クラス召喚異世界転移
《勇者》立花雄大編です。
しばらくお付き合いください。
3話目ほどテンプラな話が続きます。
立花雄大は、大学受験を控えた高校3年生の少年であった。
巷で進学校と呼ばれる高校に通い、国語クラスに所属する普通の高校生だ。
雄大の運命の日は、その日の数学の授業で起きたのだ。
数学の授業──数Ⅱの授業は、物理・生物クラスの生徒と合同で行われる。雄大の属するクラスは男女比率が丁度同数となるクラスだったが、始業の鐘がなると同時に雄大たちの人生が一変する出来事が起こる。
「ま、魔方陣だ!」
そう叫んだのは、確か物理クラスの生徒だったか。なぜか顔を思い出すことが出来ないが、彼が言ったとおり、雄大たちの足元には光り輝く魔方陣が描かれていた。
「え、なにこれ!」
「誰のいたずらだよ!」
困惑の声でクラス中がざわめく中、突如頭の中に声が響く。男性とも女性とも取れる声であった。
『やあ、君たち。教壇のほうを向いてくれたまえ』
雄大たちが教壇のほうを見ると、そこに立っていたのは声に似つかわしくない初老の男であった。まるで雄大のイメージする神様のような姿をしていた。
『私は、この世界の神だ。そうだな、正確に言うなら創造主に管理を委託された管理者と言った方が君たちには伝わるかな?』
雄大たちは、何が起こっているのか理解が追いつかなかった。いや、このクラスの何人かはこの状況に気付いていたが、声を出せずに居た。
『君たちには、私は君たちがイメージする創造主の姿が見えているはずだ。まあ、この国は無神教だから、恐らく北欧のオーディン、ギリシアのゼウスが見えてるんじゃないかなと思うけどね』
脳内に響く声はそうクツクツと笑うと、早速本題に入る。
『さて、君たちはこれからこの世界とは違う次元の世界、平行世界でもなく亜種世界でもなく、完全な別世界に召喚される』
「え、な、何で……?」
誰かがそうつぶやいた。それに管理者を名乗る人物が答える。
『もっともな疑問だね。それはね、カンタンに、ポピュラーに言うなら、これから向かう世界には魔王が出現するんだ。君たちはこれを討伐してもらうために呼び出されるのさ』
「な、何で俺たちが……!」
「魔王なんて、ゲームじゃないんだから!」
同じ国語クラスの小太りの少年が頭を抱えてそう言う。それに、管理者を名乗る人物は嬉しそうに答えた。
『そう、まさにゲームのように魔王が出現するんだ。向かう世界には勇者が必要になるのさ』
「あ、あたしそんなの無理!」
「私もよ……!」
「受験はどうするんだよ!」
「異世界転移とか嫌だ! 何とかなら無いのかよ!」
管理者を名乗る人物は、噴出する憤りにこう答えた。
『残念ながら、君たちは選ばれてしまったんだ。拒否権は無いよ』
そして、そのままこう続けた。
『だから、私が餞別として一つ、君たちにあったチートスキルをプレゼントしようと思う』
それに、男子達が色めき立つ。雄大も、チートスキルと聞いて、少し期待してしまった。
『このスキルはこの世界特有のものでね。死に戻りとかで人間離れした能力に目覚める人間がいるだろう? そう言うものだと思ってくれ』
管理者を名乗る人物はそう言うと指を鳴らす。すると、雄大達の身体が輝き出す。すると、雄大の身体に一つの能力が宿るのを感じた。【徒手騎士】。雄大の得た能力はそう言うスキルであった。
『さあ、魔王を滅してくれたまえ! そうすれば、君たちの望むものを与えよう!』
管理者を名乗る人物の声が響き、雄大達は光に包まれた。
眩しい光が止み、雄大が目を開けると、そこは教室ではなかった。怪しいローブを着た人達に囲まれ、目の前には絶世のお姫様、周りに甲冑を着た人達が居た。
「こ、ここは……?」
雄大がそうつぶやくと、ローブのを着た人たちが色めきだす。
「おお、成功したぞ!」
「これも、女神様のお導きだ!」
そして、目の前にいるお姫様が挨拶をした。
「こんにちは、勇者様がた。私の名前はアイリス、アイリス・フェルギンですわ。お待ちしておりましたわ、勇者様方」
アイリスと名乗ったお姫様は、ふわりとそう微笑んだ。
「うっは、めっちゃ美人! お姫様じゃん!」
小太りの少年、佐々木小太郎が眼鏡を輝かせてそういう。佐々木が言う通り、アイリスの容姿は皆が思い描くようなお姫様であった。
「おいおい、マジかよ。あの神様とか言うヤツが言ってたコトはよ」
「マジダリーんですけどー」
「つーかウチら、たまたま来ただけなのになんで巻き込まれてんのかわかんないしー」
不良の3人組が不満タラタラな様子でそう言う。発言順に、三宅隆幸、広瀬翔太郎、鈴木恵里奈と言う。中堅の進学校に1つはある不良グループのリーダーと取り巻きであった。何時もはサボっているはずの彼らではあるが、今日は授業に珍しく来ていたのだ。
「あ、あれ? あいつが居ない!」
「マジだ! あいつだけこっちに飛ばされなかったとか?」
「いや、よく見たらあいつの制服だけ残ってるし……」
一部がざわついている。雄大がそちらに目をやると、「魔方陣だ!」と言ってた彼の姿は無かった。彼の留意物である詰襟の制服がぐしゃりとそこに落ちていた。
他にも、興奮しているもの、「お母さん」と泣いているもの、反応は様々であった。
この中で唯一冷静だったのが、雄大であった。周りが慌てている様子を見て、逆に冷静になったと言える。だから、目の前にいるお姫様との交渉役を、雄大は自ら行うことにした。
「申し訳無いけど、俺たちも突然のことで驚いているんだ。お姫様、なんで俺たちが呼び出されたのか詳しい話を聞いてもいいかな?」
「はい、構いませんよ。勇者様」
アイリスそう言うとふわりと微笑んだ。
こちらはオーソドックスな異世界転移にして見ました。
スタートアップ編なので、11/7からエリシアに視点が戻るのでそれまでお付き合いください。