村娘31→はじめてのくえすと2
戦闘描写はエリシア目線です。
わかりにくいのは仕様です。
何気にPVが25,000行っててびっくりしてます。頑張って毎日更新に戻さねば……!
ウーダン村に向かう途中の道中、ナシャが「待って、敵意を感じるわ」の一言で、馬車の中が緊迫する。
あたしが外を見ると、緑色の影が遠くに見えた気がした。
「エリシア様、どうやらゴブリンの斥候のようですね」
「撃退する必要があるかしら?」
「襲ってきたら、打って出ればいいだろう」
ふむ、あたしも見えないと誘導できるような魔法は使えないし、実際に敵対してきた時でいいかなと結論をつける。
まあ、ゴブリンの集団が襲ってきたのはすぐだったんだけれどね。
「ゴブリンの群れだ!」
行者のおじさんの声で、あたし達はすぐさま馬車から飛び降りる。初めての集団での戦いである。
それぞれの装備を構えて、あたし達は馬車の前に躍り出た。
ざっと見た感じだと、ゴブリンが15匹である。弓が3匹、剣が7匹、ナイフが5匹である。
ゴブリンは普通こんなに立派な武器は持たないはずである。ならば、これは村から奪った武装であるだろう。
「エリシア様」
「ええ、たぶん、この群れは他の村を壊滅させたことのある群れね」
「我々も積極的に前に出るべきだな、メリル嬢」
「そうですね。なるべくエリシア様たちの活躍の場があるように手加減しつつ出来ますか?」
「ああ、やってみましょう」
メリルさんとシーヴェルクさんはそういうと、主にけん制に回る。
あたしはロングソードを腰の鞘から抜いて、魔法を唱える。あたし自身の身体強化ならば、無詠唱でできるはずだ。ルーンを展開して自分の身体能力の底上げをはかる。
「《肉体強化》!」
あたしの体が光に包まれて、力が宿った気がした。普段出せない力を出すための魔法である。掛けてみてわかったけれど、これは思ったよりも動きやすくなりそうである。あとは、ナシャにもかければ良いかな? 他人にかける場合はちゃんと詠唱した方が良いだろう。杖は買っていないので、ロングソードを杖に見立てて詠唱魔法を唱える。
「《肉体強化》!」
詠唱が完了すると、ナシャにも同様の光がかかる。
「エリシア、ありがとう!」
あたしが魔法を詠唱している間に、弓兵ゴブリンはメリルさんが始末してしまった。
「エリシア様、ナシャ様は他のゴブリンの討伐をお願いします。遠距離の邪魔者は始末しましたので」
「早いよ! あたし、戦況についていけていない!」
まあ、そうは言ってもゴブリンのヘイトはメリルさんに向いているのだけれどね。メリルさんはすばやい身のこなしであっという間にこっちに戻ってくる。つまりはそのままゴブリンのヘイトがこちらに向くわけで……。
あたしは手に握った剣を振るう。武器を持っているとしても、達人ではないのだ。騎士さんに叶わないあたしでも対処できる。あたしに対しては3匹のゴブリンが襲い掛かってきた。どれも獲物は剣である。ならば、あたしは対処のしようがある。剣を装備しているとしても所詮はゴブリンである。少し前のあたしのように棒っきれを振り回しているのと何ら変わりないのだ。
「えいっ、やっ、はぁっ!」
騎士さん達との練習で剣の速さには慣れている。ならば剣を目視で回避するのはそこまで難しい話ではなかった。回避するついでに、剣を当てれば良いだけである。
ただ、やはり15歳の女の腕力では叩き斬ると言うわけにはいかなかった。斬り抜いたつもりだったけれども、肉しか切れた感じがしなかった。
なので、すぐさま詠唱する。
「《火炎球》!」
やはりあたしは剣で戦うよりも魔法が向いているなとしみじみ感じた。
ナシャの方を見ると、ナイフを持っている斥候ゴブリン達に対して上手く立ち回っている。避けて短剣で斬りつけるといったルーティーンでどんどんゴブリンを戦闘不能にしていった。やはり元々パーティを組まずに一人でトレジャーハントを行ってきただけはある。こういう1対集団の戦いにも慣れているのだろう。
ビアルはというと、シーヴェルクさんが戦っているゴブリンに対して魔法で援護している。ビアルは詠唱魔法しか使えない。長い詠唱をするのでシーヴェルクさんから距離をとったゴブリンを削るといった方法のようである。
メリルさんは、何故かお茶の準備と、逃走しようとしたゴブリンの掃除をしていた。メリルさんの場合は強すぎて何をしているのかわからない状態である。
結局、20分もしないうちにゴブリンの偵察部隊は壊滅させたのであった。
「パーティとは一体……」
なんというか、連携も何も無いパーティだなとあたしは思った。メリルさんが突出しているのがやはり気になるが、そこは気にしないで置く。気にしたら、メリルさんだけで良いんじゃないかなってノリになっちゃうしね。
「まあ、確かに。これじゃあ完全に烏合の衆ね」
「みんなばらばらだったものね」
こういうのはゴブリンの比較的小さい群れだったから討伐できただけの話である。もっと大きい群れだったり、魔王と戦うのにこれではどうしようもない。といっても、あたしもそこまで指示が出せるほど戦闘経験も無いので、どこを改善したら良さそうかを考えつかなかった。
とりあえず、今後の課題としてゴブリンの遺体を通路から片付けよう。
「あ、エル、待ってね。討伐証明部位を切り取っておかないとね」
「討伐証明部位?」
「そうよ。ゴブリンの場合は耳ね」
そう言いつつ、ゴブリンの耳を削いでいくナシャとビアル。
「討伐証明部位を提出すると、ギルドから正式に討伐数をカウントしてもらえるのよ。当然ながら昇級にも関係してくるから、全身消し炭はやめておいた方が良いわ」
「なるほど」
確かに、ビアルが魔法で倒したゴブリンは頭部だけが綺麗に残されている。比べてあたしは消し炭にしてるので、骨もボロボロな状態である。
「次からは気をつけるわ」
「うん、よろしくー」
あたし達は証明部位を回収した後、ゴブリン達が使っていた装備を馬車に放り込み、魔法で遺体を消し炭にして、その場を後にしたのだった。




