エピローグ
あたしたちがダンジョンを出ると、20:00ちょっと過ぎの時間になっていた。
突然、新宿駅構内の女子トイレからけが人がぞろぞろと出てきたことにより、ちょっとした騒ぎになったし、家でゲームしていたはずの小南と輝明が新宿駅構内の女子トイレから出てきたので、純一園長は目を白黒していた。
いったい何があったのか、については警察関係者が緊急入院したあたしたちに内緒にするように言ってきたけれども、あたしたちが助けられなかった人たちは結局行方不明となってしまった。
あたしたちは病院に緊急搬送になったんだけれども、全員体力回復ポーションで怪我を直していたために、1日精密検査を受けるだけになった。その後、警察が来ていろいろあったんだけれども、吉岡さんたちは事情聴取のために残ってくれたおかげで、あたしたちは簡単に事情を聴かれた後、解放されたのだった。
今回も、ダンジョン内のアイテムはダンジョン専用みたいで、ポーションも武器も手元から消えてしまったけれども、またダンジョンに入る際に戻ってくるのだろう。新品の状態で。
「……なるほど、ダンジョンねぇ」
あたしは、迎えに来てもらった後、直接の養子なので代表して純一園長に説明をしていた。
「実際に危険に巻き込まれていることについて、そんな場所に行くなと保護者としては言いたいところですが、エリシアさんの説明を聞く限りだと突然巻き込まれるものだという話ですね」
「そうです」
「……」
純一園長は渋い顔をする。
普通に考えれば、巻き込まれないようにしてほしいのだろうけれども、異界はどうしようもない。
巻き込まれたくて巻き込まれているわけではないのだ。
それに、現実世界だとそこまででもないけれども、異界内ならば戦うすべがある。
そこも含めて包み隠さずあたしは説明した。
「……はぁ、わかりました。では、今後ダンジョンに巻き込まれた場合は必ず報告してください」
たぶんそれが妥協点だったのだろう。
「本来は大人が解決しないといけない問題だと思いますが、どうやらそれはむつかしいようです。せめて、相談してください」
「はい」
あたしは素直にうなづく。
「ただ、今回の件で十代くん、輝明くん、小南くんが怪我をしています。まあ、様子を見れば彼らの精神的成長につながっているみたいなので、厳しくは言いませんが、怪我をしないようにしてくださいね」
「……なるべくそう伝えておきます」
怪我をしないことなんて、確約できるわけがない。
回復用ポーションで誤魔化すことはできるけれども、死んでしまえば元も子もない。
今回みたいにボスが魔王だった場合は、同じようにつらい戦いが待っているだろうからね。
ただ、あたしの中に納まっている聖剣"勇気と希望の剣"が手元にある以上、そこまで苦戦はしない気もする。
「本当は、私が行ければいいんですけど、そんな自然災害じみたものに巻き込まれないようにしろとは言えませんからね」
まったくもってその通りだ。
あたしだって、平和に暮らしたいものである。
「以上です」
と、そんな感じであたしは純一園長に事情を話した。
園長との話し合いが終わって、リビングに入った時だった。
「お、エリシアさんが戻ってきたよ」
そう言ったのは、輝明だった。
「あれ、お菓子とか買ってどうしたの?」
「ああ、全員で無事、戻れた祝いをしようと思ってな」
「そうそう、さすがに今回の敵は強大だったからね……。お互いの活躍を語り合いながら祝勝会をやろうと思ったの!」
朋美がそう言いながら、ソフトドリンクの準備をてきぱきと進める。
十代と小南は袋菓子を開けて、ポテチをつまみながら祝賀会の準備を進めている。
「なるほどね。だったらあたしも手伝うわ!」
あたしたちは、こうしてつらく苦しい戦いから解放されたことを、お互い健闘しあったことを祝った。
輝明と小南の活躍だったり、朋美が後衛の女性部隊をよくまとめていた話だったり、蘭子や十代の活躍を聞いたりと、結構盛り上がった。
改めて、あたしはみんなとの関係を大事にしたいなと感じたのだった。
現代世界編の前半はこれで終わりです。
以前掲載していた幼馴染との再会?や、アヴァロン編は後半になる予定です。
内容は大幅に変更になっているので、楽しみにしておいていただければと思います!
また、第三章内の感想に対する返信も、この話が公開されたタイミングでやっていきます。
現代世界編は基本的には悪党が悲惨な目にあい、主人公たちはハッピーエンドになる予定なので、安心して読んでもらえればと思います!