第45話 敗退
『終わった』
その瞬間、誰もがそう思った。
尾張にミサイルが直撃し轟沈するその瞬間をその場にいる者達は全て想像した。バリアを張ることも出来ない尾張に耐えることは不可能だ。だが…
「え?」
フレドリクは舌打ちした。
彼は見ていた。
尾張にミサイルが突き刺さる寸前に飛び込んできたものがミサイルを迎撃した。そんなことが出来るものなど尾張を除けば2艦のみ
「まさか、貴様か日向!」
CICから報告が上がってくる。
「敵艦を確認!こ、これは!?」
「どうした?」
フレドリクが聞くとCICから困惑した声が帰ってきた。
「データーにない戦艦です。紀伊や大和とは形が…」
「なに?映像をこちらに回せ」
そう言ってからフレドリクは艦橋の兵と共にモニターに目を向けた。
「こいつは…」
フレドリクは言った。
「ダメージコントロール!被害状況を伝えろ!」
轟音と共に何かが尾張を守った。
生き残れたのだ。
椎名は被害状況を最優先に考えた。
ミサイルを迎撃することが出来るものなどこの世界ではドイツの未来戦艦を除けば尾張と紀伊と大和しかいない。
すると…
「まさか、日向長官か有賀艦長が?」
同じ情報を持つものどうしである。
椎名はフレドリクと似た質問をCICに投げかけた。
しかし、CICから帰ってきた答えはドイツ戦艦とは違う答えだった。
「こ、これは…そんな…まさか」
「どうした?正確に情報を伝えろ!」椎名が怒鳴るとCICの兵士は慌てて
「し、失礼しました。あれは『三笠です』」
「三笠だと!?」
椎名は驚いた。
タイフスリップに失敗したと思われていた『クロノロード計画』の1番艦、機動戦艦『三笠』だというのか…
それがなぜこんなところに…
「三笠から通信です!」
椎名ははっとして
「繋げ」
「はっ!」
椎名の正面の大型モニターに女性が映し出された。
彼女は敬礼すると
「椎名艦長、現在の状況を教えて下さい。尾張が攻撃を受けていたので援護しましたがここは?私達は予定では大西洋の真ん中にでるはずだったはずですが…」
元々三笠の役割はアメリカの造船設備を叩くことだった。
だが、それはもはや数ヶ月前の話となっている。
彼女はどうやら時間がずれているらしい。
「詳しく話す時間はない。ドイツは敵で今我々はイギリス及びアメリカを支援している。アメリカとの戦いは続いているが今だけは味方だ。敵はドイツの未来戦艦だ!」
三笠艦長の藤森 冬花は了解と敬礼する。
その時CICからとんでもない報告が舞い込んできた。
「か、艦長!レーダーに反応があります。戦艦とおぼしき反応が3!」
椎名ははっとした。
「編成は?」
「その3隻のみです!随行艦はありません!」
「くっ…」
椎名は舌打ちしした。
その編成は間違いなく未来戦艦だ。
この海域に到着するのも時間の問題…
空母がいないのは不幸中の幸いだがもはや…
「藤森艦長…」
椎名は繋がりっぱなしのモニターを見た。
「我々はこれよりスコットランドへ向かい、イギリスの亡命を支援します…三笠はその援護を…」
「…了解」
藤森艦長が返答する。
「ま、待って下さい!イギリスを見捨てるんですか!」
霧島が怒鳴った。
「黙れ!」
「っ!」
椎名が怒鳴ったので思わず霧島は黙った。
「核を使えと言うのだろう?だがそれはできんのだ」
椎名はそれきり霧島を見ることなく命令を下した。
「最大戦速!破損箇所の応急修理を急げ!それとアメリカ艦隊及びイギリス艦隊へ通信を…我が艦隊はこれよりスコットランドへ向かいイギリスの亡命を支援することを望む。なおこの海域にモンスター戦艦が3隻接近中、至急撤退を進言する」
通信兵がそれを送ったと聞き椎名は椅子を殴り付けた。
「くそ…」
凛「尾張と三笠が撤退…イギリスは…」
明「終わったわ…くっ…情けない」
撫子「くじけてはいけません明様。生き残ることこそが今は重要なのです。生きていればいつかは反撃ができます」
星菜「うん…」