第96話 復讐と約束
空は地獄だった。互いに脱出したパイロットを撃ち合い憎しみが連鎖していく…ケリー・ルドルフ少尉は闇が空を支配する頃、最後に残っていた神雷の追撃を受けた。
「助けてくれ!ママ!クレア!」
神雷は振りきれないと悟ったケリーは飛び降りることをためらった。
理由は互いに撃ち合うあの光景である。だが、ここにいたら確実に死ぬ。
ケリーは飛び降りたた。
愛機は敵のロケット弾に破壊されたが直後神雷は10機ぐらいのシューティングスターに連携攻撃を受けて破壊された。
それが最後の神雷だったらしく味方のシューティングスター隊は去っていった。
ケリーを残して…
「ちくしょう!置いてけぼりかよ」
ケリーは漂流していた板切れにつかまると悪態をついた。
まだ、少年といっていい年齢の男だった。
18歳で少尉に昇格したケリーは軍の叩きあげである。
大西洋戦線で二代目の名の空母『ホーネット』でドイツ軍相手に手柄をあげまくった。
そこへ上官から山本殺害計画のパイロットにならないかと話が来たのである。
ケリーはシューティングスターをいち早く乗りこなしさらに昇進の話もあったが喜んでこの話に乗った。
「ねえ、本当に行っちゃうの?」
ホーネットで荷造りをしていたケリー部屋に金髪に青い瞳の少女が現れた。
「なんだクレア?淋しいのか?」
「そうじゃないけど…少しあなたが心配」
「僕が?」
荷造りをやめて振り返るケリー
「僕がどこが心配なんだ?」
「それは…」
ホーネットの艦魂クレアはケリーがエースだと知っている。ドイツ空軍とグラマンで渡り合いこの空母でも1、2を争う腕を持っている。
クレアが心配するのはある感情だった。
「憎しみで戦わないで」
「…」
ケリーは黙る。
クレアは知っていた。
ケリーの家族は日本の真珠湾奇襲で全員殺された。
ケリーはずっと望んでいたのだ。
ドイツではなく太平洋へ行きたいと。
そしてジャップ皆殺しにしてやると…
憎しみなどの感情は正常な判断力を狂わせる。
それで戦死なんかしたら…
「私も姉さん達をたくさん日本軍に殺された…見ることも許されなかった姉さん達もいる。私も日本が憎い。でも、ケリー、約束して必ず私に…ホーネットに帰って来るって」
「それは…でも僕の一存では…」
「約束して」
力強い青い瞳がケリーを見る。
「努力はするよ」
クレアはにこりと笑った。
ケリーはその笑顔に一瞬ドキっとしたが荷物を掴むと出口に向かう。
これから自分のシューティングスターでホーネットを発艦し指定された基地に行くのだ。
「じゃあ…行ってきます」
ケリーが振り返ろうとすると彼女はケリーに抱き着いてきた。
「うわ」
その頬に一瞬クレアの口が触れる。
なぜだろうこんなことアメリカ人の自分ならたいしたことないはずなのにものすごく恥ずかしい。
思わず手を頬にケリーはあてた。
「約束のキスよ。帰ってきたきたら口にしてあげる」
「え?それって…」
ケリーが聞き返すより早く
「じゃあね」
と言う言葉を残してクレアは消えてしまった。
呆然とするケリーだったがはっとするといそいそとシューティングスターに向かった。
キイイイイイイインとシューティングスターがホーネットを発艦していく。
ケリーのシューティングスターも上昇しアメリカ大陸内陸へ向けて飛んで行く。
クレアはそれを飛行甲板から淋しそうに見つめながら言った。
「帰って…きてね」
その声は誰に聞かれることなく空母が人工的に作り出す風に吹かれて消えていった。
「くそ!まいったな…」
クレアに帰ると約束した以上こんなところで死ぬわけにはいかない。
ケリーは味方の潜水艦が上がっていないかなとあたりを見回したが辺りは闇である。
潜水艦は多分いない…仲間は多分自分は死んだと判断しているだろう。
空の撃ち殺しあいはそれほど悲惨だったのだ。
むしろ生き残れた自分は運がよかったのだろう。
そんな時人の話し声が聞こえた気がしたのだ。
(誰かいる?)
ケリーは耳をすますとそれは1番聞きたくない言葉だった。
「ジャップか!」
武器といえば銃があるが濡れて使えない。
ケリーはナイフを抜くと声の聞こえる方に板をつかみながら叫んだ。
「ヘイ!ジャップ殺してやる!」
ケリーは緊張しつつ大切な少女のことを思う。
クレア…僕は帰れないかもしれない…でもジャップは必ず殺す
京子「それにしても汝ひっぱるのう」
エリーゼ「山本が生死不明となりかなりたちますね」
凛「いい加減に白状しなさいよ」
作者「ええ!だってちゃんと更新速度は遅くても2日に一回は守ってますよ?」
京子「いつ途切れるかもわからんのにか?」
作者「…」
エリーゼ「まあ、次回は宇垣とケリーが会うんですね。ケリーは死亡フラグですね」
作者「いや何?フラグって?」
京子「そうなのか?」
作者「いやいや、言えないですって学習能力な…あ!」
京子「このうつけがぁ!我を馬鹿にするなぁ」
作者「ぎゃああああ」
ズドオオオオオオン
エリーゼ「やれやれです。次回はおそらく宇垣の話でしょうがこの作者では約束はできません」
凛「反省しなさい馬鹿作者」
京子「再生中じゃな…」