第77話 思い届いて
月が真珠湾を照らす夜、刹那は連合艦隊司令部のある建物の前に来ていた。
昨日、約束した山本との結果を聞くためだ。
建物に入り途中で小沢提督とすれ違ったが彼は艦魂が見えないので刹那は敬礼もすることなく山本長官の部屋の前に立った。
「や、やっぱり緊張するな…」
刹那はドキドキしながらドアをノックした。
「誰だ?」
山本の声。
「私です。霧島の艦魂の刹那です」
「おお!入りなさい」
「失礼します」
部屋の中に入ると山本の他にもう一人いた。
「朱里お姉ちゃん!」
刹那が驚いて言うと比叡の艦魂朱里が閉じていた目を開けて刹那を見た。
「な、なんで朱里お姉ちゃんが?」
困惑した顔で山本を見ると山本はコップに麦茶を入れて刹那が座るテーブルに置いた。
「まあ、座れ」
山本が穏やかな口調で言うと刹那は正面に座る朱里を見ながら2人用のソファーに座った。
山本も朱里の隣に座る。
「さて、話そうか凛のことを…日向君に聞いた真実を」
刹那は真実と聞いて緊張した。
ついに、凛のあの態度の謎が解けるのだ。
姉である朱里はただ穏やかな笑みを浮かべて刹那を見るのだった。
そして、時は夜明けに重なる。
凛は刹那を探し回った。
戦艦霧島に行きさらに比叡、棒名と回った。
金剛は今外洋にあるもののテストのため真珠湾にはいなかった。
後は長門などを回っていないと凛は転移しようとした時だった。
「凛!」
後ろから自分を呼ぶ声。
紀伊の甲板で凛は振り返ると刹那が立っていた。
途端に凛は罪悪感に苛まれた。
自分はなんてことを言ってしまったのだろう。
謝らなければならない。
「せ…」
「ごめんね凛!」
「…っ!?」
凛は驚愕した。
なんと刹那が頭を下げたではないか。
謝るのは自分だと言うのに…
「全部聞いたよ。凛の親友桜さんのこと」
「あ…」
途端に凛は涙が目に浮かび上がった。
慌てて涙を拭くが刹那は頭をあげていなかった。
「か、顔をあげなさいよ!」
ズキンと心が痛んだ。
こんな偉そうに言う気なんかないのに…
刹那は顔を上げなかった。
「嫌!私は凛の気持ちも考えないで無神経に貴方に近づいた。許してくれないなら立ち去ってくれていい。でも、もし許してくれるならもっと謝らせて!」
刹那は全てを聞いた。
凛の親友桜のことを…自分と同じ顔を持ち、同じ艦名を持つ艦魂のことを…
さぞ無念だったことだろう。
だからこそ、刹那は自分が許せなかった。
無神経に彼女に近づいた自分を…
山本や朱里はお前が悪いわけじゃないよと言ってくれたが刹那は納得しなかったのだ。
凛が立ち去った気配はない。
辺りは静寂に包まれている。
刹那は顔を上げてみた。
「凛…」
思わず刹那は声をかけた。
そこにはいつもの彼女の姿はなく。
ただ、子供のように泣く凛がいた。
「ごめんなさいごめんなさい!私は忘れたかったの!桜が死んで強くなろうと私は思って強くなったつもりだった!悲しみを乗り越えたと思えた…でも、刹那…あなたを見たら私は…」
凛は膝をついて座り込んだ。
目からはぼろぼろと涙が滝のように流れる。
皆に会えて向き合えると思った。
でも、やはり刹那を見ると桜と重ねてしまう。
だが、これを最後に機動戦艦霧島の艦魂桜ではなく戦艦霧島の艦魂刹那として向き直る。
おろおろする刹那の前で凛は無理矢理涙を腕でごしごし擦ると立ち上がり今度は凛が刹那に頭を下げた。
「刹那!ごめん!」
その言葉は直球。
だが、それゆえに伝わる想いは強い。
「り、凛は悪くない!悪いのは私だよ」
刹那が慌てて言った。
だが、凛は引き下がらない。
「私が悪い!」
「だから、私の方が…」
その時二人は同時に頭をあげて至近距離で顔を突き合わせた。
なんとなくその時間が続きやがて…
二人はふっと笑いあった。
「両方悪いことにしようか凛?」
刹那が言うと涙で目を真っ赤にしていたが凛も微笑みながら
「ええ、それでいいわ刹那」
二人の間の空気が変わった瞬間だった。
この瞬間、言葉なくとも彼女達は確かな絆に結ばれたのだ。友…いや、親友という絆を…
「やれやれ」
甲板で身を隠していた日向 恭介は離れた場所で笑い合う彼女達を見てもたれ掛かっていた壁から背を離すと紀伊の中に消えた。
そして、同じく違う場所から見ていた朱里もふっと笑うと転移して消えた。
いつかは分からないその日、青く澄んだ空で刹那は聞いた。
「ねえ凛、桜さんて綺麗な人だった?」
凛は思い出を噛み締めるようにペンダントを開き刹那に見せて言った。
「太陽のような子だったよ」
凛は微笑んで言った。
作者「はあはあ…」
弥生「どうしたの作者ぁ?何かあったの?」
作者「うう…黒鉄大和先生の大和様に感想で吹き飛ばされまくりもうげん…か…」
バタアアアアン
弥生「あ、死んだ?」
鈴「放っておけ弥生、大和魂をほざいた以上立ち上がるだろう」
弥生「でも動かないよ?」
明「ここ最近こいつ忙しかったからね…移動時間使って書いてたけど昨日は更新できなかったのよ」
鈴「携帯を使い他の先生の小説を読んだり感想を書くとはまあ、褒めてやれる行為だな」
撫子「ご意見感想お待ちしております」