異界化新宿駅 F10(強すぎる女たち)
4月になりましたね。
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「あの十代って子もたいがいじゃないかい?」
吉岡はそうぼやきながら、剣を持ったピンクオークをすでにのしていた。
このダンジョン内で戦ううちに、吉岡も戦いの感が研ぎ澄まされており、普段は反則技ゆえに使えない技を多用して相手をのしたり戦闘不能にしていたのだ。
研ぎ澄まされた吉岡の技は、タックルですら武器を持っていようが持っていまいがクリーンヒットする。殺し合いゆえに完全フリースタイルとなった吉岡は、的確なタックルで相手を転倒させ、バックを取る。そこから、フォールで敵の関節を破壊して(今回は殺し合いであることを理解して、レスリングのルール違反であることを飲んだうえでやっているが)行動不能にさせるか、ビックポイント技で他を巻き込んで周囲を巻き込むこともできた。
こういう、1対多で戦うことなどほとんどなかったけれども、吉岡はレスリング一本。どんな状況でも1対1の状況に持ち込みレスリングに持ち込むのが吉岡のスタイルだった。
実際、吉岡の中心から直径9mの円ができており、そこに突入したモンスターはすべて吉岡がのしてしまい、邪魔になるので放り投げられていた。
「さあ、次は誰だい?!」
吉岡の圧倒的強者のオーラに、ゴブリンやピンクオークは立ちすくみ、9mの円の中に入ってこれないでいた。
実際、現在は吉岡と同じ部のメンバーでタッグを組んでいるので、その攻撃力や破壊力は2倍3倍の現状、雑魚が下手に勝負を挑んだところでたやすく殲滅されるのは想像に難く無い。実際、剣持ちの鎧をまとったピンクオークはほぼ瞬殺だったからだ。
吉岡とメンバーのダブルタックルであおむけに押し倒し、素早く背後を取ると、二人で協力して投げ技にかかる。そのまま、頭部から地面に落下させるプロレス技を決めて昏倒させてしまったのだ。
ものの90秒の出来事であり、十代ほど時間もかかっていないでたやすく昏倒させてしまうタッグに挑みたいと思う敵はそれほどいなかった。
「……いないのかい? じゃあ、先に進ませてもらうよ」
吉岡がそう言うと、ゴブリンキングの元に歩み始める。誰も9mの円に入ってこないがゆえに、誰にも邪魔されることなく悠々と、強者のオーラを纏いながら吉岡は先に進んでいくのだった。
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あたしは、強者二人の様子を見て、唖然としていた。
え、つよ、あたしいらんやん。
ともあれ、どちらにしても強い催淫効果のある粘液を出すテンタクルを自由にさせなかった点が、二人をのびのびと戦える状況を作ったことは事実なんだけれどね。
10匹のテンタクルも、あと少しで完全に氷漬けになる。そうしたら、あたしも魔法で殲滅作業に入れるというものだ。
後衛の方も、ボウガンの矢はまだ備蓄がある様子で、酒井さん他2人で回して、残りの10人でボウガンの矢を射るという感じにうまく回っている。朋美の指揮能力も高く、結構隙無く周囲を見てくれているので、安全に立ち回れていた。
「エリちゃん、あと何分でイソギンチャクは完封できそう?」
「あと1分ね。それまでは動けないわ」
「ん、頑張ってね!」
あたしはうなづく。
まあ、正直、負ける要素なんてほとんどない。
淫魔と化したゴブリンキングが気になるところではあるものの、それ以外については懸念点が何一つなかった。
ただ、あのゴブリンキングだけはあたしが居ないと勝てない予感はしていた。
勇者としてのカンというものだろうか。もちろん、十代や吉岡さんが負けることは想像できないけど、勝てないのだ。
あたしは二人がゴブリンキングに挑む前に、さっさと冷凍してしまうことにした。