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村娘だけど実は勇者の転生者でした  作者: 空豆だいす(ちびだいず)
異世界に飛ばされたけれど私は元気です
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異界化新宿駅 F10(戦いの後に)

 ゴブリンキングが十代の手によって消滅させられると同時に、ボス部屋にいた大量の雑魚軍団は解けるように消えてしまった。

 どうやら、ゴブリンキングの魔力によって構成されていたらしい。

 朋美たちが駆け寄ってきて、朋美が十代に抱き着く。


「十代! 無事でよかった!」

「おお、朋美。お前もな」


 あっちはあっちで青春しているなぁと思いつつ、ようやく終わったと胸をなでおろしていた。

 なんだかんだ言って、全員ボロボロだったけれども、ダンジョン内で入手しておいた回復ポーションがかなり役に立った。

 結局、重症だった吉岡さん、輝明、小南は回復薬のおかげで軽傷まで持ち直した。

 なので、この3人が起きるまで待って、最下層に向かうことになった。


「しっかし、今回ばっかりはしんどかったわね……」

「ほんとにね。あたし、精魂尽きちゃったわ」


 あたしは地面にへたり込む。


「ま、邪魔は入ったけれども助けられる人を助けられたし、良かったんじゃない?」

「そうね。それに、気絶している輝明や小南も頑張っていたみたいだしね」

「起きたら思いっきりねぎらってあげましょ!」

「うん」


 一番の功労者である十代は、彼の胸で泣いている朋美の面倒を見るために動けないでいる。


「でさ、エリ」

「ん?」

「あーしらになんか言うことってない?」

「えっと、毎回面倒ごとに巻き込んでごめん?」

「いや、そっちじゃなくてさ、あの剣の事」


 言われて、あたしは聖剣についてどう説明していいものか悩む。

 こっちの価値観、世界観ではどう話しても正解ではない気がしていた。


「うーん、まあ……うーん……」

「そんなに悩むこと?」

「いや、どう説明したものかと思って……。でも、そんなことより甘いもの食べた~い」


 実際、あたしは自分の頭がうまく回っていなかった。


「わかるけど! ……まあ、エリに説明する気があるならいいけど」

「あるある~。てか、あたしにも正直わかんないこと多いし~」


 異界(ダンジョン)をクリアしたせいか、あたしは完全に気が抜けてしまっていた。

 もう、今日は何も考えたくない。

 外では今何時だろう? 電車走ってるのかな?

 走ってなかったら純一園長に電話かなぁ。


 そんなことを考えていると、十代が話しかけてきた。


「エリ、これ」

「ん~?」

「お前が集めている不思議な石だよ!」


 十代の持っている魔石はオレンジ色の魔石だった。シルバーの文様が描かれており、ダルヴレク語の文字が描かれていた。


「ん? 『色欲』……?」

「エリちゃん、読めるの?」

「まあね」

「『色欲』というのは、7つの大罪の一つになるね」


 と、不意に声を挟んできたのは小南だった。


「小南、気が付いたのか」

「さっきね。まさか、十代くんを助けようとして死にかけるとか……。まあ、彼のカッコ悪い姿は女性陣の前では控えるとして」


 小南は割れた眼鏡をくいっと上げながら、考察する。


「つまり、この日本でエリシアさんあてに7つの大罪にまつわる試練が課されていると考えるのが、僕の意見になるかな」

「また中二病臭いことを……」


 蘭子があきれたように言う。


「ってことは、あと4つの試練が待っているってことなのかな?」

「おそらくだけどね。これまでのダンジョンのボスを考えれば、晄ヶ崎(あがさき)はわからないけれど、塾は【怠惰】だと考えられるね」

「そうなの?」

「だって、誰しも学校や塾の勉強は嫌いだろう?」

「だから、敵のモンスターが数字や文字、英語で構成されてたってことか……」

「おそらくだけどね。とはいえ結局、エリシアさんは他の魔石の文字は読めてないんだろう?」

「ええ、知らない文字だから読めないわよ」


 ただ、今まで3つの魔石を見てきたけれども、()()()に従っている。7色なのだ。照応すると考えても不思議じゃない。


「すでに、どこかに残りの4つのダンジョンは開いているかもしれないね。とはいっても、入り口のヒントは無いから、偶然で巻き込まれるしかなさそうだけれどね」


 小南の指摘の通りであった。

 塾は突然巻き込まれたし、新宿のトイレに関しては偶然発見したも同然である。

 3点では魔法的な法則性はわからないし、そもそも異界は現実世界とはかけ離れた空間にあるような気がしていた。

 そうでなければ、聖剣を呼び出すことなんかできなかったはずである。


「いずれにしても、どんな限定のダンジョンであってもエリシアさんは入れるはず。僕たちに関しては心して待つしかないね」


 小南はそう言って指摘したけど、いっぱいいっぱいのあたしには、あと4つもこんなダンジョンを攻略する必要があることに、軽く面倒くささを感じていた。

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