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村娘だけど実は勇者の転生者でした  作者: 空豆だいす(ちびだいず)
村娘だけど実は勇者の転生者でした
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村娘33→はじめてのくえすと4

残酷な描写がありますので、ご注意ください。

 受けるといったからには、あたしたちも仕事をする必要がある。あたしたちの仕事は簡単に言えば、騎士の部隊が来るまでにゴブリンの数を適度に減らすことである。削りすぎれば当然ながら逃げてしまうし、削らなければ村が襲撃される。その境目を見極めてゴブリンの数を減らすのだ。

 それに、もしかしたら攫われた女の子を救えるかもしれないのだ。最初の子は無理かもしれないが、昨日攫われた子ならば間に合う可能性がある。

 というわけで、あたし達はシーヴェルクさんと合流して、対策会議を開いていた。


「それじゃ、作戦を考えましょ」


 あたしの言葉に、パーティメンバーがこっちを見る。


「今回の勝利条件は、

 少なくともゴブリンを逃さない程度に数を減らすこと、

 ゴブリンの群が襲撃ができない程度に戦力を削ること、

 この条件の両立ね」

「なるほど、騎士団を呼ぶことになっているから、その時間稼ぎが主な目的だな。実際に減らすべき数は計測していないからわからない点が問題だがな」

「そうね、そこが問題なのだけどね……。あたしもここまでなってしまう規模は見たことないし……」


 さすがシーヴェルクさんである。エルウィンさんと同い年なだけはある。関係ないか。


「エリシア様、この規模ですとおおよそ100以上になっていると推測されます。村食い規模になると103匹のゴブリンが狩られたと言うのが王国の記録にも載っています」

「100以上」


 ものすごい数である。ゴキブリかよと思うけれど、似たようなものである。違うのは被害の規模であるけれども。


「ですので、おおよそ20ぐらい狩れば2日は持つでしょう」

「20ぐらい」


 そう考えると、先程討伐したゴブリンを含めればあと5匹程度という事になる。


「それにしても、どこからゴブリンは補給されるのかしら?」

「一説によると、近隣のゴブリンの群れを取り込んで大きくなるとされていますね」

「魔物の生態って解明されていないことも多いからね。身近なゴブリンでも、現状ほとんど解明されていなかったりするんだよ」


 確かに魔物にしても動物にしても生態について気にしたことはない。そういうものを気にするのは、裕福な研究者ぐらいなものだからである。どちらかというと家畜の育成方法についての研究をしてほしいものである。

 まあ、それはそれとして。

 大きなゴブリンの群が周囲のゴブリンを引き寄せる呼び水になっているようである。


「本隊のゴブリンを20匹潰す感じでいいのね」


 ナシャがそういうと、メリルさんはうなづいた。


「ええ、そういう事です。先ほど討伐したゴブリンは、大きい群れに集まっていたものだと推測されます」


 あ、そうなんだ。確かにあのゴブリンの群れはウーダン村に向かっている様子だったものね。

 それじゃあ、あの立派な装備とかはどうしたのだろうか? あたしは疑問に思ったけれど、今の段階では断定できる要素はなかったので黙っている事にした。


「それじゃ、まずはゴブリン討伐ね」


 ナシャの言葉に全員がうなづく。20匹程度のゴブリンを狩るというのは骨の折れる作業になるだろうなとあたしは思ったのであった。


 ゴブリンが生息するのは、基本的に森である。ゴブリンは妖精族なだけあり、森以外に生息をすることはない。

 つまり、ウーダン村の近場にある森、村の人は静謐の森と呼んでいる場所にあたし達は向かった。途中、ゴブリンがいたが、3匹程度なら遠くからあたしとビアルが魔法で倒すことができたので、そこまで苦労することはなかった。

 本番は森に入ってからであった。


「入り口は見事に封鎖されているわね」


 あたしから見れば何の変哲も無い森の入り口の獣道だったけれど、ナシャはそう断言した。


「見ただけでもわかる程度には罠が張られているわ。迂闊に近寄れば、あっという間に身動きが取れなくなって、ゴブリンの群れに一網打尽にされるわね」

「なんでわかったの?」

「まあ、トレジャーハントしてるとこう言う罠はよく見るし、匂いもはっきり残ってるしね」

「匂い」


 そこはさすが狼系の獣人と言ったところか。


「回り道しましょ。私が罠がなさそうなところを探すわ」

「そうですね。ええ、ここはナターシア様に従うのがよろしいかと」


 あたしはうなづいた。


「メリルさんは罠に気づいた?」

「いえ、あからさまな1つ程度しかわかりませんでした」

「そ、そうなんだ……」

「ええ、さすがはナターシア様です」


 あたしの意図した通りに仲間が役に立って安心する。

 ナシャに先導をしてもらい、しばらくするとナシャが立ち止まった。


「ここなら大丈夫そうね」


 場所は、森と林の中間地点になっていた。獣道すら無い場所である。


「それじゃ、ゴブリン討伐20匹、頑張ろう!」


 あたしがそう言うと、みんなはうなづいた。

 それから森の中を探索して、ゴブリンを駆除する作業が続いた。ナシャのお陰で罠は見つけ次第解除され、あたしとビアルがメインでゴブリンを駆除していくと言った感じになった。

 そんな中、森の中で少しひらけた箇所にたどり着いた。そこで目に入った光景に思わず「うっ」っと声を漏らしてしまった。

 明らかにレイプされた上で殺された女性の遺体が複数人分放置されていたのだ。女性の顔は無残にも目がくり抜かれていたり、鼻の穴が拡張していたりととても見れるものではなかった。白い粘っこい液体は、確実にゴブリンの精液であろう。


「……妖精族なのに性欲あるのね」


 あたしはボソリと呟いたが、誰も反応しなかった。

 遺体の数は13人で、さらわれた人数は16人、あと3人はもしかしたら無事かもしれないと言うことがわかった。

 この確認を行ったのはシーヴェルクさんである。


「……その魂よ、女神様の元に還らん事を祈る」


 と、シーヴェルクさんは遺体に対してなんらかの詠唱を行なっていた。これはあたしも知っているのだけれど、この世界にはアンデットが存在する。神官による浄化を受けないと死体に悪い魂が宿り、ゾンビになったりするのだ。そのため、神官職は浄化の魔法を遺体にかけるのだ。

 これは、一般的な事であり、墓地も教会が管理していたりするのも、これが理由である。

 浄化の魔法をかけられた遺体はしばらく光に包まれる。これで浄化の魔法がきっちりとかかったようである。


「では行きましょう、エリシア様。他のご婦人を助けるのも重要な使命です」

「そうね」


 この場所の探索をあらかた終えたあたしたちは、他の攫われた女性を探すべく、森の奥に踏み込んで行った。

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― 新着の感想 ―
[一言] 妖精族とは一体……。
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