チュートリアル
多少忙しかったので、学生編は後ほど文書校正をします。
申し訳ありません
雄大は隆幸達が去った後、騎士の1人に助け起こされた。
「大丈夫ですか?」
「ありがとうございます……」
とは言え、若干の力の衰えを感じた雄大は肩を貸してもらわなければ立てなかった。どうやら若干ではあるが隆幸に力を奪われたらしかった。一瞬触れただけにも関わらず、これだけ貪欲に奪ってくるのだ。雄大はこの世界に猛獣が解き放たれてしまったという感覚を感じざるを得なかった。
「すみません、肩を貸してもらって良いですか?」
「ああ、それぐらいならお安い御用さ」
肩を貸してもらいみんなのところに歩いていると、見覚えのある女子生徒が駆け寄ってきた。
「立花君、大丈夫?」
彼女は──水木有理と言い、雄大と同じ国語クラスのクラスメイトは雄大に手をかざすと一言告げた。
【損傷回復】
淡い光が雄大の身体を包み、若干であるが体力が回復した気がした。雄大はこれならば、肩を貸してもらう必要はなさそうに感じ、回復をしてくれた有理にお礼を言った。
「ありがとう。それって回復魔法みたいな?」
「ええ、私のスキルってのが【救護者】ってやつで、この世界だと回復魔法が全部使えるみたいなの」
「そうなんだ、とにかく助かったよ」
肩を貸してくれた騎士に雄大は礼を言うと、数Ⅱクラスのクラスメートたちに向き合う。
「えーっと、とりあえずあんなことになったけど、俺たちが元の世界に帰るための条件を、アリシア姫様から聞いてきたから、みんなに伝えるね。作戦会議とかはその後で良いかな?」
「私は勇者様をお待ちいたしますわ。ユウダイ様は納得していただきましたし、他の勇者様にも納得していただきたいので」
先ほどの気の強いお姫様は、他の騎士に指示を出しているようだ。隆幸に対する対策をしようとしているのだろう。雄大としても、隆幸に対する対策は必要だと感じた。何でも吸収して自分の力にしてしまう能力なんて、敵に回ってしまうのならば殺すほか無いだろう。
「それじゃあ、俺たちが置かれている状況を説明する。ちょっと長くなるけど、残ったみんなには聞いていて欲しいんだ」
「あ、アキバ殿はどうするんだ?」
秋葉原は残念ながら隆幸にさらわれてしまった。今の雄大たちにどうにかできるということは無いだろう。それこそ、隆幸はこちらが消耗すれば消耗するほど強くなってしまうのだ。
「秋葉原君は、ひとまずアリシア姫様たちに任せるしかないだろう。今の僕たちでは多分、三宅の肥やしにしかならないだろうからさ」
「アキバ殿……!」
俊哉と陽一は秋葉原と親しかったのだ。そりゃ心配に決まっている。雄大は自分が元副会長としても生徒の暴走を止めれなかったことが悔しかった。
「とにかく、三宅たちのことは置いておいて、俺たちが召喚された理由と、クリア条件について説明するよ」
雄大はそういうと、アリシアから説明された内容を自分たちが理解しやすいような例え──すなわちゲームに例えて説明を開始した。雄大はこれでも、学力としてはかなり高い方である。学校の方針で学年順位は貼りだされたりはしないのだが、少なくともこのメンバーの中では一番学力が高い。経済学部に進学しようとしているだけあり、そういうことに関する知識も十分に得ていた。
なぜ、彼が国語クラスに所属しているのか、社会クラスではないのかと言うと、彼の父親が衆議院議員なのだ。だから、彼は言葉の力を身につけたいと感じたし、そのために社会は独力で身につけることを決めて、国語クラスに所属しているのだ。まあ、受験用の国語しか習わないため、彼は自分の選択を間違えたなと思ったが、ピンからキリまで居る国語クラスは雄大に人間に興味を持たせることに一役買っていたのだ。
「……という訳で、俺たちはこの世界に呼ばれたそうだ。何か質問あるかい?」
