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村娘だけど実は勇者の転生者でした  作者: 空豆だいす(ちびだいず)
村娘だけど実は勇者の転生者でした
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急な謁見1

 あたしはティアナとは別の部屋に案内されて、着せ替え人形にされていた。ドレスをあれこれ着せられ、化粧をさせられ、髪型をいじられた。まあ、綺麗に着飾れるのは嬉しいし、まんざらでもなかったけれど。

 ある程度服装が整い、あたしは鏡の前に立たされる。全身が見える鏡を確か姿見と言うのだっけ。あたしの腰まである金髪は綺麗にまとめ上げられていた。あたしの知らない髪型だけれど、後頭部でお団子状にまとめられており、その周りをみつあみにした髪がぐるっと囲っている。服装はそこまで派手な装飾ではないけど気品を感じるドレスである。なんか、お嬢様にでもなった気分ではある。あたしの容姿も相まってりりしい感じに仕上がっているのは、『勇者』をイメージしたからであろうか。眉毛もしっかりと整えられており、今の状態を見たらあたしのことを村娘だと思う人はいないと思える。


「はぇ~……」


 あたしは姿見を見て感心する。


「いやー、エリシア様は元がとてもいいから、頑張りがいがありましたよ」

「ええ、エリシア様の着せ替え楽しかったですよ」


 女主人の宿命なのか。不意にあたしは前世の転生者の本の内容を思い出して苦笑する。自分が綺麗になるのはなかなか楽しかったのであたしてしても文句はつけられないのだ。


「ありがとうございます。あたしとしてもここまで綺麗になれるとは思っても見ませんでした」


 せっかくなので、ウィータさんに教わった貴族の礼を試してみる。様になってたら良いなと思うけど、どうだろうか?


「まだ若干ぎこちないですけど、多少は見れるようになりましたね、エリシア様」


 ちょうどウィータさんがのぞいていたらしく、そう感想を述べる。まあ、着ている服のおかげ感がすごいけどね。


「ありがとうございます」

「言葉遣いは3日で矯正できるものではないけどね。なるべく話さないようにしてちょうだいな」


 ウィータさんからは「はい」か「承りました」か「お褒めにあずかり光栄であります、陛下」以外を陛下の前で口にするなと言われている。他の貴族様も見ているのだ。まあ、仕方ないだろう。あたしとしてもこう言う場で事を荒立てるつもりもない。

 貴族って大変だなー。


 そのあと、ティアナと合流した。ティアナはあたしの凛々しい姿とは異なり、花のような可愛らしい姿になっていた。ヒロイン力の違いを見せつけられているような気分になってくる。ティアナも案の定着せ替え人形にされたらしく、疲れている様子であった。

 本来出会ったらこの時間帯の謁見は無いそうであるけれど、王様の鶴の一声で実施されることになったようだ。早く一目会っておきたいとのことで、その要求が認められるのもさすが王様といったところである。

 日は暮れてしまい、夕食を食べる時間帯であるが、ほとんどの人間はまだ活動時間であるので、あたしとしても問題はないけど、旅の疲れはあるので若干苦笑いである。

 謁見の間も前の扉の前で待たされていると、おっさん──カーネリック卿が、何人か連れてやってきた。おっさんはちゃんと貴族の格好をしており、取り巻きは部下みたいなものかなとあたしは思った。


「エリシア様、ティアナ様、旅の疲れがまだ残っていると言うのに陛下のお戯れにお付き合いいただきありがとうございます」

「い、いえ。私としても何が起こってるのかわかんなくて混乱してて……」


 あたしはそこまで混乱はしていないけど、ティアナはそうではなかったようだ。あたしが肝が座っているだけな気がしないでも無い。でも、緊張しているのは事実である。誰だって、王様に会うとなったら緊張するでしょう? 女神様は急に現れるからそう言う緊張はできないけど、人間相手だと心の準備が必要である。


「まあ、そうでしょうな。本来であれば明日に謁見の予定でしたが、このままでは陛下が個人的に貴女方に会いに伺いかねませんでしたので」


 なんてアクティブな王様だろうと、あたしは思った。きっと、ショートケーキならば最初にストロベリーを食べてしまう人なんだろうなと。ちなみに、あたしの世界にもストロベリーは存在するし、ショートケーキも転生前の世界とほぼ同じである。まあ、ストロベリーの見た目は若干違うけれどね。マーティ兄さんが栽培している農作物の中でも出荷量が一番多いのもストロベリーだったりするので、お母さんからケーキの作り方を教わって作った記憶がある。


「そういえば、おっ……カーネリック様が来たと言うことはあたしたちの案内役と言うことですか?」

「む、そうなる。私の管轄する領地で発見された才能なのだ。私が陛下に紹介するのが筋と言うものだろう?」

「確かに。まあ、あたしに貴族様の機微なんてわからないので、おっ……カーネリック様に任せるしかありませんが……」

「そうだな、私に任せたまえ。君たちはこれからゆっくりと学んでいくが良いさ」


 おっさんはそういうと、意気揚々とあたしたちの先頭に立つ。先導するつもりらしい。

 と、メイドさんが扉から出てくる。


「陛下がお呼びです」

「ふむ、ご苦労。では行こうか」


 あたしたちはおっさんに続いて謁見の間に入る。

 両脇にはそれぞれ貴族様が並んでおり、あたしたちを観察していた。いたるところから観察されるのは、別の意味でも緊張してしまう。粗相が無いようにしないと。

 当然ながら正面にはおおきな王座があり、王様が座っていた。王座の右には王妃様、左には王女様と王子様が座っているようである。王様は筋肉隆々で初老で威厳がある。女神様とは別の方向で威厳があり、見ただけであたしは緊張してしまった。まさに王様と呼ばれるにふさわしい方であろう。


