異界化新宿駅 F2(トラップ粉砕!)
「《罠探知》」
袋小路を見つけるまでの道中、明らかにそういう目的の罠を何個か発見したため、あたしは魔法で罠の探知を行った。軽いものでいえば「くすぐり罠」があったり、「服を剥ぐ罠」、そして、一番ひどいものは「落とし穴に見せかけた感覚遮断凌辱罠」があった。まあ、すぐに助けたからひどいことにはならなかったけれども、その女性はしばらくの間、胸部から下の感覚がなくなり、歩けなくなったので、今は休んでいるはずだ。
なので、先に罠を探知して、すべてぶっ壊すことにした。
「《罠破壊》」
あたしが強く拳を握りこむと、あたしが探知した罠がすべて破壊されたことを探知した。
「エリちゃん、お疲れ様」
「ま、最初からやっておくべきだったわよね……」
「いやぁ、まあ、あんなおぞましいもの、あるとは思わないでしょ」
「確かに……。まるで男の妄想を詰め込んだような酷いダンジョンね」
まったくもってそのとおりである。
ただ、こういう異界が存在するならば、逆も存在しそうではある。美人局ダンジョン……誰も生きて残れなさそう。
「ほんと、えりちゃんが居て助かったわ」
「いえいえ、あたしは前に出て戦わないので、これぐらいはやっとかないとですよ」
実際、【魔女術】は非常に万能で有用だった。というよりも、これが無ければそもそも、晄ヶ崎ダンジョンも攻略できなかったに違いなかった。
「そういえば、蘭子。十代とは連絡取れているの?」
「いや、2階に来てからは電話もできなくなったんだよね。ともは?」
「私もつながらないかな。というか、電話は圏外になったから使えなくなっちゃったし」
「今回はちゃんと圏外になるのね」
「もしかしたら、ダンジョンごとにルールが違うのかもしれない」
蘭子の指摘は確かにとうなづかされる。
「ただ、それだと厄介よね~」
あたしたちが話をしていると、吉岡さんが乗ってくる。
「え、君たち、何度かこういう変な空間に閉じ込められたことがあるの?!」
「はい、これで3度目ですね」
「……なるほど、それで蘭子ちゃんは前であれだけ動けるし、えりちゃんは魔法が使えるし、朋美ちゃんは的確な指示ができるわけね」
「ボウガンは初めて使いましたけどね」
「……普通、そういう経験はしないものよ。部活でもやってない限りはね。親御さんには話したの?」
「あーしら、児童養護施設の人間だから、保護者は園長になるのかな? そもそも、話したところで誰も信じないし」
「……確かに」
あたしたちの話に驚く吉岡さん。
ほんと、あたしも晄ヶ崎ダンジョンの一度だけだと思っていたんだけどなぁ……。
「エリ、とも、吉岡さん。敵よ」
と、蘭子の声であたしたちは警戒する。
遭遇したのはゴブリン3匹にピンクオーク1匹、そして、テンタクル1匹だった。
テンタクルは触手を持つ生物で、こちらを丸呑みにしてくる。ただ、エロトラップダンジョンに出現するからにはそういう特性を持っていそうである。
「うわっ! きっしょ!」
「テンタクル! あれはあたしが倒すわ」
「うん、あのイソギンチャクみたいな敵はエリちゃんが適任そう。ゴブリンはらんちゃん、オークは吉岡さんお願い」
「朋美ちゃんは援護だね。任せてな!」
あたしはテンタクルと対峙するために朋美から離れる。
それにしても、テンタクルなんてあたしの世界でも稀に聞く魔物だ。
なまめかしい触手、獲物を丸呑みするための口、うねうねとうごめく姿は生理的嫌悪感を引き起こす。
触手のせいで無手では近づくことがむつかしいし、魔力耐性もそこそこ高かったはずだ。今のあたしはそこまで動けるわけではないので、すべて魔法で対処する必要がある。
「《爆発》!!」
試しに、先ほど使った大技を放つ。がしかし、ダメージは受けるもののチリへと返すことはできなかった。お返しとばかりにあたしの方に触手が伸びる。あたしはぎりぎりで回避できるものは回避し、木刀で叩く。
「……やっぱり、直剣が欲しくなるわね」
痛がっているが、そこまで大したダメージは与えられていないらしい。
異界で入手した木刀ながら、それでも鋭いので叩き切れると思ったけれども、触手の滑りから痛打を与えるだけに収まっているようである。
「《炎槍》!」
あたしは右手でルーンを刻み、炎の槍を召喚する。
テンタクルを貫くために発撃するも、ぶつかって爆散しても、大したダメージになっていない。
(あの粘液が邪魔ね。粘液で熱が本体に通ってないみたい)
あたしをとらえようとしている触手を最小限の動きで回避しつつ、あたしは考える。
(内側から爆破しても、高い魔力耐性でレジストされる。外から焼いても粘液のおかげでほとんどダメージなし。あたしは接近戦はできないし、鋭い武器も無い。さて、どうしようかしら?)
と、考えていると朋美の声が聞こえる。
「エリちゃん、電撃とか効くんじゃない? 粘液って水に比べれば不純物質多めだし、電気を通すかも!」
「……! ありがと!」
あたしは朋美の意見を参考に、ルーンを描く。確かに、雷は失念していた。
「《雷》!」
ルーン文字から直線に雷が放たれる。実際、触手に命中すると、電撃が伝ってテンタクルにダメージを与えた。
「!」
朋美のおかげで、あたしは活路を見出すことができた。
改めて、朋美と科学に感謝をして、あたしはテンタクル討伐のために魔法を構築するのだった。
要望があれば、引っかかった様子はR18版に書くと思います。
エリシアの【魔女術】スキルがチートなので、ダンジョン内だと不意打ちぐらいしかトラブルにならない。。。
ただ、トラブルになるとR18化するんで、回避策になってますね。