表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
村娘だけど実は勇者の転生者でした  作者: 空豆だいす(ちびだいず)
村娘だけど実は勇者の転生者でした
22/155

町の観光3

この小説って異世界(恋愛)ジャンルなんじゃ無いかなって思ってきました笑

 無事、目的の魔道書とおまけを購入し、あたしたちは馬車で次の場所に向かう。

 観光名所めぐりと言うやつである。ひよりさんからスマホも借りているし、しっかりと役目も果たさなきゃである。この時間は「LINEの通知」というものが無いのは、みんな一生懸命訓練をしているからなのか。最後のメッセージが


「あ、ごめん、エリシアちゃんは返信できなかったね*.+゜.(@´σωσ`).゜+.*」

「帰ったら写真いっぱい見せてね*。ヾ(。>v<。)ノ゛*。」


 と言う美来さんからのものであった。あたしだからニホン語は読めるけれども、彼女らは自分がダルヴレク語を話している認識は無いのではないのだろうか? 送られてきている絵も、ニホン語が書かれているので、たぶん無いのだろうけど。それに、ダルヴレク語の文字をスマホで送りあうと言うのは不可能だろうしね。そんなIMEは搭載されていないだろうし。……IME?


「しかし、その魔道具は何ですかね? 映像を保存する機能以外にも色々複雑な機能がありそうですけれど」


 馬車の中でエルウィンさんがようやくその話題を振ってきた。すでに2つぐらい観光地をめぐっている。もはやエルウィンさんとのデートになっているけれど、素敵な騎士様にエスコートされて喜ばない女の子は居ない。当然、あたしも例外なく嬉しいに決まっている。

 おっと、話がそれた。


「勇者様が遠隔地でも連絡を取るための道具みたいね」

「ふむ、わが国にはそのような道具は無いから、余計に気になりますね」

「おそらく、技術的な内容は勇者様方に聞いてもわからないと思うから、再現は出来ないと思うけどね」


 あたしが見た感じだと、当たり前ではあるけれども魔術的な仕掛けは無い。

 転生前の世界の言葉でちゃんと説明をするならば、大気中に漂うマナを「充電器」を指す「コネクタ」部分から吸い取って「電池」にしているように見えるけどその変換の仕組みや「電波」がどうなっているのかについて魔法的な力は発生していない。と言ったらわかりやすいのかな。

 あたしの世界にも原始的なブツリ学は存在するけれども、圧倒的な魔法学に上書きされて、カガクの発展は望めそうに無いしね。あたしとしてはブツリもカガクも面白いのだけれど、こればかりは仕方の無いことである。


「あれ、「デンワ」も無いのかしら?」

「「デンワ」? ですか?」


 ふと、思い至ったことである。よくよく考えれば街灯があるのに「デンワ」がないのはおかしな話である。と思って、それは前世の世界での常識だと思い至る。

 前世で読んでいた本の中にあった伝記によると、デンワを最初に考案した人物グラハム・ベルが生きていたのが18世紀であるし、デンワを普及し、デン灯を普及したのがアルバート・エジソンな訳であるから、「デン灯」と「デンワ」はセットのイメージが強い。

 だからこそ、その考えに思い至ったのである。


「ごめんなさい、忘れてください……」


 あたしは失言に対して謝罪する。最近は前世の常識があたしの感覚に混ざってきているのだ。村ではそんなことは無かったのに、何故だろうか。やっぱり、勇者様との交流が原因なのだろうか。


「……ふむ、エリシア。何か悩みがあるのなら、私に相談してください。陛下から護衛を仰せ使っておりますが、個人的にも私はエリシアの味方ですから」


 ニコリと微笑むエルウィンさんに、ドキッっとしてしまう。そして、ドキッっとしたあたしに安心する。だって、あたしはまだ自分が女であることを認識しているのだから。まだ、エリシアが主導権を握っているということなのだから。


