第59話 ドイツの覚悟
超弩級戦艦が激突し、白兵戦になる。
そんなカリブの海賊のようなことは近代戦においてはまず、起こらないはずだった。
だが、目の前で繰り広げられているのはまさにそんな光景だった。
まず、炎に包まれたモンタナが明らかに逃げ遅れたカイザーに激突した瞬間薄紫のバリアが弾け飛んだと後に見ていた兵士が証言している。
六万二千トン級の戦艦の突撃である。
さすがのバリアも持たなかったと言うことだろう。
モンタナとカイザーは今互いに離れる事なく互いに副砲を撃ち合っていたがその副砲は互いの副砲を黙らせることに集中された。
めり込んだ艦首からはアメリカ兵達が銃を手に次々乗り込んでいくがそこへ20ミリバルカンファランクスが殺戮の嵐を巻き起こす。
モンタナの副砲が火を吹いた。
ズガアアアアン
爆発が起こりバルカンファランクスが消し飛んだ。
「突っ込め!」
アメリカ兵達はなんとしてもカイザーの内部に突撃しようと戦友の屍を越えて次々とカイザーに乗り移っていく。
カイザーのドイツ兵も無抵抗ではない。サブマシンガンや銃で応戦する。
白兵戦においても質はドイツが勝のである。
グワアアアアン
そこへモンタナの副砲が飛び込みドイツ兵は跡形もなく消とばされた。
ちなみにカイザー、モンタナ共に主砲は撃てない。
撃てば味方を爆風で消飛ばしてしまうからだ。
これがフレドリクなら迷わず味方ごと撃っただろうがカイザー艦長マルクはその点はまともな思考を持っていたと言える。
だが、非情に徹しきれないようではここは切り抜けられない。
カイザーの主砲が沈黙したのをいいことにイギリス軍も今だとばかりにカイザーに取り付き白兵戦に持ち込む。
イギリス軍も必死だった。
まるで、象にありの大群が群がる有様によく似ていた。
数に勝るアメリカ、イギリス軍は次々ドイツ兵を排除していく。
元々未来戦艦は白兵戦などほとんど想定していない。
だがら、艦内に対人兵器は多くはなかった。
そして、ついに艦の最深部であるCICの扉の前に乗り込んだアメリカ兵達がたどり着いた。
兵達は互いに合図すると扉を蹴破って中に突入し銃を撃とうとした。
「撃つな!」
そこへ男の声が部屋にとどろいた。
見るとドイツ兵達は両手をあげて降参を示していた。
「艦長はあなたですね?」
突撃隊の隊長が部下にドイツ兵の拘束を命令しながらマルクに言った。
「そうだ…」
マルクに悔しそうに言った。
「まさか、アメリカ軍がこんな戦法をとるとは思わなかった…司令の名を教えてくれんかね?」
「ランカスター少将です」
隊長は自らマルクの身体検査をしてから兵に両脇に立たせて拘束した。
「そうか…私の歴史では聞かぬ名だが優秀な男なのだな…」
「私の歴史だと?」
突撃隊の隊長が聞くとマルクはハハハと笑った。
「我々は未来から来たのだよ」
隊長は驚愕した。
「詳しく聞かせてもらおうか?」
隊長が言うとマルクは
「いいとも、我々は2046年の未来からやって来たのだ。我々の知る歴史ではナチスは敗北する。ソ連も落ちずに社会主義の国が残っている。そして、私達はドイツに世界を統一させ争いの起こらない世界を作るためにやってきたのだ」
「なんということだ…未来の兵器とは…」
隊長は言った。
「日本も未来艦隊の支援を受けているぞ?」
「なに?日本もだと?」
「独立機動艦隊と言われてる奴らだ。奴らはアメリカが勝つ歴史をいじくり日本を勝利に導いた」
「日本が…本当なのか?」
「証拠は技術だ。ミッドウェー海戦以後はお前達は負け続けているだろう?ミサイルにバリア、この時代では作れないものばかりを日本は持っている」
