異界化塾の探索 F7(小休止)
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あたしたちはB6階まで降りてきた。
あたしの通う塾はオリエンテーションをやった部屋が3階だったので、地下4階に該当するわけである。
「敵が急に強くなったな」
十代が肩で息を切らしながらそう言う。
結構長時間の異界探索になっており、集中力も切れてきたこともあるだろう。
実際、地下6階になってから敵がまとっている数字の色がピンク色になり、危険度が増しているのは事実である。
「そろそろ、休憩入れないとね」
ちょこちょこ小休憩は挟んでいたものの、ここまで長丁場ともなるとやはり、1時間ぐらいの休憩が必要だろう。
「じゃあ、階段横で休憩するのがセオリーだから、下りの階段まで頑張ろうよ」
そういうのは、輝明である。
まさにゲームみたいな異界で、ルールを知っている人のアドバイスは参考になる。
「しかし、99階の不思議のダンジョンとか、よくもまあスタミナ持つよね」
「バトル自体もターン制で簡略化されているしね。実際の戦闘だと回避したりのやり取りがあるから、減るスタミナの差は歴然といった感じだね。ただ、ついて行っているだけの僕らですらかなり体力を消耗しちゃってるし、商人だとか風来人のスタミナはすさまじいことがわかるね」
おそらく、参考もとになっているゲームの話なのだろうけれど、あたしにはよくわからなかった。
あたしたちは戦闘をしつつ、なんとか下りの階段のところまでたどり着いた。
「《聖域》」
あたしはさっそく魔除けの魔法を使う。この異界で通用するかはわからないけれども、あたしたちに敵意を持つ生き物などから見つからなくするための魔法である。
「魔除けの魔法とかあるんだね」
「場所を固定して使う魔法だからね。使ってる最中はあたしが動けないし」
「なるほど、エリシアさんの魔法は魔法というよりは魔術に近いんだね。結構制約が多い気がするし」
「そうなのかな?まあ、できないことも無いとは思うけれども、そもそも大気中にある魔力を使って魔法を行使しているから、その場のルールに縛られてるのかもしれないわね」
たぶん、【魔女術】で作った魔法ならば何でもできるとは思うけれども、この異界には何らかの制約がかかっている気がしている。まあ、今のあたしではそのルールを無視できない状態なのだとは思うけれどね。
「ま、なんにしても、これで休憩できるわけだな。せっかくだし俺は寝させてもらうぜ」
「あーしも、かなり疲れたし、少し寝るね」
「うん、見張りは任せて!」
あたしはまあ、そこまで疲れてはいなかった。
それに、《聖域》の維持もあるので寝るわけにはいかない。とはいえ、地面に座って足を投げ出す。今日はパンツスタイルなので問題ないだろう。
「しかし、もう9時間近くもこの空間に閉じ込められているわけだね」
「それにしては時計が7分しか進んでいないけれど、外の時間の流れとは違うのかな?」
小南の腕時計はデジタル時計である。輝明の腕時計はアナログ式であった。
「嘘? 俺の時計だと11時14分になってるぜ?!」
「興味深いね。僕の時計だと14時20分だ」
「うぇぇ……。そっか、俺の時計はアナログだから、時間の進みは俺の体感時間と同じで、小南の時計は電波時計だから、外の時間で調整されるわけだな」
「そうらしい。スマホの時計とか見ても、14:20になっているからね」
あたしたちはそういわれて、携帯電話を取り出すと、足しに小南の言う通りになっていた。
「てか、小南ってよくもまあ時間について気にしてたわね……」
「時間については最初から気にしてたのさ。結構時間がたったと思うのに進まない時計を見れば、この不思議のダンジョンが他と時間の流れが違いそうだなということぐらいはね」
「まじかぁ。俺、先生にどう言い訳しようか悩んでたとこだったぞ!」
「そんなに長時間行方が分からなくなっていたらいろいろと大変だろうしね」
「晄ヶ丘とはダンジョンのルールが違うのかもしないなぁ。あっちは時間通りだったじゃん?」
「そうだね。夜中に潜入して、朝方に出れたって感じだったもんね」
確かに朋美の言う通りだった。
そう考えると、以前の【門】とは違う何かが異界化の原因と考えられるだろう。
むしろ、【門】による異界化が呼び水となって、縁のあるあたしがいることによって発生してしまった可能性もある。
どちらにしても、最深部に到達しないと何も解決策を見いだせないだろう。
「なんにしても、地下6階から敵の強さが上がったってことは最深部は近いな。たぶん10階がボス階だと思うから、しっかりと装備を整えつつ、先に進もうよ。さすがに合成の壺とかは拾えなかったけどさ」
「合成の壺……?」
あたしと朋美は首をかしげる。彼らの言う【不思議のダンジョン】に出てくるアイテムだろうか?
「後学のためにも、今度遊ばせてくれないかしら?」
「お、エリシアさん興味ある感じ?」
「まあそうね。今後も似たような目に遭いそうな気もするし」
「あんまりこういう危険なところに巻き込まれたくはないんだけれどね」
全員がうなづく。
あたしのせいではないけれども、あたしが原因の一つであることは変わりないので少し申し訳ないけれども、みんなで一緒に行動しているからこそ、あたしは心強かった。
あたしたちは十代と蘭子が起きるまで、《聖域》の中でそれぞれ準備をしつつ、休憩を取るのであった。