第69話 戦う理由
2032年に起こった第二次日中戦争は日本の完敗だった。
常識的に考えて勝つはずがないのだ。
先手必勝!
それができない日本は敗北した。
憲法9条は守られるべきだと言うものは長く太平洋戦争の戦後にいた。
平和憲法は素晴らしいが常識というものがある。
殴られて殴り返す力を持つのは結構だがふらふらにされてノーダメージの相手にどう勝てというのだ?
まさに日本は負けるべくして負けたと言える。
そして連合艦隊復活の訳だがその最新の戦艦の艦魂と来たら…
「せ、世界最強?ずいぶん面白いこと言うねあなた」
桜は興味深そうに凛と名乗った機動戦艦紀伊の艦魂を見て言った。
「当然」
凛はいばるように胸をはると(胸はないが…)
「私は先に生まれた機動戦艦のデーターを元に作られた戦艦よ。その私が最強じゃないわけないじゃない」
「それは違うな紀伊」
「恭介さん?」
突然口を挟んだ恭介を見て桜は驚いた声で言った。
凛は睨むように日向を見た。
「何よあんた?私が見えるの?」
日向は口元を緩めながら
「ああ、見えるぜ。」
「ふーん、人間なのに珍しいわね」
「て、あなた生まれたばかりじゃ…」
桜が苦笑しつつ言うと凛は自慢するように
「この世界の状況はすでにいろいろネットを通じたりして知ってるわ。艦魂のことも当然学んだは」
「…なあ、桜」
「なんですか恭介さん?」
「ネットって結構デマ多いよな…」
「えっと…そうですね…」
「つまりこいつ世の中を知った気分になってる井の中の蛙か?」
「だ、駄目ですよ!本当のこと言ったら」
むろん2人共小声であったが…
「聞こえてるのよ!人間!とそこの女!」
怒りに顔を真っ赤にして凛が言った。
「そんな!女だなんてひどい。私には桜という真名が…」
「どうでもいい!」
「うう…」
ぴしゃりと年下の少女というか艦魂に言われて桜は座り込んでのの字を書きはじめた。
日向はあららというふうに桜を見ていた。
「人間」
「俺か?」
日向が自分を指すと凛は不機嫌そうに
「あんたがいなかったらどこに人間がここにいるの?さっき私は世界最強じゃないなんて言ってくれたわね!」
「事実だからな」
日向は言った。
「なんでよ!」
「簡単だよ。どんな強力な戦艦だろうと切り崩す隙はあるさ」
「ふーん…」
凛はのの字を書いてる少女を指差すと
「じゃあ、この桜とかいう艦魂の船で私を沈める方法を言いなさいよ。手加減なしで海のど真ん中と言う戦場として」
桜が思わず日向を見上げた。
つい最近まで自分の船で艦長をしていた彼がなんと言うのか。
そして答えは予想外の答えだった。
「体当たりする」
「はあ!」
思わず凛と桜の声が重なった。
呆れと怒りである。桜は当然怒った。
「体当たりって恭介さん!私を殺す気ですか!」
「馬鹿じゃないの?戦艦で戦艦に体当たりするなんて聞いたことないわよ」
非難の嵐だったが日向は笑いながら
「まあ、それは最終手段で他にも方法はあるがそれが一番確実なやつはこれだ」
「どういうことですか?」
桜が聞いた。
「一応霧島と紀伊の性能差を考えたけど性能は紀伊が上だし紀伊にはバリアがあるからな。通常攻撃で破壊は無理だ。でも六万トン級の戦艦がバリアに当たればどうなる紀伊?」
凛は苦々しい顔をしながら
「バリアは砕けるわよ…」
「で、体当たりして白兵戦に持ち込めばどうなる桜?」
「えっと…白兵戦をする兵にもよりますから勝率は五分五分でしょうね。
体当たりする場所が遠すぎないのが絶対条件ですが…」
「めちゃくちゃね」
凛が呆れる。
「まったくね…こんなのが艦長なんだよ凛」
「大変ね桜だっけ?」
「うん、でも恭介さんが艦長になるのは凛の紀伊だよ」
「へ?」
凛は恭介を見た。
「ま、そういうことだ。よろしくな、真名で読んでいいか?」
「い…」
「い?」
日向が言う。
「嫌!絶対にこんなやつが艦長なんてふざけないで!」
「おい!こんなやつってなんだよ!一応日中戦争にも参加したし小沢長官にだって認められてんだぞ!」
「うるさい屑艦長!」
「ちょっと凛!屑艦長って何よ!恭介さんは素敵な艦長よ!」
はっと言う顔で凛は桜を見る。
先程の仲良くなりかけたかけらはなかった。
「なに?桜ってこいつのこと好きなの?」
「なっ!」
桜はぼっと顔を赤くした。
「え?いや…その…」
その桜の態度を見て凛は敵将討ち取ったりという顔で桜を見た。
「ふーん、そうなんだ。へー、艦魂が人間をねぇ」
桜はあたふたしながら恭介を見て
「そ、その恭介さん、これはその?」
普通ここまで言えばさるでも気づく。
だが、日向 恭介という男の恋愛に対する見方はサル以下だった。
