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第76話 月夜の奇跡


気づかなければよかったと思うこともある。


「やっぱり凛も恭介さんが好きなんだね?」


親友の言葉に私はそうだと言えなかった。

ただ、痛い胸が彼を…恭介が好きだと凛に変えられない現実をつきつける。


「そっか…うん、なら恭介さんは凛にあげるよ」


精一杯の笑顔で言った彼女を私は絶対に忘れない。

自分は恭介と共に未来は歩めない。

そんな未来を背負った彼女は太平洋の海に散った。



ハワイの夜は静かだった。

機動戦艦『紀伊』の46センチ速射砲の前で凛は首にかけているロケットを外して中を開ける。

オルゴールが曲を奏で始める『星の子守歌』、悲しいその曲を聞きながらロケットの写真は未来の艦魂達と取った最後の集合写真。

優しく頼りになり司令長官だった金剛の艦魂『命』、穏やかで優しく妹思いだった比叡の艦魂『真琴』、お祭り好きで明るかった大鳳の艦魂『蘭』、そしてかけがえのない親友霧島の艦魂『桜』

仲間はたくさんいた。でも同じ魂を持つ彼女達はどこにもいない。


ツゥと凛の目から涙がこぼれ落ち甲板に落ちる。


この時代に来たときに霧島の艦魂『刹那』にあった時、凛はなんの冗談だと思った。

まったく同じ顔を刹那は桜と同じ名を持つ霧島の艦魂であると言う。

始めは戸惑いつつも仲良くなろうと凛は思った。

だが、無理だった。どうしても刹那を見ると桜を思い出してしまうのだ。

うまく周りと溶け込めなかった自分を助けてくれた彼女を…

「忘れたい…忘れたらきっとこんなに悲しくないのに…」


流れる涙は止まることがない。

夢を見た日でもここまで泣かない。

悲しみを増長させたのは刹那の顔を見たからだ。


「忘れたいのに…」

月夜を見上げて凛は言った。


(本当に忘れたいの?)


「え?」


聞き慣れたその声は…


「桜!」


聞き間違えるはずがないこの声は桜だ。

満月が照らす甲板に彼女は立っていた。黒いワンピースを着て髪には桜の髪飾りをつけている。

忘れるはずがない。あの髪飾りは恭介が桜にあげたものだ。

「桜!生きてたの!」


喜びで声が震える。太平洋で散った機動戦艦『霧島』の艦魂桜だ。

クロノロード計画にはまだ時をかける装置『クロノロード』があったのかもしれないと凛は思った。


「桜!」


凛はもう一度その名を呼ぶと泣きながら桜に抱き着いた。

実体がある。

間違いなく桜だ。


「あらら、しばらく会わないうちに泣き虫になったね凛」


よしよしと桜は凛を撫でてあげた。

凛は泣きながら桜にすがりついている。会えないと思っていた人と会えることがこんなにうれしいことだと凛は思わなかった。

ただ、最高の親友との再開に凛の胸は一杯だった。


桜は凛を撫でながら

「ねえ、凛…私がいなくて淋しかった?」


「当たり前じゃない!桜がいないと私はやっぱり…」


「恭介さんがいるじゃない」


「恭介は…でもやっぱり桜がいないと私は…」


始めて桜にあったとき太陽のような子だと思った。

そして、羨ましかったのだ。

素直な彼女が気持ちをはっきり伝えられることを…


「凛は甘えん坊だな。親友というより私はお姉さんかな?さ、言いなよ凛、何か悩んでたんじゃないの?」


桜の言葉に凛ははっとした。

傷つけてしまった刹那のことを桜に話すと桜はうんうんと頷き


「それは凛が悪い」

とはっきり言った。

「う、分かってるけど…」


自分が悪いことは承知している。


「なら、謝りなよ」

「さ、桜も一緒に…」


桜は首を横に振った。


「友達との仲直りは本人どうしじゃないと出来ないんだよ?人の力を借りちゃ駄目」


めっとまるで子供を叱るように桜は言った。


「う、うん分かったやって見るわよ」


しぶしぶ凛が言うと桜はにこりと微笑んだ。


「うん、素直でよろしい。ところで恭介さんとの仲は進展したのかな?」


「な、えっと私は別に恭介なんか…」


「あらぁ?まだ、素直じゃないのね凛ちゃん」



「え?」


凛が振り返ると優しい表情の命が立っていた。


「命長官?」


「恋は戦争っすよ凛」


その声は蘭だ。


「ら、蘭?」


凛は困惑した。


「せや、恋はやるかやられるかや」


そして、桜の横に現れたのは真琴だ。


「みん…な…」


声がさらにかすれる。

散った仲間達がここにいる。

そして次々未来の艦魂達が凛の前に現れる。


桜は凛の肩に手を置いた。


「凛、あなた達は私達の思いを受け継いだんだよ?日本を救うという思いを」


「私達は敵わなかった思いね」


命が淋しそうに言った。


「だから凛に托すっす」


「ほんまは私らがなんとかしたいんやけどな、頼むで凛」


そして最後に桜が微笑んだ。


「いつかきっと会える日が来るよ。日本を救った世界でまた、会おう凛」


スゥと桜の姿が薄れていく。


「待って!」


凛は慌てて手を伸ばすと桜は右手を凛と重ねた。

暖かい温もりがそこにあった。

見ると周りの命達の姿も薄くなりつつあった。


「奇跡の時間は終わりだよ…凛、必ず日本を救って…それと刹那ちゃんと仲良くしなさいよ?これ命令、後、恭介さんを取られたら許さないんだからね」


「うん、うん」


凛は無理矢理笑って言った。


「それでこそ私の親友だね」


聖母のように笑い桜達はいつの間にか昇ってきた太陽の光と共に消えていった。










それは月夜が見せた一時の奇跡













「ん…」


太陽の光を目覚ましに凛は目を開けた。辺りを見回すがそこには誰もいない。

しかし…


「ありがとう…みんな」


微かに桜の手の感触が残る気がする右手で凛は未来の艦魂達の写ったロケットを閉じると決意を胸に会うべき相手がいる場所に転移した。



命「凛は行ったか」


桜「まったく世話のかかる親友よ」


真琴「まあまあ、1942年の世界に私らも一時てはいえ出れてよかったわ」


作者「ええ、未来編はこのシーンを書きたいために書いたのと未来の様子を知りたいからという要望に応えたものです。」


桜「次からはどうなるの?」


作者「えっとですね。舞台は1942年に戻ります。あ、刹那の話が先ですけどね」

真琴「それでどうなるん?」


作者「フフフ、予告します。山本長官に危機が訪れます」


桜「き、危機?まさか死ねの山本長官?」


作者「フフフ、それは見てのお楽しみです。ああ、改大和、信濃、大鳳に早く会いたいです。ではご意見・感想お待ちしております」

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