第95話 闇
山本達が襲われた海域は、ちょうど小笠原諸島、ウエーキ島、ミッドウェーを結ぶ三角の線の真ん中に位置していた。
闇の海に投げ出された宇垣と朱里は山本長官を始めとする生存者を探したが2人の兵士の死体が浮いているのを見つけただけだった。
「まさか山本長官はもう…」
救命胴衣をつけているため死体は浮いていた。
宇垣と朱里も救命胴衣はつけているので泳いで体力を消耗することはなかった。山本長官が死んでいるとしても浮いていると思い宇垣と朱里は探しつづけたが広い海である。
見つけるなんて不可能だった。
「山本長官ならきっと大丈夫です…」
自分に言い聞かせるように朱里は言った。
宇垣は頷きながら
「そうだな。しかし、お前がいてくれてよかったよ。いきなり見えるようになったのは驚いたがな」
「私もです」
山本長官を心配する二人の気持ちがシンクロし宇垣に艦魂が見えた。
元々艦魂が見える条件は確定されていない。
霊感の強いものだとか波長が合うものが見えるとかいろいろ言われている。
宇垣の場合は波長があったのだろう。
「しかし、夜の闇がこんなに恐ろしいのなんだな…」
宇垣は空を見上げた。
空は数時間前から厚い雲がかかり月や星空を隠してしまい完全な闇があたりをつつんでいる。
朱里と宇垣は離れないように互いに手を繋いでいたが自分の子供ともいえるほど年齢が離れている二人である。
さすがに宇垣はドキドキしたりなどはしなかった。
「助けは来るかな…」
喋っていないと気が狂いそうだった。
ひたひたと迫る死の恐怖。
戦場とは違いゆっくりと迫るその恐怖は一人では堪え難いものだった。
「確か姉さんや刹那、凛達が演習に出ていたはずです。通信が届いていればきっときてくれます」
「誰だ?」
宇垣は首を傾げた。朱里はそういえば宇垣は艦魂が見えなかったなら真名を言ってもわからないかと思い
「刹那は霧島、凛は紀伊の艦魂です」
「り…」
朱里は首を横に振りながら
「駄目です。真名はいけません」
「そうだったな…」
宇垣は頭を波に揺られながら言った。
「助けがくるまで時間がかかりそうだ。俺も艦魂が見えるようになったのだから仲良くしてみようと思う」
「それはいい考えです」
闇で顔は見えないがその声は明るく宇垣には感じられた。
「艦魂というのはどうやったら真名を許されるんだ?」
「そうですねぇ…1番簡単な方法は本人に認めてもらうことですが一気にすべての艦魂の真名を呼ぶ方法もありますよ」
「ほぅ、教えてくれるか?」
「構いませんよ?姉さ…金剛姉さんに決闘で勝って長門さんに認められ三笠さんに認められ最後に撫子さんに認められれば許可がおります。ただし未来の艦魂は例外です」
「ちょっと待て、決闘だって?」
宇垣が物騒な言葉に反応すると朱里はおかしいのかフフフと笑いながら
「ええ、日向 恭介さんはそれでみんなの名前を呼ぶ権利を持ちましたよ」
「その金剛の艦魂はつよいのか?」
「私と打ちあえる実力者です。私の実力は剣では連合艦隊最強です。100人くらいなら切り合っても勝つ自信があります」
「…あの男やはりただものではなかったな…」
「まったくです。私ともそれなりに打ち合いましたし」
「お前が勝ったのか?」
「当然です。だてに連合艦隊最強の剣の使い手を名乗っていません。つる…あ、いえ伊勢には彼は勝ちました。伊勢の実力は10本やれば2本はとられる実力者です」
「俺には無理だ…」
宇垣は決闘による真名を呼ぶことを諦めた。
というより宇垣の剣は達人クラスを相手にできるほどの実力を持っていない。
素人とまでは言わないが腰にある軍刀も飾りに近いのだ。
「フフフ、面白いですね宇垣さん。気に入りました。私の真名でよければお呼びしていいですよ」
宇垣は闇の中で目をまるくした。
「いいのか?真名というのは大切なものなんだろ?」
「ええ、大切です。ですから心をこめて呼んでください」
「う、うむ…」
「朱里です」
「し、朱里」
なぜか気恥ずかしいなと宇垣は思いながら言うとはいと朱里の返事が帰ってきた。
こんな海に浮かぶ絶望的な状況だというのになぜか不安が消えていく気がする。彼女がいてくれてよかったと後に宇垣は言っている。
そんな時
「ヘイ!ジャップ!」
二人の顔が強張った。
〔〕は英語です。
〔そこにいやがるのはジャップだな!殺してやる!〕
声が近づいてくるのを二人は感じた。
あの脱出したパイロットの一人だろうか?
朱里は腰の剣を抜いて宇垣を後ろに回した。
「宇垣さんは下がっててください」
バシャバシャと音が近づいてくる。
二人の緊張は高まる一方であった。
凛「いい加減にしなさい!」
作者「ひぃ」
エリーゼ「いつまで山本の生死不明を続ける気ですか?」
作者「し、しょうがないですよ。こればかりは予定もあるので」
凛「じゃあいつはっきりするか言いなさいよ」
作者「そ、そんなことよりお知らせかあるじゃないですか」
凛「ああ、あれね」
エリーゼ「この作者が土下座して頼むので今回極上艦魂会メンバーと読者に限り私達の真名を呼ぶ許可を与えます。伊東や黒鉄?見てますか?もういちいち紀伊だとか言わなくていいですよ」
作者「さて、帰るか」
凛・エリーゼ「待ちなさい」
ガシっと両肩をつかまれる
作者「だ、駄目ですか?」
凛「駄目」
エリーゼ「ですね」
作者「ぎゃああああ」
ズドオオオオオオン