「なに慌ててるんだ?俺が桜はなんだって?」
凛ははあ?という顔で恭介を見ると
「分からないの?桜があんたのこと好きってこと」
「わああああああ!」
桜は悲鳴をあげて凛を黙らせようと手をばたばたと魚のひれみたいに降ったが手遅れだ。
おそるおそる恭介を見る桜
「桜…お前…」
「あ…う」
終わったと桜は思った。
こうなれば気持ちを確かめるのみ
「そんなに俺が好きだったのか?いやあ艦長を務めた艦の艦魂には好かれたいものだからな」
「は?」
桜は恭介を見たがすぐに理解した。
この男、自分の気持ちは艦魂と艦長の信頼としての好きと思っているらしい。
なんとなく残念な気持ちはあったが桜はうなずいた。
「ええそうですよ…艦長としてお慕いしてますよ…」
「やっぱりそうか?」
うれしそうに恭介は桜の頭をぐしゃぐしゃ撫でた。
「わ、やめてくださいよ恭介さん!髪がめちくちゃになりますよ!」
そういいながらも桜はうれしそうに笑った。
凛はそんな二人を見ながら
「あのねえ…人の船でそこの艦魂を無視しないでもらえる?」
「あ、ごめん」
パッと恭介から桜は離れると凛に向き直る。
「改めて自己紹介するね。私は原子力戦艦『霧島』の艦魂で真名は桜っていうの金剛級の4番艦だよ」
「俺も名乗っとくか…日向 恭介だ。階級は大佐だけどあんまり意味はないな。クロノロード計画までの臨時階級みたいなもんだしな」
その名を聞き凛は少し反応した。
「クロノロード計画…」
クロノロード計画は国家機密である。
紀伊の役割は1942年の太平洋戦争直前か真珠湾奇襲の真っ只中に飛び込み打ちもらすはずの空母を破壊して連合艦隊が叩き損ねた燃料や造船設備、戦艦を完全に破壊した上で山本五十六に接触してという流れで歴史を変える。
今でこそ世界は日本を口で非難しているだけだが必ず彼らは日本を潰そうとする。
それは再建した軍が原因だが日本はそれをしなければならなかった。
中国に敗北したこともそうだがあのままでは日本がたどる道は亡国である。
軍備を再建しなければこれから日本は周辺諸国になめられるし韓国や北朝鮮が何かを言ってくるかもしれない。
終わるのだ。
憲法9条にこだわれば日本は滅びてしまう。
だが、今のこの道も滅びに繋がるなら日本を救う方法は一つだけだ。
原因を絶つのである。
アメリカに太平洋戦争に負けなければ中国は友好国となっただろう。
とはいえいろいろ問題もあった。
それを修正するのもこの計画の範疇である。
凛は自分の船を見上げながら
「とりあえず挨拶しとく…さっきも名乗ったけど私は凛、紀伊の艦魂」
クロノロード計画…それはいずれこの世界との決別を意味していた。
報われない恋
桜は寂しそうに恭介を見てから凛に向き直った。
「じゃあ凛、行こうか?」
「え?行くってどこに?」
凛が首を傾げると桜は凛の腕を掴んだ。
「洸姉さん達に紹介するんだよ。あ!洸姉さんてのは金剛の艦魂なんだよ。じゃあ行こう」
「ちょ!」
光が二人に集まると弾けて消えた。
艦魂の能力転移だ。相変わらず便利な能力だことだと日向は思いながら気がついた。
「あれ?俺、おいてかれた?」
その後、桜は慌てて戻ってきたのはまた、別の話…
2040年4月…時空転移の丁度2年と2ヶ月前の出来事だった。
凛「はあはあ…やっと帰ってこれた…なんなのよあの大和は!危うく…」
作者「ああ!凛様お帰りなさい。あれ?なんだか服が乱れて…」
凛「死ねえええぇ!」
ズドオオオオオオオオン
作者「ぎゃああああ!」
凛「ふん」
明「ど、どうしたのよ凛?」
凛「別になんでもないわよ。伊東先生のとこの大和にちょっと…」
撫子「あらあら?」
凛「ああ、撫子」
明「相変わらず突然現れるわね…」
撫子「お久しぶりです凛様、あのそれは?」
凛「え?これ?」
明「恋愛成就?のお守り?ははあん凛まさか恭介と…」
凛「ちちちち、違うわよ!これは友達がどうしてもっていうからもらってあげたのよ」
撫子「友達ですか?」
凛「うん、大切な友達…」
↑
お守りを大切にポケットにいれる。
明「へぇ…友達って?誰」
凛「黒鉄って奴のとこの霧島の艦魂よ」
明「霧島…なるほどね…」
作者「痛てて凛様ひどいよ…」
凛「今日わね…」
作者「へ?」
凛「あんたの顔見たくない気分なの!」
作者「いやああああ」
ズドオオオオオオオオン
凛「ふん」
撫子「あらあら…作者様から伝言をお伝えします。作者様はアメリカとの決戦で読者様が求めておられるのは艦隊決戦か機動部隊対決なのか悩んでいます。参考までにどちらがいいかお聞かせ願えないでしょうか?必ず意見が反映されるとは限らないそうですが…」