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第94 嵐の前のひと時


山本五十六がアメリカ軍に襲われていると緊急の連絡が紀伊に入ったのは間もなく夕方になろうとする時間であった。

紀伊は今、演習と護衛を兼ねて武蔵などの艦隊と共に真珠湾より西に50キロの海上にいた。



その少し前、独立機動艦隊司令長官 日向 恭介はその時、部屋で数人の艦魂達と話をしていたところだった。

艦長室にいるのは戦艦武蔵の艦魂、桔梗、戦艦金剛の艦魂柚子、空母信濃の艦魂小雪、護衛艦村雨の艦魂由真、戦艦日向の艦魂京子、戦艦伊勢の艦魂剣、大和の艦魂撫子、霧島の艦魂刹那、そして紀伊の艦魂凛である。


彼女らは今やすっかり集まる場として定着した紀伊の艦長室でお茶を楽しんでいた。


連合艦隊名物の猛訓練を1時間ほど前から紀伊と大和を除いて行われていたのである。


ジェットエンジンはフルで稼動させれば故障の原因となるのである程度のエンジンの停止とメンテナンスが必要であった。

そのメンテナンスも訓練の一つなので動き回る兵はいたが…

艦は大和、紀伊を除きそれぞれジェットエンジン以外の機関で今動いていた。

旧戦艦はボイラーで信濃や村雨といった最新鋭の艦はガスタービンで動いていた。

今日の仕上げは真珠湾までジェットエンジンを使った高速艦隊の移動であるがレーダーの使用を慣れるために暗くなってから向かう予定である。

とはいえどの艦も50ノットは軽くでるのだから真珠湾まで1時間もかからないのだが…



「たるんどる!」


3時のティータイムを非常時以外はかかさない金剛4姉妹の長女柚子はソファーに座るなり言った。

「な、何が?柚子姉さん?」


その隣に座る柚子の妹であり霧島の艦魂刹那がティーに伸ばそうとしていた手を止めて姉を見た。


「ほっときなさいよ刹那、どうせ私達艦魂がこんなお茶なんて飲んでるのが気に入らないんでしょ?」


と刹那の隣に座っている紀伊の艦魂凛かは言うとテーブルの大皿に入れられたクッキーに手を伸ばして口に入れた。


「なかなかいけるわ。桜も腕をあげてきたわね。刹那も食べたら?」


「うん、もらう」


刹那も凛に進められるままクッキーを口に入れた。

アーモンドがたくさん入った手作りクッキーである。


「あ、おいしい」


思わずふにゃっと顔が綻ぶのは女の子に多い甘いものを食べた時の幸せなためである。


「あらあら、では私も一つ」


と和服姿の大和の艦魂撫子がココアクッキーに手を伸ばす。


「貴様ら私を無視するなぁ!」


といきなり柚子が怒鳴ったので撫子と同じくクッキーに手を伸ばしていた信濃の艦魂小雪と村雨の艦魂由真がびくりと手を止めた。


しかし、強物はいるものである。

撫子はにこにこと微笑んだままココアクッキーを口に入れた。

一口で食べるのではなく少しかじる程度だったがその仕草もどこか気品がある。

「あらあら、本当ですね。桜様も腕をお上げになられて」


ちなみに桜とは外伝に出てくるメインヒロインの名である。紀伊のいくつかある食堂の一つで働いていて最近は空間からいろいろなものを出せる艦魂達に材料をもらってデザートを作ることを趣味としている。

