第49話 翼の母
ロンドン攻防戦が始まって2日の朝のことである。
アメリカ機動部隊の司令ランカスター少将は兵がいれてくれたコーヒーを片手に朝食を取った後、艦橋でロンドン援護の航空機の編成と指揮を指示した後、副長に指揮を任せて甲板に向かった。
甲板ではジェット戦闘機がカタパルトに載せられて発艦の準備に入っていた。
パイロット達はランカスターを見ると慌てて敬礼したがランカスターは
「私に構わず出撃の準備をしろ」
と言うとパイロットや整備兵達は仕事に戻った。
ランカスターは甲板を見回すようにしている。
誰かを探しているのかと整備兵は思ったが関わる時間はなかった。
やがて整備兵が暇になった時ランカスターがいた場所を見るとランカスターはすでにいなかった。
そのランカスターは目的の相手を見つけて歩み寄っていた。合衆国海軍の白い軍服に身を包み艦への入口の横に置いてあった整備兵のものだろうか?工具を入れた箱の上に彼女は両手を顎に乗せてシューティングスターが発艦するのを見ていた。
ランカスターは帽子を手で押さえながら
「探したぞ、クレア」
すると、彼女…ホーネット、真名はクレアはランカスターに目だけを向けた。
吸い込まれるような青い瞳に腰まで届くさらさらな金髪、年は13歳ぐらいの少女はすぐにシューティングスターに目を戻してしまった。
「何か用?」
「何、少しクレアに頼みがあるだけだ」ランカスターはクレアの横に座った。
工具箱はないので甲板に直接だ。
「はい」
クレアはポケットからハンカチを取り出すとランカスターに渡した。
下に引けというのだろう。
「ありがとう」
ランカスターは素直に受け取ると下に置いて座った。
「それで用って?」
相変わらず彼女はシューティングスターから目を離さない。空母にとって艦載機とは子供と同じである。
航空機は母親から飛び立ち母の元に戻ってくる。だから、空母の艦魂のクレアはここにいることが多かった。ランカスターはそんな彼女を見ながら
「実はクレアに三笠に行ってもらいたいんだ」
するとクレアの目が怒りに染まった。
「なんで?」
静かだが怒りを押し殺した声だった。
「向こうの艦魂と交流を深める機会だと思うのだが…」
「ふざけないで…」
クレアは言った。
「私の姉様…妹達を日本は何人殺したと思ってるの?正直私は今すぐにでも日本を叩き潰したい気分よ…」
このホーネットはエセックス級空母だが彼女が言う姉様と妹というのは日本に沈められたエセックス級の空母達のことだろう。
「向こうの艦魂と話せ?冗談も休み休みいいなさいよランカスター!」
クレアは本気で怒っているようだった。
だが、ランカスターは引き下がらなかった。
「クレアが日本を憎む気持ちは分かる。だが、憎しみを抱き続けてもそれは永遠に続く悲劇しか生まない。誰かがその連鎖を断ち切らなければならない。それに日本は我々を助けてくれた」
「ただの気まぐれに違いない!」
ランカスターは悲しい目でクレアを見る。
「日本は今、イギリスを助けようとしている。私はそれに違いはないと思うのだ。敵であったチャーチル首相を艦内に招きオーストラリアに送ると言っている。もはやドイツと戦う以上過去の憎しみをぶつけ合うのをやめなければならない」
「じゃあ!日本を許せと!姉様達を忘れろと言うのランカスター!見損なったわ!日本と大統領の許可も取らずに共闘して!分かってるの?軍法会議は免れないわよ?」
ランカスターは目を潰った。
「進歩のないものは決して勝たない…」
「え?」
「今、日本とアメリカは憎しみで戦っている。戦う理由は憎しみのみ…その憎しみを日本にぶつけるのではなく明日のため死んでいった仲間の想いを心に刻み、憎しみを越えて我々は手を取り合うという進歩が今は必要なのだ」
「心に刻む…」
クレアは左手を胸に当てて言った。
ランカスターはうなずくと
「忘れろとは言わない。だが、明日のために昨日の敵と手を取り合う。必要なことだとは思わないかクレア?」もちろんこれは綺麗事だ。
人を殺し回る犯罪者に罪を許そうとは言わない。
しかし、これは戦争なのだ。
殺すものも殺されたものも皆、祖国を守るために戦っているのだ。
殺したいから殺すのではない。
クレアは考え込むようにしていたがやがて顔を上げた。
「私には分からないランカスター…でも、向こうの艦魂との話は一度だけしてあげる…何か伝えたいの?」
ランカスターは首を横に振った。
「ただ、会うだけでいい。気にいらなかったら帰ってきたらいいからな」
「…」
クレアは再び甲板に目を向ける。
最後のシューティングスターが飛び立つ所だった。
キイイイイイイインという音を立てて飛び立ったシューティングスターは上空で編隊を組むとロンドンへ向けて飛び立つ。
そこへ日本の烈風が続く。
クレアはいつもするように立ち上がると両手を空に上げて言った。
「行ってらっしゃい」
ランカスターも空を見上げながら敬礼した。
クレアは空を見上げながら
「ランカスター、あなたはきっと名将ね…もし、歴史があなたを書かなくても…」
クレアは振り返った。
「私が唯一認める名将にしてあげる」
ランカスターは帽子を深く被ると右手でクレアの頭を撫でた。大きな手だとクレアは思いながらランカスターに言った。
「いってきます」
ランカスターの手から撫でる感触が消える。
クレアがおそらく三笠に向かったのだ。ランカスターは三笠がいる方角を見ながら
「これがアメリカと日本の艦魂達のかけ橋となるといいのだが…」
ランカスターは空を見上げた。
シューティングスターが吐いた白煙が薄れていく空は戦争をしてるなど信じられないような青空だった。
凛「進歩のないものは決して勝たない」
明「確か日本が負けた世界の戦艦大和の乗組員に言った言葉ね…」
撫子「沈んだ私はどのようにその言葉を受け止めたのでしょうか…」
クレア「日本の艦魂ってこんな湿っぽいのばっかり?」
星菜「誰?」
クレア「私は三代目ホーネットの艦魂クレアよ。一応自己紹介するわ。ランカスターに言われたし…ところで三笠は?」
凛「ああ…姉さんならさっき艦長室に走って行くのを見た気がするけど…」
クレア「艦長室ね!よし」
↑
走り去る
明「な、なんだったの?」
凛「明は行かないの?」
明「だってここで起こったことは本編に影響しないから無駄よ。本編からこっちには影響があるけど…」
撫子「クレア様と友達になれればよいのですが…日米の枠を越えた」
星菜「同じ空母だから仲良くしようかな…」
作者「私も金髪のアメリカ人の女の子と仲良くしたいな〜」
凛&明&星菜「死ね」
作者「ぎゃあああああ!」
↑
消し炭
撫子「ご意見・感想お待ちしております」
作者「復活!」
凛「は、早い!」
作者「ふふふ、凛様残念ですが私の再生速度は化け物になりつつあります。実は読者の皆様に募集したいことがあります。この先、改大和型戦艦が出る予定で名前を募集したいと思います。ドイツの戦艦、空母も募集したいです。是非!感想と共にかメッセージにでも結構ですのでどうか力をお貸し下さい」