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第63話 ハワイの艦魂達その3−ツンデレとお子様

年は明け1月上旬のことである。

ハワイのオアフ島は常夏の楽園と言われるに相応しい暑さだった。


空母の発艦や着艦訓練をしているパイロットに付き合う日本兵達も汗だくになり仕事をこなしていた。


陸上…正確にはドッグで戦艦や空母の改装、整備が行われている。

既存の戦力増強のいわゆる強化を行っているのだ。


以前より作業は進めていたのでそう難しい場所の強化は必要ないので何隻かの艦船の強化はすんでいる。


とはいえ全体的にみればまだまだなのだが…



独立機動艦隊司令長官日向 恭介は紀伊から迎えの船に乗り真珠湾へ降り立った。

ヘリコプターを使えばいいのだがほとんどのヘリは今訓練で出払っていたので日向は日本軍の船を使ったのだ。


「しかし、暑いなハワイは」


恭介は服をパタパタと指で引っ張りながら言った。

先程気温を確認したら30度を越えていた。暑いはずである。


「しょうがないよハワイは夏の楽園なんだから」



そういいながら日向の横を歩いているのはツインテールの少女だった。

林檎のかわいい髪飾りをした…悪くいえば子供っぽいその子供の名は飛龍、真名を弥生と言う。

年は凛と同じか下ぐらいでなぜ、日向といるのかと言えば原子力空母飛龍の艦長霧生 琢磨を始めとした全員が艦魂が見えないのでこうして紀伊と行動を共にする時は日向の元にやって来て手伝いをしてくれる。

凛は怒るが彼女はお構いなしで凛の文句には


「私は恭介が好きだもん!凛にはあげない」


という。

むろん日向は恋にはぼんくらなので弥生には妹のように接していた。


「紀伊の中にいればクーラーが聞いてるのにな…」


ぶつぶつ文句をいいながら恭介は真珠湾基地を歩く。

その後ろをとことこと歩いてついてくる弥生は日向を見上げながら


「ところで恭介長官?なんで車を使わないんですか?」


弥生は首を傾げた。日向クラスの階級なら迎えがあってもよさそうたが…


「ああ、会議は昼からだからな。誰にも連絡してないんだよ」


にやりと日向は笑った。


「ま、またさぼり?古賀が怒るよ?」


ツインテールを揺らしながら弥生が呆れたように言う。


ちなみに会議だが連合艦隊司令部の会議のことでハワイに連合艦隊司令部を移した山本は昼より第一航空艦隊司令長官 小沢 治三郎を始めとする主要人物を集めることになっている。


日向はすでに何を話すか聞いていた。


「いよいよアメリカとの決戦だね」


弥生が言った。

二人が歩いているのは基地の出口のゲートへ向かう道だがまだ結構距離があった。

途中で兵や士官に出会うがみんな敬礼するだけで去っていく。

呼び止められて命令される訳ではないから気はまあ、楽だが…


「素直に休戦してくれれば使わなくてすんだんだけどな…ドイツが動く以上仕方ない…」


この頃日向はまだイギリスへの侵攻作戦は知らなかったがドーバー海峡ではドイツ軍と日英米の連合艦隊が死闘を繰り広げていたが衛星のない通信状況ではどこかに中継できるものがないと連絡は出来ないのである。


