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村娘だけど実は勇者の転生者でした  作者: 空豆だいす(ちびだいず)
異世界に飛ばされたけれど私は元気です
141/155

異界化新宿駅 F10(最終決戦3)

 あたしの手元には聖剣は無い。

 あたしは十代のような身体能力は無い。

 あたしにあるのはわずかに残った《勇者》というジョブと、【魔女術(ウィッチクラフト)】という魔法に関する権能だけである。

 それでも、ダンジョンにとらわれた女性たちを解放するため、みんなを助けるために、魔王となったゴブリンキングと戦う必要があった。


「エリ……、十代たちはあんなのと戦ってたの?」

「うん」


 あたしはうなづくと、十代に駆け寄る。


「……よぉ、エリに蘭子じゃねぇか。……思ったより遅かったな」

「十代! 大丈夫?!」

「……まあな。……だが、今は気絶しちまった輝明と小南を先に頼むぜ」

「エリ、十代はあーしに任せて」

「……わかったわ」


 あたしはすぐに、輝明と小南を探すと、方々に散らばっていた。

 二人とも血まみれではあるものの、息はあるように見える。

 あたしは先に小南の方に近づいた。


「小南! 大丈夫?!」

「……」


 息はあるが、反応はない。幸い、四肢の欠損はなさそうではあるが、骨が折れてしまっている可能性があった。何本か持っていた回復用のポーションをぶっかけて、あたしはルーン魔法で回復の魔法を作る。


「ぐ、さすがに少し魔力を使っちゃうのね……!《大回復(ヒーリング)》!」


 体内の魔力1/5を触媒として使い、回復の魔法を発動させる。この世界の回復魔法なんて初めて使ったけれども、あたし自身の生命力を分け与えるようなものなので、魔力消費が必要だったようである。

 小南はとりあえずこれでいいだろう。次は輝明だ、と思ったら、ゴブリンキングがあたしをじっと見ていた。

 さっきまで、吉岡さんに夢中だったはずだが……。


『面白イ、オ前、勇者カ。コノ女デ遊ブノハ、後デデ良イダロウ』


 ゴブリンキングは()()()()()()で、あたしの住んでいた国の言葉で話しかけてきたのだった。


「は?」


 あたしは何が起こったのか、理解が追い付かなかった。

 ただ、あたしの体がとっさに小南を抱えて飛びのく。

 とっさに動けたのは、単にあたしが勇者時代にそう動けていたからだ。といっても、本当にぎりぎり回避できただけで、小南を抱きしめて無様に転がってしまった。

 あたしが目を向けると、あたしたちが居た場所はメイスで潰されている。


 ヤバイ!


「《防壁(プロテクション)》!」


 あたしが魔法を発動させるのと、ゴブリンキングが動くのはほぼ同時だっただろう。

 魔力で作った防壁がメイスによる攻撃を防ぐが、ミリミリと嫌な音を立てて《防壁(プロテクション)》にひびが入る。

 あたしが居ないと勝てないんじゃない、()()()()()()()()()()()()()()()ことに、ようやくあたしは気づいたのだ。


「はぁはぁはぁはぁ……」


 緊張で呼吸が荒くなる。

 だけれども、やることが明確な以上、止まってなんていられない。

 少なくとも、小南と輝明、吉岡さんを連れて撤退する必要がある。

 条件は、あたしを集中的に狙ってくるゴブリンキングの攻撃をすべて回避もしくは防ぎ切ること。

 安全地帯はとりあえず、十代や蘭子の居る地点。


『雑魚勇者ノくせニ、ヨク防ゲタナ!』


 あたしはすぐに小南を抱えて走り始める。

 本来だと無理だと思うけれども、今のあたしは夢中だった。だからこそ、馬鹿力が出たのかもしれない。


「うおぉぉぉぉ!!」


 背中に突き刺さる殺気を感じ、その後にくるメイスの攻撃を移動方向をジグザグにすることで回避し、何とかあたしは十代たちの元にたどり着く。


「小南、お願い!」


 あたしはすぐに小南を置き去りにすると、輝明のところに駆け出す。

 あのメイスの攻撃は、あたしの《防壁(プロテクション)》でも1回しか防げない。

 回復魔法とは違って、あたし自身の魔力は必要ないので何回も使えるけれども、ルーン文字を描くために足を止める必要があるのでそうそう使えない。


 幸いにしてゴブリンキングは男には全く興味が無いのか、そもそもあたしで遊ぶことで頭がいっぱいなのか、目もくれていないのは本当に助かる。

 ただ、そうなると吉岡さんを助けるのは非常に困難になると思われる。

 重症の輝明も、小南と同様に助けたあたしは、蘭子からポーションをもらって動けるようになった十代と合流した。


「エリ、蘭子、サンキューな!」

「十代は動けるなら、蘭子と一緒に二人を連れて後衛まで下がって!」

「いや、どっちみちここに置いておいた方が安全だと思うわ」


 あたしは《防壁(プロテクション)》を張り直しながら蘭子に聞く。


「どうして?」

「この周辺って、雑魚モンスターが寄ってこないみたいなのよね。もちろん、日比野さんが戦ってくれているのもあるけれども、ゴブリンキングの攻撃にさらされるのは魔物でも怖いみたいだし」

「なるほどね」


 ただ、ゴブリンのずる賢さを思えば、どこもそれほど安全には思えなかった。

 小南も輝明もある程度回復させたけれどもまだ意識はない。

 十代もダンジョンのポーションを飲んだおかげか回復して動けるみたいだけれども、戦力としてはあまりカウントできない。

 正直、だいぶ詰んだ状況なのは、嫌でも認識できた。

 それに、相手も待ってくれないみたいだ。


『相談ハ終ワッタカ? 邪神様カラ、()()()()()()()()()()()()()()トノゴ命令ダ』

「……!」

『色欲魔王ノオレサマニ、かけら如キガ敵ウト思ウナヨ!』

回復魔法だけは無限に使えたら、チート過ぎるかなと思ったので、回復量に応じて自分の魔力を消費するようにしました。

《小回復》:1/15

《中回復》:1/10

《大回復》:1/5

全部ルビは同じです。

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