「くそ!ジャップめ!」
急に隊長は怒りが沸いて来た。
彼の息子はハワイ攻防戦で亡くなっている。
だが、急に隊長は妙に思った。
「なぜ、ドイツが不利になるようなことを言う?」
マルクはニヤリと笑った。
「みんな死ぬからさ」
その瞬間大爆発がカイザーのあちこちで起こった。
制圧していたアメリカ兵達は爆発に巻き込まれ、爆発はモンタナまで巻き込んでカイザーとモンタナは次の瞬間巨大なキノコ雲を空に上らせながら爆沈した。
未来の技術をアメリカやイギリスに渡してはならない。
これはマルクも覚悟していたことで自爆コードを撃ち込んでいたのだった。
他の兵に気付かれず…
アニメなどのように自爆まで…などというカウントダウンはなかった。
ただ、無言の爆発がカイザーを飲み込んだのだ。
そして、モンタナの乗員はロバート艦長を始め生存者は1人もいないという大惨事を巻き起こしたのだった。
「藤森艦長!烈風より通信!ドイツの機動戦艦が70ノットで遠ざかっていきます」
「え?」
藤森は疑問に思った。
なぜ、敵は引いたのだと。
今なら尾張も合流してないこちらを叩くのは簡単だろうに…
しかし、その謎はすぐに解けた。
「艦長!イギリス旗艦、アーク・ロイヤルから通信です。我が艦隊はドイツのモンスターを葬ったと」
「本当なのそれは?」
藤森は目を丸くした。
一体どのような方法で討ち取ったのか…援軍の烈風隊の誰かが見たはずだから後で聞かなければならない。
それより先に…
「艦長、ドイツの機動戦艦を追撃しますか?」
それに藤森は首を横に振る。
「いえ、逃げるなら放っておきましょう。蜂の巣をつつくようなことはやめたほうがいいわ。まだ、ここは大西洋なんだから…尾張にもそう伝えて」
「了解」
「ふー…烈風隊も20機を制空及び偵察に残して帰還させて、それとキングジョージは?イギリス王家は無事なの?」
「艦橋が破壊されてますから旗艦はアーク・ロイヤルに移して王家の方もそちらに行くそうです。それ以上のことは分かりませんが…」
参謀長の雪村の言葉に藤森は頷いた。
「分かったわ。引き続き警戒態勢を維持しつつ海に投げ出された人の救助を行います。ヘリは全部出して救助させて」
「了解!」
藤森はふーと息を吐いた。
まだ、やらなければならないことがある。
こちらに接近中のアメリカの大西洋艦隊だ。
攻撃を受けたら適わない。
「私が直接行くしかないわね…ホーネットのランカスター少将に通信を、大西洋艦隊司令アイゼンハワー将軍と非公式の会談を儲けることを願ってることをアイゼンハワー将軍に伝えてもらって。このままじゃ間違いなく攻撃を受けるから」
藤森は大西洋艦隊と戦いたくなかった。勝てないわけではないのだがドイツと戦うことになった以上アメリカの戦力を…それもドイツ戦では中核となる大西洋艦隊を壊滅させることだけはなんとしても避けねばならなかった。
「雪村」
藤森が雪村を見る。
「私が帰って来なかったら艦をお願いね」
「冬花…」
雪村は思わず普段の名で呼んだ。
藤森は注意するわけでもなく静かに微笑んだ。
「大丈夫よ。アイゼンハワー将軍は聡明な人だから」
藤森は言うのだった。
作者「ど、どうしよう…ここで話すネタが尽きてきた…」
凛「だったらやめたら?」
作者「いや、だってここに皆さんださないと忘れられちゃいますよ?特に最近影が薄い凛さ…」
凛「うるさい!」
↑
バルカンファランクス
作者「ぐは!」
凛「また、このネタか…いいかげん飽きるわね…何か新兵器がいるか…フフフ…」
クレア「募集は続行。特にジェット戦闘機は大歓迎、意見、感想をお待ちしています」