艦魂達も甘いものが食べられるのはうれしいので喜んで材料提供を行っている。

自分で空間からだせばいいのではないかと以前桜が聞いたことがあったがその時、凛は出せるけど市販のものや手作りの方がなんかおいしいのよねと言っている。


「せやな、柚子さんも何怒ってるんかしらへんけど食べたらええやん?」


武蔵の艦魂桔梗がアーモンドクッキーを皿から取り差し出すと柚子ははーと息を吐いてクッキーを口に入れた。


「うまいな…」


「せやろ?」


ニヤリと桔梗は笑いながら机に置かれているマグカップをとると口に運んだ。


「どうでもいいんじゃが桔梗、汝の味覚は狂っておるのぅ。のう姉上?」


「こういう組み合わせもあるんじゃないのか?」



そう言ったのはうりふたつの顔を持つ艦魂である。


ピンクのリボンを付けている姫様口調の日向の艦魂京子と青いリボンの伊勢の艦魂剣である。

二人はリボンを解けばどっちがどっちかわからない顔だったが長く付き合いのある艦魂達はなんとなくそうなってもわかる。


「なんやと京子!午後の一杯はコーヒーやって決まってるんやで?」


そうである桔梗の持つマグカップにはブラックリストコーヒーが注がれていた。桔梗はコーヒーが大好きなのだ。


「甘いものに苦いコーヒーなぞミスマッチじゃ!」


「ミスマッチだと?」


柚子が敵国語を話した京子をぎろりと一瞬睨んだがそれだけだった。

凛達未来の艦魂達がきてからというもの日本の艦魂達の間でそういう敵をを知らないものは勝たないという以前柚子と恭介が決闘した時に彼が言って以来積極的に学ぼうとするものが現れ始めた。