「やっぱり使うのあれ?」


弥生が日向を見ながら言った。


「使いたくないけどな…なるべく被害が出ないようにするがな」


「頑張るね私も」


弥生はそういうと拳を握った。

日向はふっと笑いつつ


「期待してるよ」


とポンと弥生の頭を撫でた。


「あ…」


真っ赤になってうつむく弥生


その時だった。


「あ、あんたち何してるのよ!」


二人が振り返ると凛が二人を指差していた。

紀伊から追いかけて来たらしい…

寝てたから起こさずに来たのだが…

それを見た弥生は日向の腕にしがみつくようにくっついて凛に舌を出した。


「恭介長官は私とデート中なんだから邪魔しないで」


「お、おい…誤解を招くようなことを言うと凛がまた、むくれるだろ?」


恭介が凛を見ると予想通り凛は顔を真っ赤にしてこちらにつかつか歩いてくると弥生と睨みあった。二人とも背が同じくらいなので目線は同格。

ただ、違うのは弥生は恭介の腕に抱きついてることぐらいか…


「恭介から離れなさい弥生!」


「やだ、凛こそ諦めたら?恭介長官と私は赤い糸で結ばれてるんだから」


そういいながら弥生はぎゅっと日向の腕にしがみつく力を強める。


「わ、私は別に恭介のことなんかどうでもいいんだけど恭介は女たらしだから教育してやるのよ…だから、離れなさい」


「おい、教育ってなんだよ!俺がいつ女たらしになった?」


自慢ではないが日向は彼女いない歴、29年というすさまじい記録をたたき出している。

いや、この男もてるのだが壊滅的に恋愛には疎いのである。


「恭介は黙ってなさい!私の目はごまかされないんだから!弥生もだけど月花とも前一緒にいたのを見たんだから!それに楓とも仲がいいし…」


楓は翔鶴の艦魂である。

確かによく妹と共に遊びにくるが…


「べ、別に友達と一緒にいるぐらいいいだろ?」


恭介はいささか焦りを覚えた。

悪いことはしてないのに…


「そういえば恭介長官って駆逐艦の艦魂とかに人気あるよ?若くして司令長官になったエリートだって」


弥生が自慢げに言った。

日向はため息をつくと


「エリートね…俺くらいか俺以上の器なんて結構いるんだがな…」


「誰よ?」


凛が聞いた。


「やっぱり山本長官だろ?もう故人だが山口提督も俺以上じゃないか?ああ、南雲長官も素晴らしいな」


「そうね」


凛はいいながら思った。

違うと…

確かに山本長官達は凄い才能の持ち主である。

だが、凛にとっての1番は誰がなんといおうと恭介なのだ。


「でも、私は恭介が…」


「恭介長官が私の中では1番です。山本長官よりも私は恭介長官を信じます」


「…」


いいたいことを弥生に言われてしまったので凛はうぐと黙りこんだ。

せっかく言おうと思ったのにと恭介を見ると恭介はん〜と唸った。


「みんな俺を買い被りすぎだな…俺はただ部下がなるべく死なないようにしたいだけなんだけどな。核だってできれば使いたくないし」


これは戦争だ…

犠牲のない戦いなんてありえない。


だが、独立機動艦隊は核を持っていても都市や艦隊には使わない。

大量破壊兵器である核の恐ろしさを知っているからだ。


そして、その恐ろしさを昼には連合艦隊司令部に言わなければならない。


「…」


黙りこんだ日向に凛と弥生は書ける言葉を一瞬失う。

だが次の瞬間には日向は笑い


「なんてな」


と言いながら歩き出す。


「ちょっ!恭介!」


「凛は帰ったら?」


弥生はしがみつく腕に力をこめて歩き出したので凛は追って弥生とは反対の右手にしがみつくように腕を組む。


「お、おい歩きにくいだろ2人とも」


恭介が言うが2人は恭介越しににらみ合い。


「あれ凛?恭介長官なんてどうでもいいんじゃなかったの?」


凛は顔を真っ赤にしながら


「き、今日だけなんだから…さ、寒いのよだかしがみつくの」


「寒い?」


日向は空を見上げた。

青い空だった。


「お前…風邪か?こんな暑いのに寒いなんて異常だぞ?」


「ち、ちちち違うわよ!艦魂の感覚では今日は寒いの!」


凛はあわてて言うが…


「えー、今日は暑いよ、凛異常」


「うぐ…黙りなさい弥生!」


必死の言い訳も弥生に粉砕されても凛は引き下がらない。

逃げ出したい気分だろうに…

そして、そのやり取りを見ていた日向はため息とともに


「わかったから凛、一緒に行くか?」


凛の顔が一瞬明るくなり弥生の顔が不満気になった。

だが、凛はすぐにいつものツンとした表情に戻ると


「しょ、しょうがないわね。ついていってあげるわよ」


もしかして気持ちがばれたかと凛は実は内心期待したがこの男はどこまでも恋にはぼんくらだった。


「そんなにハワイ見物がしたいんなら言えばよかったのに?他の艦魂達はもう見物というか観光してるぞ?」


「はっ?」


凛の表情が一気に怒りに変わったがすぐに呆れ顔に変わる。


「もういいわ…さっさといきましょう」


腕を組んだまま凛は言った。


「素直じゃないな凛は?」


左腕にしがみついている弥生がにやにやしながら言った。

凛は弥生をにらむと


「うるさい!あんたは帰りなさいよ!」


「やーよ。私が先だったんだから帰るのは凛のほうでしょ?」


「弥生よ!」


「凛よ!」


「お前ら…行くのやめようかな」


息抜きにきたつもりだがこれじゃ紀伊で寝てたほうがよかったかなと思う日向であった。

その様子を道行く兵士は不思議そうに見るのだった。




弥生「本編初登場の弥生だよ〜、飛龍の艦魂やってるんだよ」


凛「はぁ…あんたまで出てきたのね…」


弥生「ちなみに好きなものは恭介長官と恭介長官と恭介…」


凛「全部恭介じゃない!」


弥生「うん、だって好きだもん」


凛「うぐ…私だって…」


弥生「あ〜、やっぱり凛も好きなんだ恭介長官のこと?」


凛「ちちちち、違うわよ」


弥生「気持ちは素直にね。じゃあ、私がもらうよ」


凛「あ、あげないわよ!」


弥生「どうして?好きじゃないんでしょ?」


凛「パートナーとしては好き…恋愛は…」


弥生「ね〜え凛、恭介飛龍に頂戴よぉ」


凛「いや!絶対に嫌!」


弥生「本当に素直じゃないな凛は」


凛「ふ、ふん…意見と感想は待っててあげるわ」


弥生「そんな言い方したら駄目だよ〜、ご意見・感想お待ちしております。私って大人」


凛「み、認めないんだからぁ!」





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