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村娘だけど実は勇者の転生者でした  作者: 空豆だいす(ちびだいず)
異世界に飛ばされたけれど私は元気です
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異界化塾の探索 F10(ボス部屋)

 十代と蘭子が起きた後、地下7階、地下8階と順調に進んでいき、あたしたちはついに地下9階に到達した。

 輝明の言う通り、本当にボス部屋だったようで、数字や英文字、漢字や地図記号で構成されたミノタウロスらしき敵が扉を塞いでる。


「ミノタウロス……?」


 朋美の言葉に、こちらの世界でもあの姿はミノタウロスなのだなと思う。もちろん、あたしの世界とこの世界ではミノタウロスの語源は違うけれども、名前が一致するのはなかなかに奇妙な話ではある。

 だが、悠長に考察をしている暇はなさそうであった。


「やばっ!《防壁(プロテクション)》!」


 あたしはミノタウロスの一般的な性質を思い出すと、十代達の前に立ってすぐさま防壁を張る。

 案の定であった。

 バリア越しではあるが、体当たりの衝撃が重く伝わる。


「ぐぅ……!」

「やるじゃねぇか! じゃあ前線は任せな!」


 十代はそう言うと、前に出る。


「《光鎧(ライトアーマー)》!」


 あたしはとっさに、十代と蘭子に光の鎧をまとわせる。ミノタウロスの手に持つ斧は文字が組み合わさってできているけれども、十分な殺傷能力を持っているように見えたからだ。


「唸れ、バット! 燃えろ、闘魂! うおおおおおぉぉぉ!!」


 十代は声を上げ気合を自身に注入してミノタウロスに突撃をかます。


「喰らえ! (すね)百叩き!!」


 ミノタウロスの攻撃を直線的な動きにもかかわらずすべて回避し、十代は懐に潜り込むと牛の足のようになっているミノタウロスの(すね)を金属バットで力いっぱいぶん殴る。


「ブモッ?!?!」


 さすがに脛を金属バットで殴られて痛くないはずがなかった様子だ。

 あまりの痛さにミノタウロスは反撃に斧を振り回す。


「そんなちゃちい攻撃! あたらねぇな!」


 十代はその攻撃を器用に回避している。いや、実際は金属バットで斧の重激をいなしていた。

 激しい金属音が鳴り響くが、なぜか十代は吹き飛ばされずに反撃をしている。


「でかいからって隙が無いわけじゃねぇな!」


 十代はそう言うと、斧を持つ手をバットで打ちのめす。


「体育で剣道をやっててよかったぜ!」


 その様子を見れば明らかだが、十代の戦闘能力は剣道をやっててよかったレベルではなかった。

 異界攻略でずっと前衛を張っていたおかげか、身体能力も上がっているように見えた。

 そんな十代の一撃を小手に受けて、ついにミノタウロスは斧を手からこぼしてしまう。まるでガラスが砕け散るように、斧が地面に落ちるとともに文字がばらばらにはじめ飛び粉砕された。


「あーしも斧さえなくなれば行けそうだから行くね」

「うん、頑張って、蘭子!」

「頑張って!」


 蘭子の言葉にあたしと朋美がうなづくと、蘭子はミノタウロスに攻撃すべく駆け出す。


「あたしも魔法で攻撃しないと」


 十代の戦いぶりに見とれてしまったが、あたしも魔法を使って戦うことができる。


「《火炎槍(フレイムランス)》!」


 あたしは炎の槍を召喚し、ミノタウロスに放つ。牽制に3本、本命に1本順番に放つ。

 牽制の槍で移動の選択肢を制限して、本命の一本を心臓(じゃくてん)に当てるのだ。

 あたしの魔法に気づいた蘭子は、ミノタウロスを誘導するように攻撃をする。

 メリケンサックを追加装備した蘭子の拳は、十代の金属バットと同様に凶器である。蘭子の鋭いパンチがミノタウロスのバランスを崩すように突き刺さり、そこに十代の金属バットが襲い掛かる。そして、牽制用の炎の槍にも左腕、脇腹に刺さる。


「お、結構余裕で勝てそうじゃん」


 輝明の言う通り、最初こそ十代の活躍があればこそだけれど、斧を失ったミノタウロスはどうやらあたしたちの相手ではなかったようだ。

 なんでこんなに強くなったのだろう?

 疑問に思いつつも、あたしは本命の一本をミノタウロスに突き刺す。

 だけれども、魔力耐性があったのか致命傷に吐いたらなかった様子だった。

 ミノタウロスがあたしをにらむが、そうはさせないと十代がバットを振るう。


「よそ見してんじゃねぇ!」


 しかし、ついにミノタウロスは右腕で十代の金属バットを捕まえてしまう。


「十代?!」

「心配すんな!」


 十代は金属バットを手放し、右腕から逃れると腰から鉄球を取り出す。


「俺は4番バッターだが、別に投手ができねぇわけじゃねぇ!」


 十代は投球フォームで鉄球を構えると、大きく右足を振りかぶる。


「これでも時速130kmは出る、俺様のストレートを受けてみな!」


 まるで十代の目から炎が噴き出すように、闘魂を燃やす十代の手から速球が放たれる。それはまさに速球だった。野球ボールと鉄球はまた違うはずなのに、鉄球をミノタウロスの顔面に直撃させるコースで球を投げたのだ。


「援護するよ、エリ!」

「任せて!」


 あたしと蘭子はその速球が直撃するように援護をする。


「《雷撃(サンダーボルト)》!」


 あたしは速球に雷属性を加えるために攻撃魔法を放つ。

 雷撃は鉄に引かれ、雷をまとう。

 蘭子は逃げれないようにミノタウロスに攻撃をしかけ、鉄球から回避できないようにする。


「モォ!」


 ミノタウロスは唸ると左腕で球を弾く。

 だが、雷の属性が乗った鉄球は当然ながらミノタウロスに通電するし、そもそも130km/hの速さの鉄球を腕で弾けばどうなるかなんて言うまでもなかった。


「誰が1球なんて言った? おらよ!」


 再び、十代は投球フォームを取ると、ミノタウロスの顔面に向かって鉄球をお見舞いする。

 2発目も、右手で防がれるも、両腕とも使い物にならなくなったミノタウロスに3発目を避けることはできなくなった。あたしと蘭子が避けることをさせない。


「とどめの一球! 俺の魂を込めておまえを倒し、このダンジョンから脱出してやるぜ!」


 最後の1球は剛速球だった。吸い込まれるようにミノタウロスの頭部に直撃をした球は、そのまま貫通してしまうほどであった。

 頭を失ったミノタウロスは、崩れ落ち、崩壊する。


「うをおおおおおお!! 十代すっげええええええ!」

「明らかに最初のころとは違う力を発揮してるよね。やっぱりレベルアップしたのかな?」


 輝明は興奮し、小南はそう考察する。

 なんだかんだであたしたちはそこそこ苦戦はしたもののミノタウロスを倒すことができたのだった。

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