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村娘だけど実は勇者の転生者でした  作者: 空豆だいす(ちびだいず)
異世界に飛ばされたけれど私は元気です
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異界化新宿駅 F10(勇気)

 色欲魔王、そう名乗った。

 それに、勇者の欠片であるあたしを消せという内容も気になる。

 あたし自身の記録によれば、三宅という奴は勇者のまま魔王になったはずだ。


「……」


 あたしの頬に冷や汗が流れる。

 いや、今はそんな考察をしている暇はなかった。

 どちらにしても、あたしは逃げられないならば、せめてみんなを朋美たちに合流させて、一度ボス部屋から脱出させた方がいいだろう。


「……なあ、エリ。お前、一人で何とかしようとしていないか?」

「十代?」

「そうそう、あーしらだってまだ戦えるんだし、何とかなるっしょ!」

「蘭子?」


 二人があたしに話かけてくれる。


「それに、あーしと十代、この場にはいないけれども後方支援に徹してくれている朋美がいるんだし、小南と輝明の二人も無事回収できた。だったらあーしらは何でもできるよ!」

「そうだぜ! ちょっとばかり強えぇが、俺らにできないことなんてないんだよ!」

「……!」


 二人の勇気が、あたしの心に希望を灯してくれる。

 確かに、晄ヶ崎の時も、塾の時もみんなで協力して何とか出来た。

 だったら、相手がたとえ魔王だったとしても、あきらめる理由なんてなかった。


「うん、そうだね。二人ともありがとう! ちょっと弱気になってたわ!」

「へっ、じゃあ、行くぜ蘭子。俺の攻撃はあんまりダメージにならねぇみてぇだから、蘭子に期待しているぜ」

「そう? ま、それだったらあーしに任せて十代は援護ヨロ」


 少しもあきらめていない十代と蘭子。その二人の背中を見て、あたしは考えるのを止めた。この魔王淫魔ゴブリンキングを倒すことだけを考えることにした。

 ただ、どちらにしてもタゲはあたしに向いているので、あたしの役目は囮になることだ。

 案の定、二人には目もくれず、あたしに向かって攻撃をしてくるゴブリンキング。

 先にあたしを消して、それからゆっくりと二人を料理するつもりなのだろう。


「《防壁(プロテクション)》!」


 あたしはメイスを魔法で受ける。バリンっと音がして、盛大にバリヤにひびが入るが、1回は確実に防げる。

 すぐさま、あたしは炎の槍を生成する。


「《炎槍(ファイヤランス)》!」


 そして、蘭子が接近するタイミングで顔面に向かって放つ。


『小癪ナ!』


 ゴブリンキングは《炎槍(ファイヤランス)》ごと、あたしにメイスを叩きこもうとしてくる。

 ただ、目くらましの効果のおかげか、あたしは横に飛んでメイスを回避できた。

 衝撃波と風圧がすさまじいけれども、転がることで回避する。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・


 エリシアとゴブリンキングがぶつかり合う隙に蘭子と十代はゴブリンキングに接近していた。

 回復薬で回復したものの、動きが鈍い十代ではあるが、全力で突撃していた。

 しかし、脛にバットを振りぬくも、やはり攻撃が効いていない。

 先ほど、小南と輝明がやられた時も、十代の攻撃が効いていないせいであった。まるで壁を殴ったかのような感覚であったものの、それでも十代はひるんでいなかった。


「せりゃ!」


 一方蘭子の攻撃はダメージが入っているように見える。

 蘭子のワンツーはゴブリンキングをふらつかせる程度にはダメージが入っている。

 やはりというか、小南の予想通り、()()()()()()()()()し、女性の攻撃しか通用しないのだろう。

 ただ、小南や輝明の攻撃は完全に無効化していたにもかかわらず、十代の攻撃は赤くはれる程度には効いているのは、単に十代の攻撃力が異常に高いことを示していた。


「……小難しいこと考えんのは性に合わねぇなぁ」


 回復薬のおかげでダメージが回復したおかげか、余裕が少しあるせいで余計なことを考えてしまう十代。

 蘭子の打ち込みはダメージを受けているのもの、気をそらす程度のダメージにしかなっていない。


「ふんっ!」

「サンキュ」


 蘭子を振り払うための左手を十代が受け流す。そこに、エリシアの魔法攻撃が当たり、タゲがエリシアに向く。


()()()()? まではこれで行けるが、奴が本気を出したらどう対処べきか)


 十代は蘭子の援護防御を引き受けながら、どのように勝ち筋を導き出すか考えていた。


「にしても、堅いわね」


 蘭子はそうつぶやいていた。

 確かに、蘭子の拳はゴブリンキングの脛にえぐるような跡をつけているが、皮膚だけだ。奥にまでダメージが通ってないので、いたずらを仕掛けている程度の認識しかゴブリンキングは感じてないだろうと感じた。そして、その体長の大きさが蘭子の拳を弱点から遠ざけていた。


「でかすぎんのよ!」


 顔面にかませば、状況は変わるだろうけれども、背が高すぎて届かない。

 ぶら下がっているモノは触りたくない。

 つまり、蘭子にも決定打が無かった。


「蘭子」

「なに、十代」

「お前を()()()()()()いいか?」


 十代の提案に、蘭子は驚くしかなかった。


「はぁ? 何考えているのよ!」

「このまま見える範囲を殴っててもらちが明かねぇ。やっぱり顔面ぶん殴らねぇと効かねぇとおもってな」

「まあ、あーしもそう思ってたけど」

「だから、蘭子を打ち上げるのさ」

「……とんでもないこと考えるわね」


 十代と蘭子にはほとんど狙いが向いていないので、二人は距離を取って会話していた。


「いずれにしても、あいつの狙いはエリだ。俺たちが何とかする以外ないだろ」

「ま、乗らないとは言ってないわ。タイミングは?」

「そっちに合わせるさ」


 二人はうなづくと、再度ゴブリンキングに向かって走り出す。

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[一言] ···「アレ」狙い所だぞ ···超火力で狙えば···
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