戦争孤児
2人がハーレイの港町につくと、戦争のせいか町は荒れ果てていた。
《何て酷い。この町は戦をしているのですね》
《えぇ。人間族の王アルサスがエルフ族に戦争を仕掛けて居るのです。彼らは本来戦争などしない穏やかな種族ですが、種族を守る為やむを得ず自衛を行っているのです》
《そんな…恐ろしい事を…》
姫を連れて町を歩いていくと、彼方此方の道端には親を無くしたエルフの少年少女が沢山集まっていた。
彼らは軽い傷を負っていたが、まだ魔法が使えない為、魔法が使える者が治療を行っているようだ。
《あっ!!人間族だ!みんな人間族が居るぞ》
子供達は姫の姿を見て、徐に逃げ出した。
《待ちなさい。この方は私が護衛してる方で、人間族とは無関係な方だ。安心しなさい》
《あっフィンさんだ!!》
子供達が次々とフィンの周りに集まって来た。
《フィンさんは子供達に好かれているのですね》
《私の国とこの国は同盟国です。彼らを庇護するのは当然です。たまに訪れて居るのですよ》
子供達はフィンの客と聞き、姫を来客としてもてなしてくれた。
姫はお礼として子供達の怪我や病を治癒した。治癒を始めるとフィンは驚いた。
《これは何という魔法ですか?この国で魔法の詠唱を使わず、治癒出来るとは貴女の国の魔法ですか?》
《いえ、私は産まれながらこの力があったのです。父や母には恐れられましたが、この力のおかげで沢山の命を救う事が出来ました。私は神様からの贈り物だと思っています》
《では貴女はその力で気力は消費されないのですね。この世界の魔法は気力を使うので、制限があるのです》
《そうですか、私のこの力はこの国でもお役に立てるのですね。》
《戦争状態の人間族にとっては、貴女の能力は貴重だ。この力はなるべく一目につかないようにしましょう、良からぬ連中も居るので》
《分かりました。フィンさんのおっしゃる通りに致します》
《取り敢えずヴィアパレス城に向かいましょう。エルフの女王にお願いして、人間族の港に行く船を出す許可を貰います》
《ヴィアパレス城?そちらはどんなお城ですか?》
《緑に囲まれた湖の中にあります。クリスタルで出来た美しいお城ですよ》
《女王にお許しを頂いた後、私が城をご案内します》
《まぁ、とても楽しみです。早く参りましょうフィン様》
ウィルフリート国の中央には広大な湖があり、フィンはマナと森を抜け湖に辿り着いた。
《ここでこの石を使います。これは我が一族とエルフ族の友好の証で、魔法を使わなくても城に入れるのです》
そう話すとフィンはペンダントを翳した。
《楽しみですわ。どんなお城なのかしら…。きっと素晴らしく美しいのでしょうね…私は見ることは出来ないですが…》
《マナ姫…。私の手を握って下さい。装着しなくても僅かな時間なら、貴女の目を見せる事は出来ます》
《本当ですか!?有り難うフィン様。又見れるのですね》
フィンは彼女の手を取り、ペンダントを掲げた。
すると湖の中からヴィアパレス城が浮上して来た。
《...とても綺麗!こんな美しくて素晴らしい…。有り難うフィン様。私嬉しいです》
《さぁ…姫。入りましょう。ヴィアパレス城にはエルフやドワーフやシルフなど、多種族が暮らしています。彼らは人間族に敵意を持って居るでしょう。なるべく私から離れないようにして下さい》
《はい…分かりました…悲しいですわね》
マナとフィンは、ヴィアパレス城に向かってゆっくりと歩き出した。