第44話 ドーバー海峡の死闘!戦艦『尾張』奮闘す
その報告を聞いたチャーチルは仰天した。
「なんだと?もう一度いってくれ?」
その兵士の報告によればドーバー海峡に突如として乱入してきた戦艦がありその戦艦は日本の化け物戦艦だという。
そして、アメリカ軍は日本と共闘することを選び、イギリス海軍の司令は困惑してチャーチルに判断を仰いできたのである。
「馬鹿な…なぜ、日本が我が国を助けてくれるのだ?」
今、日本と連合軍であるイギリスは戦争状態にある。
ドイツを助けてイギリスを攻略するというならまだ分かるが敵国を助けるなど正気の沙汰ではない。
「命令をいかがいたしましょう?」
チャーチルは兵士の言葉にはっとした。そうだ、イギリス海軍に方針を伝えなければならない。
手を組むかあくまで敵とするか…
「…」
チャーチルは葉巻を右手に持つと
「日本の戦艦などいない…」
「はっ?」
兵士が怪訝な顔で聞き返す。
それをチャーチルは察しの悪い奴めと思いながら
「日本の戦艦などドーバー海峡にはいない!つまりはそういうことだ。そう伝えたまえ」
「はっ!」
兵士が通信のために走り出す。
チャーチルは尾張に対して攻撃することも味方として扱うこともしない無視を決めた。
だが、心の中でチャーチルは感謝した。(ありがとう…)
尾張はレーダーから姿を隠すバリアを解除した後、アメリカの機動部隊を助けると同時に通信をアメリカ機動部隊とイギリス艦隊に送った後返答が来る前に攻撃を開始した。
「ミサイルロックオン!」
CICからスピーカーの声が響く。
狙いは全て未来戦艦『フリードリッヒ・デア・グロッセ』と未来空母『グラーフ・ツェッペリン』である。
あれさえなんとかすれば十分にイギリス軍はアメリカの機動部隊と協力してドイツ軍を押し返すことができるだろう。
そのためにはアメリカの機動部隊の空母を守りつつ戦わなければならない。
尾張にはハリアーか10機のみなのでジェット戦闘機を搭載するアメリカ軍の戦力は貴重なものだった。
だからこそあの『フリードリッヒ・デア・グロッセ』は狙ったのだろう。
だが、敵戦艦をなんとかしない限りイギリスとアメリカに勝機はない。
「撃て!」
椎名は怒鳴った。
イージスシステムの限界である30のミサイルが尾張から一斉に放たれた。
その瞬間『フリードリッヒ・デア・グロッセ』もまた、ミサイルを発射した。
ミサイルを迎撃するためである。
大空で音速を越えた攻撃と迎撃のためのミサイルが交差する。
未来の戦いであった。
だか、迎撃ミサイルの攻撃は想定済みである。
上空にあがっていた10機のハリアーから一気に40のミサイルが放たれた。
これでミサイルの合計は70、『フリードリッヒ・デア・グロッセ』のイージスシステムが尾張と同格として、こちらのミサイルに迎撃ミサイルが全て命中しても防ぎきれない。
空で大爆発と共に爆炎から抜けたミサイルが『フリードリッヒ・デア・グロッセ』に飛び込み大爆発が起こった。
「やったか!」
椎名が怒鳴った。
未来空母『グラーフ・ツェッペリン』には1発のミサイルが突き刺さり黒煙をあげている。
そこへ空へと上がっていた未来戦闘機バッヘムが戻ってきてミサイルを発射した。
「バリアだ!」
椎名が怒鳴ると薄紫のバリアが尾張を覆った。
その瞬間、ミサイルによる大爆発が立て続けに起き、尾張は攻撃を封じられた。そこへドイツ本土からのメッサーシュミットも現れ、尾張にロケット弾攻撃を開始する。
その結果尾張は完全に動きを封じられることとなった。
「椎名艦長!このままでは!」
霧島参謀長が怒鳴るが椎名は分かっていると怒鳴り返した。攻撃するにはバリアを解除する必要がある。
だか、バリアを解除すれば尾張はミサイル攻撃を受けて轟沈するだろう。
ミサイルを撃ってもう一度バリアを張り直せることが出来るとすれば一回が限度。
それを越えれば良くて中破、悪ければ轟沈してしまう。
上空のハリアーもミサイルの半分を使い切っている状態なのでバッヘムの攻撃で次々落とされて行く。
「椎名艦長!核ミサイルを!」
霧島が怒鳴った。
「なんだと!?」
椎名は驚いて霧島を見た。
「ベルリンに核ミサイルを叩き込み動揺した瞬間を狙い一気に攻勢にでるのです」
「駄目だ!」
椎名は怒鳴った。
「それ以外に方法があるとでもいうのですか!」
霧島は怒鳴るが椎名は首を横に振る。
「一度このような戦闘で核を使ってしまえばそれは前例となり人は核を使うことに躊躇をなくすだろう…それだけはしてはいけないのだ!」
「では、この状況を…イギリスを見捨てるのですか!」
「今は耐えろ!敵戦艦も沈んだ可能性も…」
その時CICから怒鳴り声が聞こえた。敵戦艦健在との報告だった。
「馬鹿な…」
椎名は艦橋のモニターに映るその姿を目にして言った。
黒煙の中から無傷の『フリードリッヒ・デア・グロッセ』が出てくるところであった。
「ダメージはありません」
参謀の言葉を聞きフレドリクはうなずいた。
「当然だ」
『フリードリッヒ・デア・グロッセ』の動力は尾張と同じ核融合だった。
当然バリアも備え付けられている。
原子力空母である『グラーフ・ツェッペリン』にはバリアがついていないため被弾しているが今は尾張の攻撃を完全に押さえ込んでいるのでドイツ本国に向けて退避させているところだった。
だが、あまり関係はない。
バッヘムは空に上がっているし『フリードリッヒ・デア・グロッセ』は無傷だ。報告によればこれ以上の連合軍の援軍もあるまいとフレドリクは思った。
紀伊、大和を始めとする機動戦艦や空母は間に合わない位置にいることはすでにわかっている。
「シューティングスターの編隊が尾張に向かいます!」
「尾張を助けるつもりか?打ち落とせ…ついでに機動部隊も片ずけろ」
フレドリクが言うとイージスシステムにより30の敵がロックオンされミサイルが放たれた。
シューティングスターのアメリカ兵達は始め日本の戦艦と共同してドイツを叩くように命令されて複雑な気持ちでいた。彼らの中には戦友を日本に殺されたものも多い。
それと共闘しろだとは…
だが、攻撃が集中する尾張を見てアメリカ兵達はそれを助けようとした。
なぜか?
