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村娘だけど実は勇者の転生者でした  作者: 空豆だいす(ちびだいず)
異世界に飛ばされたけれど私は元気です
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異界化塾の探索 F1

 異界化した塾はまさに、輝明と小南の言う「ローグライクダンジョン」じみた構造をしているようであった。

 敵を倒せばアイテムがドロップし、それぞれの()()()()や防具がその辺に落ちているという、意味の分からない状況であった。【専用武器】というのが、現代日本にあるもので、十代には金属バット、蘭子にはグローブやメリケンサック、あたしには木刀という感じでそれぞれが武器として扱っているものが()()()()()


「え、これ結構高い奴じゃん!」


 そして、強そうな武器は実際ランクが高いらしく、現実世界でも高級だったりするようである。


「あれかな、次にダンジョンに挑むときはモデルガンでも持って入ればいいのかな?」

「確かに、牽制には使えそうだね。実際、改造モデルガンは殺傷能力があるってYouTubeでやってたし」

「ただ、金属バットは武器として使おうとすると重くて持てなかったりするから、何らかの制約がかかってるっぽいよな」

「まさに【専用武器】扱いなのだろうね」


 輝明と小南の考察組がそう語る通り、持ち物として取り扱う分には問題ないけれども、武器として扱うことができないような制約がかかっているらしい。この現代日本で異界を無理に再現しようとした弊害なのだろうか?


「出たな!」


 と、敵に素早く気が付く十代。

 その敵は英語がまとわりついた様な犬の姿をしていた。犬の表面に英単語がびっしりという感じではなく、アルファベットが絡まって犬の形を模していると言ったら、気色悪さが伝わるだろうか?

 その英語犬が3体出現していた。


「っらぁ!」


 十代は向かってくる英語犬にバットを振るう。しかし、英語犬は素早くよける。


「《光鎧(ライトニングアーマー)》!!」


 あたしは素早く、前に出て戦う二人に光の防護鎧を身につけさせる。蘭子も前線に加わり、英語犬に攻撃を仕掛ける。3匹のうち1匹があたし目掛けて突進してくるが、動きが直線的なので木刀で切りつける。


「はぁ!」


 勇者だったころに身に着けた動体視力と反射神経は健在で、英語犬の脳天を正確にかち割る。


「……エリちゃん近接戦闘もいけるんだね」

「目はいいから、近づいてくるんだったらね。十代や蘭子みたいに機敏には動けないから、宝の持ち腐れなんだけど」


 今ではもうすっかり、この鈍重な体に慣れたけれども、リハビリが長引いてしまったのにはやはり、勇者だったころの身体能力が高すぎて感覚の落差が激しかったこともある。今のあたしは体力的には普通の中学生女子レベルである。

 そもそも、十代も蘭子も戦闘のセンスが高い。今のあたしでは二人には到底敵わないだろう。

 蘭子は英語犬の攻撃を的確に捌いているし、十代はバット一本で撃退しているからだ。


「いやでも、正確な攻撃ができるってだけでもすごいと思うよ」

「ありがとう。とにかく、二人を援護しなきゃね」

「うん!」


 あたしは魔法を唱えて二人の援護攻撃を行う。

 何気に朋美も観察眼に優れていて、朋美の有効な指示を受けてあたしが魔法を発動するパターンも多い。実際、朋美と将棋をした時も勝てたことはなかった。

 結局、戦闘は数分で終了する。十代も蘭子も大した怪我はなく、あたしの回復魔法で問題なく治療できた。


「しかし、勉強に関連する敵ばかり出てくるね」

「塾と関係あるんだろ? ああ、どうせだったらクリア報酬で成績上がらねぇかなぁ」

「それな」


 十代達はそんな軽口を言い合いながら、部屋の探索をする。

 実際、結構入り組んだ構造になっており、道中文字で構成された敵が出てくるため探索にそれなりに時間がかかってしまう。

 ようやく次の階に向かう階段を見つけたときは、体感時間で3時間ぐらい経っている気がした。


「ようやく次の階に向かう階段ね」

「下りの階段がこんな形で部屋のど真ん中にあると、奇妙よね」


 蘭子の言う通り、下りの階段は教室の中にあった。

 そんなところにあったらおかしいだろうと思うような配置に、頭の中が混乱するレベルだ。

 そもそも、この状況もなかなかに混乱するのだけれども、違和感で混乱する形なので、違う形の混乱を引き起こすような配置といえるだろう。


「まさに、不思議のダンジョンだよね」

「リアルでゲーム体験かぁ、命かかってなければ楽しいんだけどね」

「命がけで戦っているのは、俺と蘭子な気がするが……」


 さすがに、輝明の発言に十代がツッコむ。


「とにかく、進んでみましょ。進まないことには脱出もできないしね」


 朋美の言葉に、あたしたちはうなづき、階段を下る。あたしたち全員が下り終えると、階段は解けるように霧散してしまうのだった。

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