「ありがとう、エルウィンさん」


 あたしが微笑むと、エルウィンさんも微笑み返してくれる。


「……よかった。私も微力ながら力になれたようだ」


 エルウィンさんは何を察したのだろうか? それとも、あたしの顔に出ていたのだろうか? まあ、あたしは結構顔に出やすい質だとは理解しているけれども。


「では、次はお昼にしましょう。取って置きのお店を紹介しますよ」


 エルウィンさんがそういうのと、馬車が止まるのは丁度であった。


「お、タイミング良く到着したようですね。では行きましょうか」


 あたしはエルウィンさんにエスコートされて馬車から降りる。店は高級そうなフェルギンスタイルのお店である。前世のイメージで言うと、“フレンチ”で伝わるだろうか。完全に一致ではないが、前世の世界の料理では“フランス”という国の料理形式が一番近い。

 あたしも、“フェルギントースト”や“パスタ”は得意料理である。手間隙さえかければ“クロワッサン”なんかも作れたりする。実際、週に何回か作ってたしね。ラマのバターを使って野菜との物々交換で手に入れた小麦を引いて作ったものである。

 しかし、あたしの目の前にあるのは明らかに高級そうな店である。

 実際内部に入るとウェイターさんが案内をしてくれたのだけれど、城の中と同じくらいのイメージの店内に、高級そうな絵画、ワンランク上の調度品など、貴族御用達感溢れる店内だったのだ。あたしの着ているドレスからすれば、同格な感じがあるけれど、あたし自身とはまったく釣り合わない。


「ふぇぇ~……」


 あたしは恐れ多くて変な声が出てしまう。けれども、ばっちりと写真を撮っていたけれども。

 店内は明らかに貴族の夫婦やカップルがおり、食事を楽しんでいた。あたしの場違い感がすごいんですが。それに、エルウィンさんが持っているものとは違う記録水晶が置いてあった。あれは何に使うのだろうか。前世で言うところの“監視カメラ”と言うやつだろうか?


「エルウィン様、お席はこちらになります」

「ああ、ありがとう」


 給仕の人が椅子を引いてくれる。あたしはまあ、されるがままに座る以外の選択肢は無かった。あの記録水晶も気になるけれど、ここで聞くのも野暮である。後で聞こうとあたしは思った。


「コースは」

「昨日予約していた通りで」

「畏まりました」


 エルウィンさんはこの店の常連だろうか。出された料理は前世でも食べたことが無いフルコースというやつであった。前菜から始まり、サラダ、スープ、メインディッシュ、デザートと続く彩り鮮やかな料理たち。見た目もそれぞれこだわりがあり、恐らくお肉も貴族御用達のものが使われている。

 この高級料理店は、会員制らしくお金さえあればと言うものでもない。貴族と一部の商人が取引で使ったり程度なんだそうだ。あたしはその話を聞いて、エルウィンさんの言葉は入ってこなかったし、料理の味も結局わからなかった。それに、食べ方にもマナーがあるなんてとウィータさんに習っているにもかかわらず改めて思ったのであった。

 うん、あたしには貴族とか向いてないな。やっぱり村娘が一番だわ。そう、心底思わずには居られなかったのであった。


 食事も終わり、貴族御用達のフェルギン料理店から出ると、あたしは緊張から解放された。食事のマナーについて、エルウィンさんからそれなりに指摘を受けたので、今後改善する必要があるだろう。


「あ、写真撮るの忘れてた……」


 あたしはポケットからスマホを取り出して、愕然とする。見た目も素敵な料理だったし撮っておいて良かったのになと思った。


「はは、あの店は撮影禁止なので、忘れていて丁度良かったですよ」

「そうなんだ、ならよかったわ」

「ええ、よかったです」


 エルウィンさんはニッコリと微笑んだ。


「では、本日の観光はここまでにしましょうか。エリシアはまだマナーを学ぶ必要があるとわかりましたし、ウィータにしっかりと仕込んでもらえるように、私からもお願いしておきましょう」

「え、ちょ、止めてほしいんだけど……」

「ダメです。嫌でも淑女になるのですから、それぐらいの教養は身につけておかないと、ね」


 あたしはエルウィンさんの言葉にげんなりしつつ、馬車に揺られて王城まで戻ることになったのであった。

西側は治安がかなりいいため、襲われたりとかは無いです。

東側は冒険者もいるため結構治安が悪いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 確かに記録水晶なんていう光学的撮影装置があるならば、「この店は撮影可能です」「この店は撮影できません」みたいなのも決まっていて然りですよね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