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村娘だけど実は勇者の転生者でした  作者: 空豆だいす(ちびだいず)
村娘だけど実は勇者の転生者でした
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村娘30→はじめてのくえすと1

 半日ほど経過し、最初の街であるアッカインに到着した。アッカインはエストフェルギンと似たような町並みで、魔力灯が普通に使われている街である。

 あたしたちは停留場に馬車を泊めると、早速冒険者ギルドまで向かった。


「エリシア様、私は馬車を守るために残ろうと思います。私の力が必要でしたらお声掛けください」


 ということで、シーヴェルクさんは馬車でお留守番である。2台ほどフェルメリア家の護衛の乗った馬車があるから、大丈夫だとは思うんだけれどね。

 アッカインの冒険者ギルドは、エストフェルギンのものに比べると小さいものであった。酒場と受付は別建てのようで、繋がってはいるが通路を挟んで別の建物に移動すると言った形になっていた。

 受付の方に直接入れたので、あたしたちはソッチの建物に入り、クエストボードの確認を行う。

 ナシャ曰く、クエストボードの確認でその地域近辺の状況がある程度わかるらしい。【銀級】クエストの討伐依頼の数、討伐する魔物や動植物の種類、依頼の場所は確認しておいた方が良いらしい。


「なるほどねー」


 あたしが感心していると、ビアルが一枚のクエストの書かれた依頼書を指差した。


「エリシア、あの依頼受けないか?」

「え、なぜかしら?」


 記載されているのは、ゴブリンの群れの討伐である。ゴブリンは妖精族に属する魔物である。単体の危険度はそれほど高くないが、集団で人間の村を襲い、村を壊滅させることもある厄介な魔物である。脅威度は人間の盗賊と同程度であると言われている魔物だ。


「お互いの戦力を確認するというのもある。エリシアがどれぐらい戦えるのかとか、俺やナシャがどれほど役に立つのかと言うのを確認する必要があるだろ?」

「確かに、それもそうね。集団戦ならお互いどういう風に補い合えば良いかの確認にもなるし、良いかもしれないわ」


 あたしはビアルに言われて納得した。魔王と直接戦うのは勘弁してもらうとしても、勇者を魔王まで導くのはあたしが出来る範囲である。ならば、自分のパーティがどのレベルで戦えるのかを知るのはいいことであろう。あたしも知っていれば明確に指示を出せるわけだしね。


「じゃあ、その依頼を受けましょうか。って鉄級の冒険者が受けられる仕事なのかしら?」


 あたしが聞くと、ビアルは「大丈夫」と言う。


「俺がそもそも銀級だしな。冒険者パーティはそのパーティに所属するメンバーの最大ランクのクエストを受注できるのさ。だから問題ないよ」


 そういう仕組みなのか、とあたしは納得した。

 実際冒険者であるのはあたしとナシャ、ビアルの3人だけである。シーヴェルクさんは教会の人間だし、メリルさんは伯爵令嬢であるので、冒険者登録は行っていないだろう。

 というわけで、ビアルにクエストの受注を任せることにした。ビアルに頼むと「ああ、ちょっと待ってな」と言って、すぐに受注された。

 依頼の内容はこんな感じである。


【銅級依頼】

 ゴブリンの群れの討伐

 報酬:3,000エリン

 場所:ウーダン村近辺の森

 詳細:ウーダン村の近くでゴブリンの群れが確認された。畑が荒らされたり、女性が行方不明になる等実害が出ているので、早急な討伐を依頼したい。群れとの戦いのため、4人以上のパーティでの受注が望ましい。


 全身甲冑騎士が喜んで推参しそうな内容だと思ったのは、もちろんあたしの前世の知識からだろう。

 こういう依頼は村ではよく出される依頼である。リナーシス村でも、たまにそういう被害が出てゴブリン討伐を依頼していた。3,000エリンは出しすぎだと思うけれど、それだけ切羽詰っていると言うことだろう。

 ゴブリンの被害には段階があるのだ。

 最初は農作物が消える。ここで対処できれば安心ではあるけれど、この程度だと冒険者に依頼するには費用対効果的に損が大きい。

 次は家畜が殺される。普通はこの段階に入って冒険者に依頼する。

 最後に女性が消える。もちろん、被害女性は悲惨な目にあうのだけれど、この段階で討伐できないと、村が滅ぼされるのだ。もはや依頼する以外に手は無い。

 冒険者にとってはゴブリン程度であるだろうけれども、村娘のあたしからしてみれば十分に恐ろしい存在である。何といっても、知能を持っているからである。考えて村を襲うのだ。だからこそ、冒険者を雇って守ってもらうのである。

 ……まあ、単体ならばあたしもケリィから逃げる最中に何匹か炭にした記憶があるけれどもね。あたしみたいに魔法が得意ならば1匹程度なら簡単にあしらえるけれど、普通の村人にとっては1匹だけでも危険であるのだ。


「内容から、結構このウーダン村って悲惨なことになってそうね」

「あ、エルもそう思う?」

「だって、女の人が消えているんでしょ? 下手するとホブゴブリンやゴブリナ辺りが発生しているかもしれないわ」


 ホブゴブリン、ゴブリナはゴブリンの上位種である。村人なら出会ったらすぐに死を覚悟しないといけないレベルの魔物である。ゴブリンよりも知能が発達しているし、そもそもゴブリンから進化する魔物なのだ。

 リナーシス村では被害にあったことはないけれど、噂では滅ぼされた村から逃げてきた人がホブゴブリンが居たと報告して大騒ぎになったことがある。このレベルだと確か国に要請して騎士を派遣してもらい討伐してもらう必要があったはずである。


「げ、まあ、シーヴェルクさんやメリル様がいるし、何とかなりそうだけれどね」


 あたしがメリルさんを見ると、頷いた。それは余裕ですと言う意味なのかな? 確かに二人ならば余裕そうではあるけれど。どちらにしてもホブゴブリンまで出てきた場合は3,000エリンでは少なすぎるだろう。


「大丈夫だって。もしホブゴブリンが出てきたら、追加で報酬を要求すればいいんだしさ」


 そんなものだろうか? まあ、出ないことを願うばかりではあるけれども。そんなことを話していると、ビアルが受付を終えて戻ってきた。


「無事受注できたぜ。それじゃあ、シーヴェルクさんもつれてウーダン村まで行こうか」

「了解。ウーダン村までは遠いのかしら?」

「いえ、アッカインからは1時間ほど馬車で到着するはずです」


 メリルさんからの回答を受けて、あたしはこれから向かうことに決めた。昼食は馬車の中で食べてしまえば良いだろう。


「それじゃあ、サンドイッチでも買って馬車に戻りましょうか」


 あたしの返答で、早速ウーダン村まで向かうことになった。

今回は詳細に説明できる人物がいないため、人物紹介はありません。

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― 新着の感想 ―
[一言] ゴブリンたちが妖精族ということで原典のようにイタズラ小僧な魔物かと思いましたが、昨今の小柄な蛮族という様式なのですね。 ところで原典においては、ホブゴブリンとは力強いゴブリンのことではなく、…
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