旅立ち
暫くすると視界が暗くなり、身体からフィンの気配が消えた。
彼は私の手を取り、語りかけた。
《マナ姫装着は長時間行うと、如何に貴女がワンダーだとしても、精神に異常をきたします。普段は私が貴女を守りましょう》
《ありがとうございますフィン様。恐らく私を呼ばれたワンダーは、人間族の山の頂上におられる筈です。私はまだこの世界を良くは分かっておりません。私をそこに連れて行って下さい》
《はいマナ姫。本来なら私が空を飛び、お連れした方がよろしいですが、今はドラゴン族と人間族との間で戦争状態の為、それも出来ません。私達は冒険者として旅をしながら山頂を目指しましょう》
《わかりました。私の目が不自由な為、貴方にはご面倒をおかけします。宜しくお願いしますフィン様》
翌日2人はまず隣国のウィルフリート国を目指し、船に乗り込んだ。
《まぁ…凄い。私船に乗るのは初めてです。何だか夢を見ているみたいです…》
マナは身を乗り出し、船の縁を撫でながら話した。
《マナ姫、危ないですよ。船の上はとても危険なので、気をつけて下さいね》
《ごめんなさいフィン様。私あまり屋敷から外に出た事が無くて、はしたないわね…ふふ》
《………》
姫は見た目は大人びた女性だったが、中身は外界と接触して居ないせいなのか、酷く子供じみた一面があり、しかしフィンはそんな彼女に好感がもてた。
彼自身がドラゴン族の皇子と言う地位があり、彼女と似た境遇にあったせいだった。