それは、今この時だけかもしれないが味方であるあの戦艦が沈めばあの敵の化け物戦艦に対抗できるものがいなくなると本能的に悟ったからかもしれない。
「全機俺に続け!ジャップ戦艦を助けるんだ!」
40機ほどのシューティングスターがどっと尾張を襲うメッサーシュミットやバッヘムにロケット弾を発射した。
20機ほどのバッヘムとメッサーシュミットが爆発して落ちていくがシューティングスターのパイロット達は自分達に向かい飛んでくるミサイルと母艦のあるアメリカ機動部隊にミサイルが飛んでいくのが見えた。
アメリカ兵達はここまでかと思った瞬間シューティングスターに向かうミサイルが音速で飛来したミサイルで迎撃される。
だが、全てというわけではなく2機のシューティングスターと正規空母『エンタープライズ』にミサイルが直撃し黒煙をあげ2機のシューティングスターは落ちて言った。
同時に海面でも爆撃が連続して起こった。
尾張が機動部隊を助けるために放った迎撃ミサイルだったがその代償は大きかった。
シューティングスターの介入で多少緩くなっていたとはいえバッヘムのミサイルは正確に尾張を捕らえた。
右舷と左舷のミサイルランチャーがミサイルの攻撃で吹っ飛び後部の速射砲が爆発して砕け散る。
合計5発のミサイルが尾張に直撃したのである。
そして事態は最悪へと傾いた。
「浸水を確認!30ノットまで落ちます!」
「バリアシステムに破損あり!システムの再起動に2分!」
最悪だった。
ここまで尾張が数の勝る未来戦力と渡り合えたのはバリアがあってこそだった。それが今…失くなった。
再起動は間に合わない。
「艦長!」
霧島が椎名を睨んだ。
彼は核ミサイルを使えと言っているのだ。
だが、椎名はここで尾張が沈もうとも核ミサイルは使用しないつもりだった。
「ミサイル来ます!」
尾張の参謀の一人が悲鳴を上げた。
「あきらめるな!ミサイルで迎撃しろ!」椎名が怒鳴った。
バッヘムは下がり『フリードリッヒ・デア・グロッセ』がまるで最後の獲物を自身が狩るとでも言うようにこちらに向かってくる。
ミサイルランチャーが破壊された以上イージスシステムが健在でも30のミサイルを同時に迎撃することが尾張には出来ない。
速度も30ノットが限度の今では…いや、例え全速を出せても逃れることは敵わないだろう…
尾張のバルカン砲も対空砲火を張りミサイルを落とそうとするが敵わない。
(ここまでか…すまん明…後は頼むぞ…日向)
椎名は傷ついているであろう艦魂の明のことを思い静かに目を閉じた。
上空のハリアーやシューティングスターの編隊がミサイルを迎撃しようとするが音速を越えているミサイルを機銃で破壊することは敵わない。
「尾張!」
ハリアーのパイロットが悲鳴を上げた。
迎撃ミサイルと尾張に死をもたらそうとするミサイルが交差して爆発を起こすが全てを迎撃することは出来ず、ミサイルは尾張に突進する。
そして大爆発が起こった。
バリアシステムは間に合わず…迎撃は敵わなかった…
凛「あ、明!」
星菜「嘘…」
撫子「そ、そんな…」
凛「私達は間に合わない…」
撫子「でも凛様のように助かってる可能性も…」
星菜「でも凛の時のバリアシステムは再起動は間に合わなかった…これは絶対」
撫子「ではやはり明様は…」
凛「死ぬ訳がない!あいつが死ぬなんてないわ!」
撫子「凛様…」
エリーゼ「邪魔物は消えました。このままイギリスは落とします」
凛「エリーゼ!明が死んだりしてたら絶対に許さない!」
撫子「ご意見・感想お待ちしております…」