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独立機動艦隊『紀伊』―連合艦隊大勝利!  作者: 草薙
プロローグ―変わりゆく太平洋戦争
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第4話 2人の連合艦隊司令長官

「連合艦隊司令長官 日向 浩介です」

兵士達が『紀伊』に搭載されてたSH-60シーホークが大和の後部甲板に降り

中から出てきた30代前半くらいの男に殺気を向けて取り囲んでいた。

そして、何より男が言った連合艦隊司令長官という言葉に怒りを感じていたと言える。

彼ら兵士達にとって、連合艦隊司令長官というのは山本五十六だからだ。

兵士の1人が大和に飛んできた飛行物体を見る。

妙に大きなプロペラをつけたものである。

それが飛んできたのも驚いたが垂直にこの大和に降りてきて着陸したことにも驚愕を

隠せない。

その飛行物体から降りてきた男は形式の敬礼をした後興味深そうに大和を見上げている。

とはいえ、この位置からでは後部主砲ぐらいしか目に引くものはないが…

「長官!」

日向長官がと兵士が声のした方を見るとヘリからもう1人、降りてくるところであった。

(女?)

兵士の誰もが思った。

日本海軍のものとは違う白を基調とした軍服に身を包み眼鏡をかけた美人といえる

容姿の女性が湧きに黒い箱のようなものを持って大和に降り立った。

ざわっと兵士達が騒ぎたった。

参考までに言うがこの当時日本連合艦隊の戦艦に女性が乗るなどということは1度もなかった。

それどころか戦場に女が出ることすらない。

兵士達が騒ぐのは当然といえた。

「あ、あの…長官。私がここにくるのはまずかったのでは…」

小声で古賀 美崎は日向長官に言った。

日向は大和を見上げたまま

「大丈夫だって。それに名誉に思えよ?歴史の中で史上初めてあの男の戦艦大和に乗り込んだ女性になったんだからな古賀は」

「それは…名誉に思うのですが…」

視線が痛い。日向の方にも兵士達の目は向いているが半分以上は古賀を見ている気がする。

まあ、大和に女性が乗ったのは初めてなのだろうからしょうがないかも知れないが…

「貴様ら何を騒いでおるか!」

その怒鳴り声を聞き慌てて兵士達の1部が道を開けて敬礼する。

そこに立っていたのは3人。高柳 儀八艦長と黒島 亀人参謀長、

さらに、山本 五十六連合艦隊司令長官が興味深そうにシーホークを見ながら日向と

古賀の方へと歩いてきた。

「連合艦隊司令長官日向 浩介です」

「参謀長、古賀 美崎です」

2人が敬礼すると高柳艦長が驚いた顔で

「連合艦隊司令長官だと?」

思わず山本の方と日向という男を見比べてしまった。

どう見ても連合艦隊司令長官を名乗った男は30代前半…いや、下手をすればそれより

若い可能性すらありうる。

「ほう、一体、どこの連合艦隊司令長官ですかな?我が大日本帝国の連合艦隊司令長官は

山本長官であることは誰もが認める事実ですがな?」

黒島 亀人が言った。

「そのことについて詳しく話したいと思いますが出来れば山本長官、黒島参謀長のお二人と我々2人だけが話せる場所で話したいのです」

「なぜかね?」

初めて山本五十六が口を開いた。

日向は辺りを見回してから

「ここでは人目につきすぎます。それにこれから話すことは末端の兵士に聞かせる

訳にはいかないのです」

「そんなことができるか!」

と、怒鳴ったのは高柳艦長であった。

「そんなことをいって長官と参謀長を殺すつもりだろ!騙されんぞ!?」

「お言葉ですが…」

古賀が口を開いた。

「我々の紀伊の能力を持ってすれば大和を沈めることなど容易に出来ます。

山本長官を殺すというなら日向長官を危険にさらすような真似は決してとりません」

「女は黙っていろ!」

高柳艦長が怒鳴ったがまあまあと山本が諫めた。

「では、口が堅く腕が立つ兵士を同席させるというのはどうでしょう?」

高柳はまだ、不満があるようで山本長官を見るが山本は元より話を聞くために

ここまで降りてきたのだ。

断る理由はない。

「よし、では長官室へご案内しよう」

と山本は面白いものを見るように2人を見てから歩き出した。

「感謝いたします」

2人は連合艦隊司令長官と参謀長という最高クラスに偉い2人の先導の下、長官室に向かい歩き出す。

「お、お待ちください長官!護衛はつけさせていただきますぞ!」

高柳艦長が後ろから言い、2人の兵士が護衛につくこととなった。




後に戦艦大和が大和ホテルと屈辱的な名を与えられたのは艦の設備が他の艦と

比べて充実していたからである。

大和の長官室にはクーラーはつけられていたし壁には絵が飾ってある。

山本は長官室の自分の席に座り2人の客人には椅子を勧めた。

2人は失礼しますと腰掛ける。

黒島 亀人は山本の傍らに立ったままで2人の兵士は日向と古賀が何もしないように

両者の横に立つ。

ちなみにこの兵士。

口が堅いということが条件ではあったが実は高柳艦長が選んだのは実は