雄大は聞いていた分の説明をきっちりと終わらせて、クラスのみんなに質問があるかを確認する。
「いや、さすが優等生は違うなって感じたよ。すごくわかりやすかった」
「うんうん、さすがは元副会長ね」
わいわいと盛り上がるクラスメイトたち。実際、騎士の1名が死んだとしても、現実として起こったことであると認識があまり出来ていないのだ。むしろ、この状況で現実であるだろうと仮定をして動いている人物が居れば、その方が異常であった。それは雄大においてもそうである。
「なら、ワイらがこれからすることは、魔王が出てくるか、三宅を倒せるようになるまでレベル上げをすることやな」
レベル、そう、この世界にはレベルが存在した。正確に言うならばステータス画面を確認したものはそのレベルを認識している。雄大はまだ確認していないが、皆が言うならそういうものもあるのだなと言う認識をしていた。
「そうなるな。経験値の項目とかあるのか?」
「あるで。副会長さんもステータス画面を確認したらええ」
エセ関西弁のお調子者がそういうので、雄大も確認することにした。
雄大が右下を見ると、確かにそういうアイコンが合った。VRゲームのように0.5秒ほど見つめていると、目の前にステータス画面が展開される。
雄大のレベルは0、必要経験値は2500と記載されていた。おそらく、隆幸に奪われたのだろう。職業は《勇者》、所持スキルは【徒手騎士】、交渉力Lv1、統率力Lv1と記載されている。使用可能言語も設定されており、ダルヴレク語/会話、種族交易共通語/会話がある。他、自分のパラメーターが数値として記載されていたが、これは比較対象が無いので自分の得意傾向と見なして確認する。一番高いのは知力だろう、装備に関しては何も装備していないので、攻撃力は低かった。
「なるほど、確かにVRゲームみたいだ。クリアするまで現実世界に戻れない設定だから、あのアニメみたいだけどね」
「確かに。てか、副会長もアニメ見るんですか?」
「なんで俺に対して敬語なのかはわからないけど、勉強の合間に見たりするさ」
雑談は今はおいておくべきだろう。まずは、レベル上げをやっていくべきである。そういう知識はあるのかと言うのをアイリスに聞くべきだろうと雄大は思った。
「アイリス姫様、まずはレベル上げをみんなでしたいんだけど、モンスターが出る場所ってわかりますか?」
アイリスは質問の意味がわからないような顔をしていた。
「……申し訳ありません。“レベル”とは一体何のことでしょうか? それに、“もんすたぁ”とは魔物のことでしょうか?」
「いえ、あの……」
逆に困ってしまう。そういう情報は基本的にNPCが持っているものであるからだ。特にVRRPGゲームならば教えてくれそうなものである。FPS系だと教えてもらえないが、街の近郊にそういう狩場が存在することが多い。あとはクエスト達成の報酬で経験値を得たりなどである。
「あれ、俺変なことを聞いたっけ?」
雄大は振り返り、男子たちに聞くが首を横に振る。
「それよりも、皆様は最初に訓練を行った方がよいかと思われます。ノーウェン御姉様が案内いたしますので、訓練所のほうに出向かれてはどうでしょうか?」
アイリスの提案に、クラスメイトの男子(一部女子)が盛り上がる。
「おお! チュートリアルってやつだな!」
「確かに、そういうのが無いとこの世界での戦い方とかわからないしね」
「楽だといいんだけどなぁ」
雄大はみんなの反応を見て、アイリスに頷いた。
「ああ、案内をよろしく頼む」
勇者のチートスキルは考えるだけでも時間かかりますね。
チーレム系主人公の雄大くんの視点は今回はこれまでです。
隆幸くん達は止めようとしてくる騎士を吸収しながら逃亡を果たしました。