「カーネリック伯爵、そこで止まれ」

「はっ!」


 おっさんが明らかに緊張している。あたしたちの後ろからも緊張が伝わってくる。


「ふむ、ご苦労であった。我輩の命で《英雄》をそなたの領地から引き連れてきたことを感謝しよう」

「は、もったいなきお言葉、感謝します」

「せっかくだ。我輩にその見目麗しき《英雄》と、《大司教》を紹介してもらえないかな?」

「はっ! エリシア殿、ティアナ殿、前に」


 あたしは呼ばれて、前に出る。そして、ウィータさんに習ったとおり礼をして頭をたれる。ティアナもあたしをみてあわてて同じようにするのが見えた。


「リナーシス村出身の、《英雄》エリシア殿と《大司教》ティアナ殿でございます。齢はどちらも15歳で、先日祝福を受けたばかりにございます」


 緊張で冷や汗が流れる。まさに王様があたしを見ていたのだ。


「ほう、ほう! やはり《英雄》か! その祝福を持っているのは我輩の国に所属するだけでも《剣聖》ヴィリディア・アスタンビアと《五元素使い》ティティアナ・フィルランクスぐらいなモノだが、初めての祝福が《英雄》なのは我輩も知らぬ!」


 どうしよう、この王様めっちゃ興奮している。


「それに、《大司教》か。女神様も今年は大盤振る舞いであるな。どの街からも多くのものが【銀級】以上と聞くのだ。才ある若者が増えるのは我輩も嬉しいが、やはり予言の通り、【災厄】が近いのであろうな」


 王様はそういうと、はたと思い出したようにこういった。


「そうであったそうであった。我輩の国とはいえ将来の英雄たちに自己紹介をしてないのであったな。我輩は聖フェルギン王国を治める王、ファルディア・フェルギンと言う。右のものはフェルギンの誇る我が妻、リリア・イーリディス・フェルギン、左のものは我が愛娘のアイリス・フェルギン、ノーウェル・フェルギン、第一王子のゴーバリア・フェルギン、第二王子のゲルディナ・フェルギンである」


 なぜか自己紹介と家族紹介を行う王様に、あたしはどうしたら良いのか、ちょっと困った。第一印象だけで言うと、アイリス様は美少女、ノーウェル様は美女、ゴーバリア様は美男子、ゲルディナはマッチョ様である。


「確かエリシアと言ったか。我輩に自己紹介をせよ」


 と、言われても、そういうことは想定していない。ウィータさんの姿を見つけて見つめるが、ウィータさんは首を横に振った。諦めろということか。


「申し上げます、陛下」

「どうした、カーネリック伯爵。発言を許すので述べよ」

「はい。エリシア殿もティアナ殿も最低限の礼節に関する教育しか受けていないゆえ、陛下に対して失礼があるかと」

「なるほど、ならば、この場においてのみ失言を許そう。なに、我輩のわがままであるのだ。準備する時間も無かっただろうからな」

「はっ! ありがたき幸せ。ではエリシア殿」


 え、これはやはりあたしの口から自己紹介をする流れだろうか。そういうのは想定していないので、どうしたら良いのかわからない。が、しないわけにもいかないのであたしはとりあえず王様に習ってやってみることにした。


「王様、あたしの名前はエリシア、エリシア・デュ・リナーシスと言います。女神様から《英雄》の祝福を受け、天使様から聖剣を譲渡されました。年齢は15歳で、ルーン魔法が一応使えます。よろしくお願いします」


 あたしの自己紹介にウィータさんはじめ貴族の皆さんがビクビク反応していたが、恐らく敬語として色々と間違っていたのだろう。


「ふむ、【リナーシス村のエリシア】か。村出身ならばセカンドネームは持っていないのだろうな」


 王様はうんうんうなづくと、ティアナのほうを見る。


「ティアナ殿、自己紹介を願います」


 おっさんに促されて、ティアナは涙目で自己紹介をする。


「わ、私はティアナ・デュ・リナーシスです。《大司教》の祝福を受けました。か、回復魔法が使えます。よ、よろしくお願いします」


 ビビルよね。むしろビビら無いほうがおかしい。話し口調から王様は意外に話しやすい部類の人間であることがわかったけれど、あの威厳に当てられてビビら無い人間は普通居ないだろう。せめて同格の──同じ王族とかじゃない限りは萎縮してしまうだろう。あたしも結構萎縮しているのだ。

 ただ、ティアナの自己紹介に貴族の皆さんは無反応であったのをあたしは見逃さなかった。何が違うのだろうか?


「【リナーシス村のティアナ】か。二人には後ほどセカンドネームを送るとしよう。特にエリシアの胆力は誠に気に入った。期待して待つが良い」

「お褒めにあずかり光栄であります、陛下」


 何を褒められたかわからなかったが、あたしは練習した成果を如何なく発揮した。

ファルディア・フェルギン CV大塚周夫


11/14:誤字の修正

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