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村娘だけど実は勇者の転生者でした  作者: 空豆だいす(ちびだいず)
異世界に飛ばされたけれど私は元気です
129/155

異界化新宿駅 F2(紀里谷 蘭子)

蘭子視点です。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 蘭子はゴブリン3体を相手に、余裕だった。

 そもそも、複数対1は蘭子にとって慣れっこである。


 中学2年まで、蘭子は荒れていた。不良グループに所属していたといっても過言ではない。

 蘭子の家庭はいうなればネグレクトだった。父親は興味を示さず、たまに意識を向けてきたかと思えば殴ってくる屑で、母親は自分を思う通りにしたい、アクセサリーのように扱うカスだったと、蘭子は思っている。

 それがネグレクトに転じたのは、妹が生まれてからだった。

 母親が不倫をしているのは知っていた。父親も不倫をしていたのだから当然である。

 その結果、母親は妹にしか興味を示さなくなり、父親は家に帰ってこなくなった。

 蘭子は小学生で家出をして、結果レディースに拾ってもらったのだ。

 それからは、うっぷんを晴らすように蘭子は喧嘩に明け暮れた。時には男とも喧嘩をし、勝ったこともある。

 結局、そんなゴミのような両親から離れることができたのは、【児愛の家】に保護されてからだった。

 ただ、蘭子が本格的に不良グループから抜けることを決めたのは、朋美と出会ってからだった。

 生まれてすぐ赤ちゃんのままロッカーに捨てられた朋美はずっと【児愛の家】で生きていた。この不況の世の中、里親も見つからないまま【児愛の家】で育った彼女は、まっすぐ育っていた。そんな彼女とかかわって、蘭子は生き方を変えようと決めたのだった。

 十代も輝明も小南も、それぞれの事情があって【児愛の家】で暮らしている。

 だからこそ、瞳の奥に虚無を抱えていたエリシアに積極的に接していこうと、蘭子は決めたのだった。


 そんな過去があるからこそ、蘭子は戦えていた。

 エリシアや朋美を守るためならば、蘭子は百人力の力を発揮することができたのだ。


「はぁぁああぁぁああああ!!」


 小学生のころから中学生や高校生の不良と戦ってきた拳を、今度は守るために使うことは、蘭子にとってためらいのないことである。

 蘭子を手籠めにするために襲ってくるゴブリンの群れ。

 得意の喧嘩殺法で殴りつける。小柄なゴブリンはそれだけで遠くに吹き飛ばされる。


「せりゃ!」


 ゴブリンの頭をサッカーボールのように蹴りつける。


「グギャ!」


 ゴブリンは悲鳴を上げて吹き飛ばされる。地面をバウンドし、先ほど蘭子が殴り飛ばしたゴブリンに激突する。

 最後の1匹のゴブリンが蘭子の後ろからホールドしようとするが、読んでいた蘭子の肘がみぞおちに突き刺さる。


「マジでこいつら……」


 みぞおちにダメージを受けてふらつくゴブリンの頭をつかみ、顔面に膝を入れる。立派な鼻は無残につぶれ、鼻血が出る。蘭子はそのままゴブリンを、別のゴブリンを蹴り飛ばした方向にぶん投げる。


「……きめぇんだよ!」


 見事に3匹のゴブリンをのした蘭子。とどめを頼もうと振り返ると、朋美がボウガンを手に駆けつけてきた。


「私に任せて。エリちゃんはちょっと手が離せないし」

「いや、あーしがやるよ」


 蘭子は強引に朋美からボウガンを奪うと、ゴブリンどもにとどめを刺す。

 どうしても仕方がない場合じゃない限りは、朋美を傷つけたくなかった。

 蘭子は装填した矢をゴブリンの心臓を狙って打ち込む。すると、しばらくしてゴブリンは砂のようにさらさらと溶けて消える。


「らんちゃん」

「やったわね、とも! さ、あのキモイイソギンチャクを何とかするわよ」

「うん、そうだね! 吉岡さんは余裕そうだし、エリちゃんを手伝わなきゃね!」


 蘭子にとってはエリシアも、守るべき対象だ。

 確かにエリシアはこのダンジョン内では魔法は使えるみたいだけれども、十代や蘭子のように前線で戦えるようなイメージは蘭子にはなかったのだ。

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