異界化塾の探索 F11(最深部)
「しっかし、十代は強くなりすぎじゃね?」
「そうか? まあ、そうかもな。お前らを守らなきゃならねぇって思ったら、強くなってたわ」
「お、おう。まあ、十代は頼もしいよ」
「鉄球の投球も事前に小南が考えた作戦だったしな。小南、サンキューな!」
「まあ、戦闘じゃ役立たずなんでね。これくらい十代の活躍に比べればどうということはないさ」
互いの健闘を称えあう男子たちを置いておいて、あたしはミノタウロスが倒れた場所を調べる。そこには、あたしが持っているあの魔法石に似たような石があった。その色は青味がかった紫であった。
描かれている文字は、あたしの知らない文字で描かれていた。ただ、書かれている内容は同じな気がする。直感だけれどね。
「あれ、エリ、どうしたのその石」
「たぶんだけど、ミノタウロスの討伐報酬みたいなものだと思うわ」
「なんか、綺麗な石ね。金縁の文字が描かれているのね」
「うん、知らない文字だから読めないけれどね」
あたしはそう言うと、魔法石をポケットに仕舞う。
「それじゃ、最深部に行きましょうか」
あたしがそう言うと、全員がうなづいた。
最深部は塾の入り口のようになっていた。
扉は自動扉のように見えるけれど、外の光景が窓ガラスに絵を裏から張り付けたかのように現実味のない光景だった。
「気味の悪い空間だな」
「ただ、内装は塾のそれのままなんだよね」
「だからこそ余計に気味悪んだよね……」
気味が悪いけれども、とにかく最深部で出口のようである。
あたしは意を決して、玄関の自動ドアを手動で開けることにした。
「それじゃあ、開けるわよ」
あたしが扉に触れたと同時に、周囲の景色が砂のように溶け出す。
またこの光景かとうんざりしていると、気が付けば元の席に朋美と一緒に座っていた。
時間は、異界に召喚されてから20分しかたっていなかった。
「……エリちゃん! 帰ってこれたね!」
「そうね! よかったわ!」
周囲の他の生徒たちも、これまで時が止まったってたように動き出し、騒然とする。
実際、急に20分時間が吹き飛ばされた感覚なのだろう。
「キングクリムゾンが発動した?!」
「いや、近くにディアボロはおらんやろ。でもいつの間に20分も経ってたんだ?」
そんな話が聞こえてきたが、意味が分からないのでスルーするけれども、実際あたしたちが探索をしている間、異界化した塾の素材になっていたのではないかとあたしは思った。
「それにしても、本当にもう疲れた。かえってお風呂入って寝ましょ」
「そうだね。さすがに、あんな冒険をした後だとこの後何もしたくないよね」
あたしたちはあの後慌てて入ってきた蘭子や輝明、小南と一緒に家に帰った。
あたしたちはくたくたで、家に帰ると泥のように眠ったのだけれど、あたしのポケットにはしっかりとあの青紫色の魔法石が入っており、現実だったことを改めて突き付けられたのだった。
これで、異界化した塾の話は終わりです。
張った伏線、頑張って回収します。
というか、以前のバージョンに比べてギミックと伏線は増やしたので、結末に向けて頑張って回収していきます。
ダンジョンについては全部書くと同じことの繰り返しになるため、バッサリと出来事で飛ばしていますが、基本的には不思議のダンジョンの攻略のようなものなので、あまり変わり映えしないものだと思ってもらえればいいかなと思います。
次の話も異界化した何かを探索する話になるかなと思いますので、よろしくお願いします。(予約投稿で何日分かストックしてますが)