ワンダーに呼ばれし者
《私はドラゴン族の皇子、フィンと言います。貴女は森で倒れているのを私が助け、ここに連れて来ました。何故あんな所で…?》
《私…屋敷で気配を感じて、扉のような物を開いたら突然こんな所に…。貴方はドラゴン族と言いましたが、私はそんな種族を知りません…。父上母上はどうなったのでしょうか…?》
《貴女はまさか!!ワンダーなのですか!?待ってて下さい》
彼は私の話しを聞いた途端に、すぐに離れどこかに走り去ってしまった。
暫くすると彼が1人の老人を連れて来た。
《初めまして遥か彼方から来られた来訪者よ。私はドラゴン族の長アーロンと申します。数百年ぶりのワンダーの来訪なので、若い者は貴女についての知識が少ない、私が変わりにお教えしましょう》
《私はマナと言います。ワンダーとはどういう事ですか?教えて下さい》
《ワンダーとはこの世界とは、違う世界から来られた者を言います。そしてワンダーを呼べる者はワンダーのみと言われています。貴女はきっと今、この世界のどこかにいるワンダーに呼ばれたのでしょう。ワンダーを見つけ無い限り、貴女は元の世界に戻れないのです》
《そんな…私は目が見えず屋敷から出たことが無い、そんな私が知らない世界でワンダーを探す事が出来るのでしょうか…》
《私の息子フィンをお連れ下さい。ドラゴン族の中でも、まだマスターについていない未熟者ですが、力は強い。必ず貴女のお役に立てる筈です。》
《有り難いですが、貴方は何故私にそんなに良くして下さるのですか…。ワンダーとはそれ程の貴方達にとって重要なのですか?》
《はい…。この世界はワンダーの来訪によりバランスを保っています。貴女がこの世界に送られと言う事は、この世界のバランスが崩れつつあると言う事。バランスが保て無くなるとこの世界は崩壊します。》
《私は何をすれば良いのでしょか…》
《私達一族は装着と言われる魔法があります。この魔法は多量の気力を使う魔法なので、ワンダーにしか扱えません。フィンを装着する事で、貴女はフィンの知識と、この世界の理を知ることが出来る筈です。》
《マナ姫、私の名前を唱えて下さい。後は私が誘導します。》
そう言うと彼はドラゴンの姿になり、姫の手の中に消えていった。
《フィン...》
姫が恐る恐る彼の名を唱えると、光が弾け姫の目の前に一人の老人が現れた。
《あ…目が…貴方がアーロン様ですね。目が…見えなかった目が見えます》
《きっと装着の力です。フィンの力が目を治癒したのです。彼は治癒力に長けたドラゴンですので》
《これが装着の力なのですね…。そして彼の知識を全て知る事が出来ました。この世界の事も…》
《では貴女が向かうべき場所もお分かりでしょう。私に出来る事はここまでです。》