よく知りもしない兵士だった。

体格がよく護衛に向きそうな兵士をぱっと見たところ2人が選ばれた。

その1人が紀伊接近を見つけ機銃要員であった小西1等水兵である。

小西は自分が場違いな場所にいることに気づいていた。

末端の兵士である自分が護衛とはいえ連合艦隊司令長官山本五十六の

長官室にいるのである。

後でたの兵士に自慢が出来るとも考えたが艦長じきじきの護衛の命令である。

小西は気を引き締めた。

ちらりともう1人の兵士を見てみたがその兵士は小西の知らない兵であったが

どうやら曹長らしい。

「さあ、ここならいいだろう?話を始めてくれ」

山本が2人の客人に言った。

話が始まった。




「我々は未来から来ました」

「未来だと!?」

黒島 亀人は驚いた声を上げた。

その、あまりに馬鹿げた言葉に2人の兵士も一瞬ぽかんとしてしまった。

護衛として呼ばれてはいるが耳に栓を入れているわけではないのである。

無論発言はしない。

「ええ、今から丁度100年後の未来、2042年から時空を越えて来ました」

しかし、そんな反応は日向にとって予想内のことであった。

だから、信じてもらうためにいろいろな準備をしたのである。

「なるほど、ではそれを信じたとしてなぜ君達はこの時代に現れたのかな?」

山本が言った。

日向はまっすぐに山本長官の目を見ると

「日本を救うためです」

「日本を救う?それはつまりあの戦艦で我々の味方をしてくれると?」

黒島が言った。

日向はうなずき

「ええ、しかし、我々の戦力は『紀伊』だけではありません」

「他にも戦力があると?」

それにも日向はうなずくと古賀に顔を向け

「古賀、山本長官に見せてさし上げてくれ」

「はい」

と古賀が立ち上がったので曹長が緊張した様子で動こうとしたのでそれを

山本が制す。

古賀はずっと手に持っていた黒い箱を山本の前にある机に置くとパカっと開いて見せた。

「これはなんだね?」

「パソコンといいます。未来の技術で作られたそのパソコンに情報が入っておりますので

ご覧下さい」

山本と黒島はパソコンのモニターを覗き込んだ。

そこには複数の兵器が名と写真をつけて並んでいた。

空母がいる。戦艦がいる。戦闘機もいる。

そして、その写真の中にはあの『紀伊』もあった。

「大まかに我々の戦力を言いますと…」

それは次のようになる。


戦艦 3

空母 4

大型輸送船 30隻


それを聞いた山本はウウムとうなった。

「大艦隊じゃな」

と黒島が言った。

写真を見る限り戦艦にせよ空母にせよかなり大型のものだ。

これが味方についてくれるなら心強いことこの上ない。

だが、だからといってでは味方としてよろしく頼むとはまだ言えない。

「このパソコンという箱は確かにすごいものだが…未来から来たというなら

この戦争はどうなるのだ?」

山本の問いに日向ははいと答えながら

「日本の無条件降伏により幕を閉じます」

(神国日本が負けるだと!)

小西と軍曹は思わず叫びそうになったが2人を睨むだけで済ませた。

山本はやはりとつぶやきながら椅子に深く腰を落とした。

「このミッドウェー海戦で虎の子の正規空母を4隻失った連合艦隊は以後アメリカ

の猛攻に押されていきます。まず、アメリカの反撃はガタルカナルに上陸し日本は

敗退しMO作戦は頓挫します」

山本は黙ってそれを聞いている。

「その後次々とアメリカ軍は日本軍を占領した島から追い出しついに日本本土にB29という大型爆撃機が襲い繰るようになり連日空襲を受けるようになるのです。

そして、アメリカは原子爆弾と呼ばれる町1つを消し飛ばすほどの爆弾を

広島と長崎に落とし昭和20年8月15日。日本は無条件降伏します」

「…」

4人は絶句していた。言葉もないとはこのことである。

パソコンに入っていた昭和天皇の玉音放送も映像をつけて見せ

さらに原爆の写真、マッカーサーと昭和天皇が握手している写真、

大和の最後。

次々と敗戦の記録を見せられていくうちに山本はもちろん黒島ももはや

彼らが未来からきたということを疑えなくなっていた。

玉音放送にいたっては山本を始め兵士2人も涙を流していた。

「認めよう…」

「そうですな…」

山本と黒島が言った。

「ご理解いただけて幸いです」

と日向と古賀は頭を下げた。

「しかし、一つ聞きたいことがある」

「何でもお答えいたします」

と日向が言った。

「君達が未来から来たのは事実だと確信しよう。だが、なぜ日本を勝利を導きに

来たと言うがそんなに未来の日本は悲惨なのかね?」

日向は少し目を伏せさらに目をつぶり次に山本の目を見た時には思いつめたような

目をしていた。

「2042年、あるいは2043年…日本は滅びます」


ご意見、感想お待ちしております。


『紀伊』と『大和』がついに接触しました。

次回2042年の世界で何があったのか明らかになります。

日本が滅ぶ、それはいったいどういうことか…

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