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村娘だけど実は勇者の転生者でした  作者: 空豆だいす(ちびだいず)
異世界に飛ばされたけれど私は元気です
123/155

新宿駅異界化?!

 あたしたちは帰るためには中央線から埼京線に乗り換える必要がある。

 なので、あたしたちは中央線から降りて3番乗り場に移動していた。


「あ、ごめん、ちょっとトイレ行くね」


 ちょうど、トイレの前を通過するときに朋美がそういった。


「おう、待ってるよ」


 十代がそう返す。

 あたしたちもうなづいた。

 十代達が解散になるまで待っていたのですっかり遅くなってしまったが、あたしたちは一緒に帰ることができていた。


「あれ、朋美遅いな」

「女の子はトイレに時間がかかるのよ」

「にしても、遅すぎないか?」


 十代の指摘に、あたしたちは時計を見ると15分も経っていた。

 スマホを見ても、遅くなる旨の連絡はない。


「それに、さっきから女子トイレに入っている人が出てくる気配もないような気がするが……」


 嫌な予感がした。

 15分の間に女子トイレに入った人はまだしも、それ以前の人が出てくる気配もなかった。


「エリ、入ってみましょ。十代は待ってて」

「おうよ。何かあったら呼んでくれ」


 あたしたちはうなづくと、女子トイレに侵入する。

 入った瞬間、嫌な感覚がして、周囲の風景が崩れる。そこは、異界(ダンジョン)化した新宿駅の光景だった。


「ダンジョン?! 女子トイレが入り口になってたっての?!」

「すでに入っていった人はいるかしら?」

「周囲を見る感じだと、見当たらないわね」


 異界化した新宿駅は異様な雰囲気を醸し出していた。


「まずは十代に連絡するわ」


 そう言うと、蘭子は電話をかける。


「もしもし? ……女子トイレがダンジョン化してるわ。朋美は見当たらないわね。……わかった。気を付けて」


 どうやら、電話は通じたらしい。十代に電話で状況を説明したようだった。こっちから連絡をすれば繋がるのだろうか? よくわからない法則だ。


「とりあえず、十代は男子トイレから入れないか確認して、無理なら女子トイレに突入するって言っていたわ」

「了解。じゃあ、先に朋美を探しましょう。あたしや蘭子みたいに怪物に対抗できるのかはわかんないしね」

「そうね」

「それに、巻き込まれた人も見つけなくちゃね。生きているなら助けなきゃ」

「……わかったわ」


 あたしの決意に蘭子はうなづいた。

 こうして、あたしと蘭子の二人きりの異界化新宿駅探索が始まった。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 朋美は、女子トイレに入った瞬間に周囲の状況が変化したことに気が付いた。

 以前、塾で急に周囲の様子が変化したのと似ている。


「え、女子トイレがダンジョンになってる……?」


 朋美は蘭子と違って戦う力を持たない。

 実際、塾のダンジョンでも【専用武器】を入手することはできなかった。

 戦いのときも、後方支援に徹するエリシアの指示だしをしていただけである。

 そのため、不安になる。


「と、とりあえずトイレはないかなぁ、なんて」


 朋美は実際トイレが近かったので用を足せるところを探しつつ、出口を確認する。


「……案の定、女子トイレの入り口は消え去ってるわね。うぅ……十代もらんちゃんもいないのに、怪物出てきたらどうしよう……?」


 朋美はとにかく、敵に遭遇しないように安全地帯とトイレができそうな場所を探すことにした。

 それにしても、天井からぶら下がる案内板はゆがんでいるし、広い部屋は新宿駅構内、通路は山手線の電車の中といういびつな構成になっているダンジョンに、朋美は異様な違和感にさいなまれて気分が悪くなってくる。

 塾がダンジョンになった時は感じなかったそこまで強く違和感を感じなかったが、いざ一人で探索となるとどうしても周囲の景色に目が行ってしまい、それで違和感を感じていた。


「うぅ……気持ち悪い」


 現実が酷く浸食される感が強く、応援で疲れていたのもあり早くもくじけそうだった。


「と、とにかく、安全地帯とトイレを探さなきゃ……!」


 尿意を我慢しつつ、探索を進めていると悲鳴が聞こえた。


「悲鳴? 女性の?」


 朋美はなるべく姿をさらさないように、悲鳴があった方に向かう。そこには、ファンタジー系のアニメで見るようないわゆる【ゴブリン】たちが女性たちに襲い掛かっていた。女性達は朋美と一緒に女子トイレに入ったはずの女性だった。


「いやああああ!」

「来るな! 化け物!」


 大人の女性が子供の女性をかばう形で逃亡している。


「……!!!」


 朋美はその光景に驚いて声を上げそうになり、口をふさいで物陰に隠れる。


(このダンジョンにエリちゃんの関係者以外がいる?! な、なんで?!)


 理由はわからないが、このまま見過ごすわけにもいかなかった。十代だったら絶対に助けに入るからだ。ここで逃げだしたら十代に顔向けができないと朋美は思った。

 だけれども、自分には戦う力はない。

 朋美は周囲を見渡した。


「あれは……!」


 朋美は落ちていた()()を拾うと、即座に頭の中で女性たちの救助計画を立てる。


「うん、いける!」


 朋美は決意すると、魔物たち注意をひくために声を上げた。


「こっちを見なさい!!!」


 朋美の戦いが始まった。

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