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村娘だけど実は勇者の転生者でした  作者: 空豆だいす(ちびだいず)
異世界に飛ばされたけれど私は元気です
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異界化塾の探索 F4(お店)

今回は箸休め回です。(めったにない)

頭の中にお店のBGMでも鳴らしながら読んでください。

 不思議のダンジョン、というだけあって、部屋の構成は同じでも構造は全く異なっている。

 ただ、現実でありゲームではないので、サクサクと進めることはできない。意味不明な敵が襲い掛かってくるし、なぜ塾が異界(ダンジョン)化したのかも不明だった。ともあれ、別にフロアの完全踏破が目的ではないので、あたしたちは階段を見つけ次第降りるようにしていた。

 そして、あたしたちの居たフロアを1階とするならば、ちょうどB3階にあたる階。そこに店を開いている人物がいた。


「いらっしゃイ。お客さん初めて見るネ。お店の説明入るかイ?」


 あたしたちは顔を見合わせる。誰、このおじさん。それが、あたしたちの共通認識だった。

 印象としては、まさに行商人というイメージをそのまま具現化したような姿をしていて、話し方は訛りの強いファンタジー中国人の話す日本語という印象で、この異界(ダンジョン)と同じく非常に現実味を感じない人物だった。


「えっと、おじさんは誰ですか?」

「わたしはしがない行商人だヨ。異界(ダンジョン)で商売をやっているネ」


 まるで、異界(ダンジョン)が普遍的の存在するみたいな物言いだ。


異界(ダンジョン)で? わざわざ?」

「そう、異界(ダンジョン)は必ず挑戦者が現れるものだからネ。そう言う冒険者を相手に商売をしているネ、珍しい格好をしたお嬢さん」

「珍しい?」

「そうネ。見ないわけではないけド、多くはもう少し鎧を着ていたリ、直剣を装備してたりするネ」


 つまり、この謎の人物は異界(ダンジョン)を使って様々な世界の人間相手に商売をしているということなのだろう。そもそも、あたしの世界には異界(ダンジョン)化自体なかったから、正直初耳である。


「ま、お客さんがどういう人間かなんて興味ないネ。異界(ダンジョン)で手に入るお金、それを使って取引するネ」

「え、これお金だったんだ」


 輝明が驚いた様子で袋に入った銀貨を取り出す。


「そう、それネ。商品は並べてあるネ。聞いたら商品の値段答えるネ。お客さんが商品を持ってワタシにお金を渡すネ。それで取引成立ネ。値引きはしないネ。逆に売りたい場合は商品を床に置くネ。ワタシが対価を払うネ。こっちも交渉には応じないネ。わかったカ?」

「……まるっきり、不思議のダンジョンのお店じゃん!」


 輝明はびっくりしながらそう答える。確かに、まるでゲームのような商売の仕方である。


「ますます訳が分からなくなってきたわ……」


 あたしは頭を抱える。

 そもそも、異界(ダンジョン)化自体がイレギュラーだと思ったけれども、そうでない異世界もあるということだ。あたしの世界にも、この世界でも見たことも聞いたことない話であったが、そんな異界(ダンジョン)に行商人がいるのも意味が分からない。


「エリシア。なんにしても、わからねぇことに頭を使うんじゃなくて、先に解決する方を優先させるべきじゃねぇか?」

「まあ、そういわれればそうなんだけどね……。でも、気になっちゃうじゃん」

「輝明の言う不思議のダンジョンに似てるってやつか?」

「そうそう!」

「俺は頭悪いからわかんねぇけど、考察するなら輝明か小南あたりに任せて、俺たちは安全な場所にたどり着いてから考えようぜ」

「……そうね」


 ちなみに、十代は頭が悪いわけではない。勉強が好きじゃないだけだ。戦闘のセンスを見ても、頭の回転は速いし機転もきくので、勉強をせざるを得ない状況になれば上位行を狙えると、純一園長が言っていた。今は時期だけに野球一本に絞って集中しているだけである。


「といっても、売ってるものはどれも異界(ダンジョン)で手に入るものばかりなのね」

「不思議のダンジョンってそういうものだよ。まあ、お店によってはお店でしか手に入らないアイテムがあったりするんだけどね」

「俺、頭の中でお店のBGMが鳴ってるや」


 そんなこんな言いながらも、あたしたちはお店の商品を見ていく。まあ、どう見ても単にこの階層に落ちているであろう装備品や、弁当(なぜ)、回復薬が置いてある。


「なあ、弁当もらっていいか?」


 十代がそんなことを聞いてくる。それに朋美が答える。


「うん、いいと思うよ! 敵と戦ってておなかすいたんでしょ」

「そんなところだ。輝明、会計を頼む」

「おお、わかった」


 なぜか店内に置いてある弁当を十代は拾うとふたを開ける。中はのり弁だった。


「お、うまそうじゃん!」

「本当だ!」

「これって店主さんが作ったんですか?」


 朋美が聞くと、店主は首を横に振る。


「ちがうヨ。とは言ってモ、弁当自体は行商人グループで流通しているものネ。安心して食エ」

「そっか! ならいただきます!!」


 十代はよほど腹が減っていたのだろう。のり弁を搔っ込む。その間に輝明は弁当代を支払う。


「ありがとネ」


 他に買うものはないかなと思った。

 あたしの場合、魔法を行使するために自分の魔力を消費することはないし、そもそもこの異界(ダンジョン)ではマナが濃いので回復魔法すら使いたい放題なのだ。

 武器や防具も、既存のものと入れ替える必要はなく、十代が弁当を食べ終わったら、店を後にすることになった。


「ごちそうさん! うまかったぜ!」

「毎度ありがとうネ」


 腹を満たした十代とともに、異界(ダンジョン)にあるお店を後にしたあたしたちは、異界(ダンジョン)を攻略するために、脱出するためにさらに探索を進める。

 あたしを基点に発生させた異界(ダンジョン)とはいえ、その目的も意図もわからないまま、さらに奥深くへと足を進めざるを得ないのだった。

■装備========================

エリシア

武器:固めの木刀

防具:普段着+古めかしいローブ


加賀美 十代

武器:有名ブランドの金属バット+1

防具:野球部のヘルメット・野球部の選手着+市販のキャッチャー防具


紀里谷 蘭子

武器:喧嘩用のグローブ+2

防具:普段着+肘当て、脛当て


佐川 朋美

武器:なし

防具:普段着


時山 輝明

武器:市販のカッターナイフ

防具:普段着


笹川 小南

武器:なし

防具:普段着

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