第92話 憎しみに満ちる空
「しまった富嶽が!」
蒼龍所属のジェット戦闘機『神雷』のパイロット早川中尉は群がるシューティングスターと戦いながら舌打ちした。
なんということだろう守るべき爆撃機『富嶽』の右の翼から炎が出ている。
墜落はまだ大丈夫のようだがこれ以上の披弾は許されなかった。
しかし、相手は数が多いこちらは8機なのに向こうは50機いるのだ。
シューティングスターは1機の神雷に対し8機1小隊を組んで襲い掛かってくる。見事な連携である。さらに残る12機は富嶽へ群がる。
「ちくしょう!」
早川は前方から突っ込んでくるシューティングに対しバルカン砲を放とうとトリガーを握った。
「!?しま…」
直後上空に殺気を感じた早川は空を見上げたが気づくのが遅すぎた。
シューティングスターが機銃を発射した。
機銃はコクピット周辺を貫き神雷は警告音を掻き鳴らした。
「くっ!」
早川が脱出レバーを引くとドンと神雷から操縦席ごとほうり出され愛機は炎を巻き上げながら墜落し海面に激突すると爆発した。
早川は舌打ちしてパラシュートに揺られていたが直後に横からこちらに突っ込んでくるシューティングスターがいた。
「おいおい嘘だろ?」
そのシューティングスターは明確な殺意を自分に向けていた。
早川の顔が蒼白になった。
特別攻撃隊フレック少尉はパラシュートに揺られるジャップパイロットを捕らえた。
憎しみに支配されているフレックには人道など頭から飛んでしまっていた。
ただ、憎い日本人が目の前にいる。
残虐な死を与えてやる。
黄色いサルが!
「マイケルの仇だ!」
たった一人の人間にシューティングスターからロケット弾が放たれた。
相手のパラシュートの日本人が蒼白になっているのがフレックには見えた気がした。
ロケット弾は狙い違わず日本人に命中し炸裂した。
フレックは仇を撃てたことに喜びをかみしめつつ次の獲物富嶽に機を向けた。
「早川ぁ!ちくしょう脱出するパイロットを狙うなんてそれでも貴様ら人間か!」
親友を殺された不動少尉は追撃してくるシューティングを最高速度で振り切ると親友を殺した。
シューティングスターに追い迫る。
そして、ミサイルをロックオンすると発射ボタンを押した。
「鬼畜米がぁ!」
空対空ミサイルが神雷から放たれものすごい速度でフレックのシューティングスターに迫る。
「!?」
フレックはそれに気づき計器に張ってあった三枚の写真を取ると外に飛び出しパラシュートを開く。が、彼の人生はそこで終わった。
「逃がすかよ!」
不動の神雷はフレックに向けて20ミリバルカン砲を発射し、それはフレックの体をずたずたに引き裂いた。
神雷が通り過ぎパラシュートに揺られるフレックは意識が途切れそうになりながらも写真を震える手で目の高さまで持ってくると
「ま…イケル…シェリー…ま…ま…仇は…う…った…よ」
親友、恋人、そして母の名を呼びながらフレックは24年の生涯を閉じた。
そして神雷が減る中シューティングスターは富嶽を目指すのだった。
作者「さて今回は黒鉄元帥の艦魂年代史本編終了を記念して我が艦魂達からメッセージを一言づつ、感想で述べた3人以外となります。どうぞ」
撫子「黒鉄大和様、完結おめでとうございます。お疲れ様でした。ゆっくりとお休みください」
鈴「がんばったな。ゆっくりと休め」
弥生「やるじゃ〜ん、次も待ってるよぉ」
柚子「よくがんばった」
楓「投げキッスをあげるわ、チュ」
陽子「お疲れ様です」
零「…お疲れ様でした」
作者「全員に言わせたいんですが文字がありますからこの変で、では我が艦魂の諸君!偉大な黒鉄元帥に!」
鈴「敬礼!」
総員並び敬礼
全艦魂「お疲れ様でした!」