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第93話 叫び

山本五十六達を襲う危機、山本はこれを切り抜けることができるのか?

激しい衝撃を感じ山本五十六はいよいよこれまでかと思った。


「1番エンジンが停止しました!」


兵が山本に報告した。


「宇垣参謀長…巻き込んですまんな」


と隣に座る宇垣に言うと宇垣は首を横に振った。


「お供いたします長官…」


荒れ狂うシューティングスター50機に対しこちらは未来戦闘機とはいえ神雷8機である。

ミサイルにも限りがあったしレシプロ機ならともかく相手はジェット戦闘機だった。


時刻は黄昏れ時で空はオレンジ色に染まっていた。


「諦めないでください山本長官!」


「ん?」


山本が振り返るといつもは柔らかい笑みを浮かべることの多い朱里が泣きそうな顔をして言った。


「日本にはあなたが必要なんです。舞さんの想いを裏切る気ですかあなたは!」


「舞…か…」


山本は数年前に永遠の別れを告げた装甲巡洋艦日進の艦魂『舞』のことを頭に浮かべた。

彼女と山本は約束したのだ。

戦争がおこっても必ず日本を守ると


「長官?比叡が何か?」


激しく揺れる中なので宇垣はパソコンが使えず山本の方を見て言った。


山本は目を閉じて日進を思っていたが目を開けて言った。


「宇垣、最後まで諦めるな。俺は諦めんぞ」


宇垣は一瞬黙り込んだが


「私は長官にお供するだけです。地獄であろうとアメリカを倒す未来への道であろうと私は長官についていきます」


「それでいい」


山本はうなずくと同時に副機長が山本達の所にやって来た。


「1番エンジンは停止…」


その後彼は何か言おうとしたのだろう。その瞬間シューティングスターからロケット弾が放たれ富嶽は回避のため右に激しく傾いた。


「うわあああ!」


山本達はシートベルトをしているので無事だったが立っていた副機長は吹っ飛ばされて壁にたたき付けられた。


「あ!」


宇垣は思わずシートベルトを外して駆け寄ろうとしたが山本に止められた。


「駄目だ。今立てば君も死ぬぞ!」


「…はい」


宇垣は立ち上がるのをやめた。

副機長の頭から血が流れる。


その間も富嶽は右に左に回避を続けて各機銃はバリバリとシューティングスターに向けて攻撃していた。


「いい加減くたばりやがれ!山本」


シューティングスターの小隊『ストライク』隊は先程からエンジンが一つ停止した富嶽にロケット弾を放ち続けていたが機長はどうやらエースクラスのようでぎりぎりで交わしつづけていた。


神雷を撃破できた小隊はこちらに合流するのではなく他の神雷に襲い掛かる。あの戦闘機のコードネームジョージは恐るべき性能の戦闘機である。

12機のシューティングスター以外…つまりストライク隊以外は護衛戦闘機を襲っているのだ。

すでに5機を撃墜していたがこちらも18機落とされていた。恐るべき戦闘機である。

ストライク隊は1機ハリー・ボーマンというパイロットが落とされただけである。

それにしても8基のエンジンというのは厄介である。

右の翼の炎も今は消えてしまっていた。

ただ富嶽はもうエンジンが1基停止しているので高高度にはあがれないのである。

時刻はまもなく暗くなる黄昏れ…長く粘る富嶽だが航続距離はシューティングスターの比ではない。早く決めないとシューティングスターは燃料不足で墜落である。


ストライク隊、隊長ゲビンはそろそろ決めてやると仲間に通信を送った。


「ストライクリーダーよりストライク1、2へ!右から仕掛けろ!ストライク3、4は左だ!残りは上空からだアタック!」


見事な連携、シューティングスターはまだ、実戦配備されて間がないが彼らは生き残ればアメリカ空軍のエース部隊トップガンになれる逸材だった。










「直上、左方向、右方向より敵機接近してきます!」


「くそお!」


富嶽機長の渡辺大佐は敵がロケット弾を放つ前に機体を真横に向けて急降下した。

レシプロ機の爆撃機としては無茶な操縦だったが無茶なしにここを乗り切るのは不可能である。



ここまで敵の攻撃をかわせたのは彼の働きが大きかっただろう。

しかし、彼の幸運と腕はここまでであった。

ズガアアアン

ズガアアアン

と二発のロケット弾が富嶽の右と左の翼に命中し先程よりさらに巨大な炎があがった。

さらに前方からシューティングスターが突っ込んできて機銃を発射した。


「伏せろ!」


渡辺が怒鳴った瞬間コクピットの防弾ガラスが砕け散りガラスが渡辺の上に降り注いだ。


「くっ…」


渡辺はガラスで切れたのか頭から血を流しながら操縦しようとした。

富嶽は炎を上げている。

黄昏れ空に渡辺は太陽が見え、それは今にも沈みそうでまるで自分達の未来を見ているような気分になった。


「まずい…意識が…」


もうろうとする意識の中渡辺は富嶽の機内マイクに手を書けた。

実はこの時渡辺はすでに重態であったが彼の山本長官を守らなければという意識がマイクをつかみ操縦を可能とした。

しかし、この時富嶽はすでに飛ぶ力を失っており翼から炎を撒き散らしながら闇となった海面に急激に落下していた。


「山本…長官…富嶽は…もうだめで…」


それだけ言うと彼は意識を失ったが操縦だけは無意識の中で行っていた。

そのおかけで海面に垂直落下だけはさけられる結果となった。




「長官!」


山本、宇垣は落下する感覚を覚えていた。

翼からは炎がまきおこりこの山本達がいた場所にも煙りが入ってきていた。


「俺は…まだ死ぬ訳には…舞」


「長官!」


朱里が叫んだ瞬間富嶽の天井がバリバリと剥がれおちた。

その瞬間富嶽は海面にたたき付けられ爆発した。






海上で炎を巻き上げる富嶽を見てアメリカのシューティングスターのパイロット達はガッツポーズを決めた。


「イエス!やったぜ!」


「ぼやぼやするな!グアムとの合流ポイントに急ぐぞ!ぐずぐずしてたらモンスター戦艦が来るぞ!」


シューティングスターの残存戦力は闇となった空を東へ飛ぶ。


そのさい隊長のケビン中佐は最後に一回旋回してから燃える富嶽を見て


「よい眠りをミスター山本」


神雷、富嶽を撃破し、山本を殺すことに成功したシューティングスター隊はこうして喜びながら去っていった。



















ザザザアンと波の音が聞こえる。

男は目を開けると塩辛いものが口に入ったのを感じ覚醒した。


「ここは?」


男はあたりを見回したが暗闇の海が広がるだけだった。

周りには富嶽の残骸だろうか?

いろいろな漂流物が浮いている。


「宇垣さん…」


声を聞き振り返ると自分と同じように浮いているものがいた。

いや、宇垣は彼女を見たことがないが誰か分かった。


「比叡…山本長官は?」


朱里は涙を浮かべた。


「どこにも…いないんです…山本長官が…どこにも…」


「そんな…」


宇垣は泳いで探そうとしたが辺りは闇でほとんど見えない。


「山本長官!」


「山本長官!どこにいるんですか!姿を…見せてください…」


声はただ闇に吸い込まれその声に返答があることはなく二人は偉大な長官の名をただ叫び続けた。








エリーゼ「…」


凛「…」


京子「う…そじゃ…」


作者「…」

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