柚子も恭介が勝ったら規律を改正すると約束をして負けたのでしぶしぶ容認しているのだが…



「はん、オレンジジュース飲んでるお子様には言われたくあらへんわ」


「な、なんじゃと!オレンジジュースは体にいいんじゃぞ!」


しかし、京子と桔梗はそんな柚子の睨みも気づかず言い争う。


「小雪、あんたはあんな風になるなよ…」


「た、多分無理じゃないかな?」


とようやくクッキーを食べられた小雪と由真は言うのであった。


そんな時、扉が開いて紀伊の艦長兼独立機動艦隊司令長官の日向 恭介が入ってくると彼は振り返った艦魂達を見


「よ!いつものやってるな」


と彼は持っていたノートパソコンを机におくと上座に与る場所に置かれた一人用のソファーに座るとクッキーを取り口に入れた。


「うまいな。やっぱ仕事の後のこれは最高だな」


「それは酒なんじゃないの恭介?」


彼が帰ってきたのでどことなく嬉しそうな凛が言った。

指摘しても本人は決して認めないだろうが…


「いや、甘いものも仕事後に食うとうまいんだよ。おまえらも知ってるだろ?」

「分かります恭介様」


撫子がお茶(日本茶)をテーブルにおいて少し頬を赤らめながら


「幸作様も以前桜様のクッキーを仕事後にお渡ししたら喜んでくださいました」

と、撫子は大和の艦長、有賀 幸作のことを思いながら言った。


桔梗

「はいはい、撫子長官ご馳走様」


桔梗はふーと息を吐いて呆れた様子で言った。


「ところで恭介!このクッキーはどうじゃ?なかなか美味じゃろう?」


京子は立ち上がりクッキーを掴むとさっと恭介の横にいくと背中を預けるようにソファーに座りつつ恭介にもたれかかりクッキーを恭介の口にに入れた。


「なっ!」


そのあまりに早く一瞬の行動に凛は反応できずア然としてそれを見ていた。


恭介はクッキーを飲み込んで


「ナッツとココアだなこれ、なかなかうまくできてるな。桜の作品だろ?」


京子は満面の笑みを浮かべ


「そうかそうかうまいか?ならもっと食べるか?次はバタークッキーはどうじゃ?」


「もらう」


と恭介は小雪が入れてきたコーラーを右手に受け取った。


「サンキュー小雪」

「いえ」


と小雪が微笑んだのを見て由真はじろりと恭介を睨んだが彼は気づかない。


これほど艦魂達に真名を呼ぶことを許されている人間は少ない。

この時代で無条件に真名を呼ぶことを許されているのは山本五十六ぐらいなものである。

恭介は以前柚子と決闘した結果、真名を無条件で呼ぶことを許可された。

最終的に撫子や三笠の艦魂炎樹の許可が必要だったが許された。



気が気でないのは凛である。

彼は未来でもかなりもてていたが(本人超鈍感のため恋人はいなかったが…)こちらでもかなりもてている。

ここにいるだけでも京子、小雪、桔梗、刹那が彼に好意を持っている。

不機嫌そうに紅茶を飲んでいる金髪の艦魂柚子も恭介と決闘以来怪しいものである。


(うー…)


心の中で凛は迷っていた。

言うなら天使と悪魔が言い争っているのだ。


天使は


「素直になりなさい。素直なのか1番よ」


(そ、そうかな?)


かと思えば悪魔が


「は!てめえは恋なんてしてねえよ!素直もくそもねえ」


(そ、そうよね。私は別に恭介なんて…)


天使と悪魔の囁き。なぜか天使は撫子、悪魔は榛名の艦魂翡翠が浮かんだがこの際どうでもいい。

そうだ自分には口実があるではないか。凛はクッキーを掴むと京子とは逆の方に座った。

彼女も恭介に背を預ける形になる。


「凛?」


恭介が凛を見る。

凛はクッキーを恭介の口にいきなり押し込んだ。


「ぐっ」


彼はいきなりに驚いたようだがクッキーをばりばりと噛んで飲み込んでから


「いきなり何するんだよ凛」


「わ、私が食べさせてあげるわ。き、京子に食べさせてもらわないと駄目なんて情けないわね恭介はか、勘違いしないでよ?私は桜に頼まれたから嫌々してあげてるのよ?」


この場合の桜は2042年の原子力戦艦霧島の艦魂桜を指す。


「俺は赤ん坊かよ?」


恭介は苦笑いしながら凛の頭を撫でた。凛は顔を真っ赤にしながら


「さ、触らないでよ」


といいながらも抵抗しない。


しかし、そんな状況を見せられて黙るほど京子はおしとやかではない。


「凛ばかりずるいぞ!我も撫でろ恭介」

タックルするように京子は恭介の胸に飛び込み無理矢理彼の左手を頭に乗せて撫でさせた。


「えへへ」


と幸せそうにする京子、凛は何か言おうとしたが撫でられるのをやめられてないのでなにも言わなかった。


「おい、おまえら俺もなんか食いたいんだけど?」


目の前にあるクッキーを食べたくても二人の艦魂の頭を撫でているので食べられない恭介であった。

桔梗や刹那達はもう手があいてないので断念。


剣は撫子と柚子のある意味大人コンビでお茶や紅茶を飲んでいる。


「とめなくていいのか?」


柚子があきれた顔で剣に言うと剣は紅茶を口に運びながら


「いつものことですよ」


とすました顔で紅茶を飲んだ。


「フフフ」


撫子はニコニコしながらそれを見ている。



ピーピー


「ん?」


そんな時、恭介の耳の通信機から音が発せられた。


「悪い2人共」


少し不満そうにする二人を引きはがしてから恭介は通信のボタンを押した。


「はいはい、ああ、古賀か?なんだよ?今…」


その瞬間、恭介の顔つきが代わった。

同時に場に流れていた和やかな空気がピリピリと振動した気がした。


「分かったすぐいく」


恭介は通信を切ると艦魂達を見回した。

「なんだ?何かあったのか恭介?」


柚子が聞くと恭介は口を開いた。


「山本長官が…」


刹那は持っていたコップを落としガチャンと砕け散った。





桔梗「結局山本長官はどうなんや?」


作者「♪」


撫子「作者様…」


零「…その態度は…」


46センチ砲51センチ砲が作者に向く


作者「ひいいい!ごめんなさい」


桔梗「なら話してくれるんやな?」


作者「やだ」


ズドオオオオオオン

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