ない程度まで伸ばすことが出来た。

 後は、隠しだまである聖剣である。名前はまだ決めていないけれどね。あたしの魔力量の増加に伴い、聖剣の切れ味が増していたのだ。それに、聖剣に魔力を通すと光が溢れてくることがわかった。このまま振るえば光の本流を発生させてなぎ倒していきそうな勢いである。

 ただ、《勇者》の祝福に関しても同じような成長チートを持っているようで、《英雄》は《勇者》の劣化版であることはわかっていた。だからこそ、三宅がどれぐらい強くなっているかがわからないのだけれどね。


 後は、あたしの仲間である、メリルさん、シーヴェルクさん、ナシャにビアル。

 女神様から勇者の仲間を作ってはいけないと厳命されていたので、作った仲間である。

 メリルさんは《細剣客》の祝福を持っており、身のこなしだけでなく剣術も相当に強い。あたしではとても歯が立たない域である。翻弄しながらレイピアで弱点を突く戦いをメインにおいている。とても貴族令嬢とは思えない強さだけれども、この国フェルギンは優秀であれば優秀であるほど偉い国である。

 シーヴェルクさんは優秀な盾役兼回復薬である。戦闘の全体像をちゃんと捕らえているとの事で、盾役をやりながらも回復のタイミングはバッチリだと、ナシャが言っていた。

 ナシャは優秀な近接斥候で、主に戦闘以外の面でわなの発見・解除、敵感知能力の高さがすごかった。まあ、街道ではまったく使っていなかったけれど、それ以外ではかなり役に立っていた。戦闘ではメリルさんと同じく翻弄して攻撃するのが主体のようであった。

 ビアルはあたし以上に強力な魔法を使える魔法使いである。あたしの足りてないところを的確に補ってくれる魔法使いで、後衛で砲台が2台あれば戦況は大きく変わるのだった。


「うん、きっと大丈夫よね」


 みんな、現在のあたしよりも強い人たちばかりである。まだ結成して7日もたっていないけれど、強いと言うことは保障できる。

 さっさと三宅たちを追い出して、リナーシス村を救い、シエラといちゃいちゃするためにも、あたしは明日は『運命の日』を乗り越えないとなと改めて思ったのだった。

今回の一連の話は割りと重たくなる予定なので、途中休憩を挟みつつ読むと良いかもです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