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村娘だけど実は勇者の転生者でした  作者: 空豆だいす(ちびだいず)
村娘だけど実は勇者の転生者でした
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村人25→出発準備

 その日の夜は、なぜかあたしは一人で寝れなかった。こんな事は幼い頃にファンガモン屋敷の怪談の話を聞いて依頼だった。寝ようとすると、ケリィの顔と汚い勃起したバベルの塔が過ぎり、体が震えて飛び起きる、と言うのを繰り返していた。


「か、完全にPTSDになってるし……」


 心的外傷後ストレス障害、なんて医療の言葉はこの世界には無いけど、あたしは口からするりとその言葉が出てきた。

 このままでは寝れそうに無いため、あたしは仕方なく夜の王城の散歩をする事にした。

 はぁ、ケリィの手配書なんて見なければよかった。

 ただ、あたしの直感では、確実にケリィと対決する場面が想像できる。確信めいたものがあるのは、ある意味運命的なのだろう。


「ケリィと戦うとか……ねぇ……」


 今のまま戦いになったとして、あたしはあの時のように動けるのか不安になった。次は犯しに来るのではなく、殺しに来るはずである。犯す女を傷つけないようにするのは、なんとなく理解できる。だからこそ、あたしも逃げることができたのだ。じゃあ、殺しにきたら?


「……今のままじゃあ確実に殺されるわね」


 恐らく、動けないだろう。恐怖で体が震えて。ケリィの実際の技量はこの目で見たから分かるが、確実に強い。今の私じゃ相手にならないだろう。過大評価かもしれないけど。


「おや、夜の散歩ですか、エリシア」


 あたしが歩いていると、声をかけてきたのはエルウィンさんだった。


「あ、エルウィンさん……」

「……本当にどうしたんですか? 顔色が優れないのに歩き回って」


 エルウィンさんが慌てて駆け寄ってくる。今は薄着なのか、彼の分厚い筋肉を感じ取ってしまい、あたしは口から思わず「ひっ……!」と声が出てしまった。

 そんなあたしの様子に気づいたのか、素早く離れるエルウィンさん。


「エリシア、もしかして彼の手配書を」

「う、うん。目に入っちゃった」

「なるほど、彼の手配書を見て、恐怖が巻き戻ってきたのですね。おい、メリル嬢を呼んでこい」

「はっ」


 エルウィンさんに命令された何者かは敬礼をすると闇に消えた。あれは誰だろうか。


「メリル嬢はすぐに駆けつけてくると思いますので、エリシアは僕としばらくお話をしましょうか」

「はい……」


 こんな愁傷なのはあたしらしく無いけれど、一人きりだと考え過ぎてしまう。メリルさんが来るまであたしはエルウィンさんと雑談をしたのだった。

 結局、その日はメリルさんに添い寝してもらってようやく眠れたのだった。

 メリルさんは苦笑しながらも、「やはりエリシア様も15歳の女の子なんですね」と安心したような表情をしていたのはなんでだろうか?


 翌日はケリィへの恐怖を拭うために、稽古とマナーの練習で時間を潰した。一生懸命無心で剣を振るうことで、なんとかあたしはいつもの平常心を取り戻すことができたのだった。

 たぶんだけれど、あたしの中の男性に対する恐怖と言うものの蓋が外れてしまったのだろう。今回はすぐに立て直せたけれど、本人を見てしまった日には恐怖で這いずり回る確信がある。こう言うのは時間が解決する物だけど、あたしにはまだ時間が必要だったらしかった。


「エルウィンさん、ご迷惑をおかけしました」


 あたしはその翌日の朝にエルウィンさんを見かけたので、謝礼をする。今はエルウィンさんに対して恐怖心は無かった。


「いや、大丈夫ですよ、エリシア。こう言うものは時間が解決するものですしね」


 優しく頭を撫でてくれるエルウィンさん。恐怖心が湧いてこなかったのを感じ、あたしはにっこりと笑う。どうやらちゃんと臭い物に蓋をすることができたらしい。


「ありがとう、エルウィンさん」

「いえ、エリシアが元気になるならそれが一番ですからね」


 慰めてくれる素敵な騎士なんて、普通の女の子なら一発で惚れるだろう。今はあたしはそんな気分では無いだけで、ありがたいなとしか思っていなかったけど。


「そう言えばエルウィンさん」

「はい、どうしました?」

「仲間を探しておくと言うことだったけど、冒険者ギルドに行けば良いのかしら?」

「ええ、そのように手配していますよ」


 さすがはエルウィンさんである。


「何時頃に行けばいいのかしら?」

「昼には集合と言っていますので、まだ少し時間に余裕がありますね」


 ならば、装備を整えておくかと思うあたし。と言っても、ロングソードを腰にさして、前線でも戦えるように鎧を見にまとうだけであるが。

 ちなみに、魔力の関係で多くの魔法使いは鉄製の装備は身に纏わない。魔力と鉄の相性が悪いためだ。鉄は魔力を吸収しやすいためだと言われている。なので、あたしが装備するのは皮の鎧になる。防具としては心許ないけれど、そもそもあたしは後衛である。いや、どっちもこなせるから中衛になるのかな? ちなみに鎧は王家特注の品らしい。いったいどんな魔物の皮を使ってるのかあたしにはわからないけど。

 あたしの髪はシニヨンの変形である三つ編みで囲った花のような形にセットされた。確かに動きやすいんだけどね、セットに10分はかかっていた。


「メリルさんが毎日セットしてくれるの?」

「もちろんですとも。その方が動きやすいでしょう?」


 単純なシニヨンにしないのは、その方が華やかで貴族らしいかららしい。


「まあ、確かに」

「でしょう。さ、できましたよ」


 この髪型にするだけで凛々しさが若干上がる気がする。と言うか、あたしの長めの髪をよくここまで纏められるなと感心する。


「それじゃあ行きましょうか。エリシア様」

「そうね。とりあえず、故郷の両親にちゃんと報告をして、それからね」

「了解しました。他の勇者様も東に向かわれた方は少ないので、丁度いいかと思います」

「そ、そうなんだ」


 まあ、その方が都合がいい。運命の日と言うのを乗り越えて、ようやくさつきさん達と肩を並べて戦えるのだからね。

 と言うわけで、あたしとメリルさんは新しい仲間を加えるためにも、エストの冒険者ギルドに向かうのだった。

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