第42話 『魔王』フレドリク
その時期がいつなのかは分からない。
しかし、そこには未来から来た男はいた。
アドルフ=フレドリク。
彼はヒトラーの義理の息子という地位にあり実際にもヒトラーと血が繋がっている
日本がアメリカに勝った未来の2046年から来た男である。
ヒトラーも厚い信頼を抱いており今彼はヒトラーに次ぐ軍への発言力を持ちヒトラーが上から命令を書き換えない限りはドイツ全軍の指揮権を握っているのであった。
「フレドリク様」
背後に気配が現れたことを感じてフレドリクは窓の外を見ながら振り返ることなく
「どうしたエリーゼ?」
「ハワイが日本軍の手に落ちました」
「そうか」
フレドリクはふっと口元を緩めた。
「史実より2ヶ月早い攻略か…さすがは独立機動艦隊というところだな」
フレドリクがいた未来での歴史でのしっかりと準備を整えた日本のハワイ攻略は1943年の2月14日に行われた。
結果は無論日本の勝利で終わった。
「それで?」
フレドリクが振り返るとそこには臣下の礼をするようにひざまずいたエリーゼがいた。
「状況を報告しろエリーゼ」
「はい、ソ連の解体はほぼ完了しました。逆らう者はご命令通り皆殺しにしています。
ロシア革命軍なる組織が現地のドイツ軍に攻撃を仕掛けましたが撃破し1部を除き全て
処刑したそうです」
「そうか、その逃げた1部はどうした?」
冷たい目であった。
見る人が見れば分かるだろう。フレドリクは人の命をゴミにしか考えていない。
「一部は満州に逃げ込みましたので追撃は出来なかったそうです」
「そうか、なら別にいい。どうせ後に処刑することに変わりはない」
「ソ連は4つの国に区切りました。時間があればさらに小国に分断してドイツ第三帝国の属国に組み込む予定です」
「ユダヤ人どもは?」
それはヒトラーの命令である。
「無論皆殺しにしました。ドイツの勢力内には表だって歩くユダヤ人は存在しません」
「そうか、ゴミ掃除は順調に進んでいるのだな」
フレドリクは口元に笑みを作っていった。
ユダヤ人…それはヒトラーが生きる価値なしと強制収容所に送り込む民族である。
まだ、ヒトラーの信頼を十分に勝ち得ていなかった頃フレドリクはヒトラーに強制収容所などに送り込む必要なしとヒトラーに進言しヒトラーにユダヤ人の処分を任された。
その結果フレドリクはユダヤ人を1人残らず皆殺しにした。
これがヒトラーの信頼を勝ち得た理由の1つだろう。
ここまで心無いことを出来る人間は少ない。
その結果今やドイツ軍でも彼のことを『魔王』と呼ぶものまで現れる
始末だった。
フレドリクは子供であろうと容赦はしない。
未来の独裁者の子供などは特に泣き叫ぼうが命乞いをしようが殺す。
母親が子供の命だけはと懇願しても関係なくフレドリクは死を命じさせた。
独裁者の子供をかばおうとしようものならそのかばったものも殺した
まさに魔王か悪魔としか言いようがない男であった。
ヒトラーはフレドリクのことを大いに気に入り今やフレドリクの名は世界で恐怖の代名詞となりつつあった。
何が彼をそこまで…
元々フレドリクという男はここまで残虐非道な人間ではなかったのである。
だが、あることがきっかけで彼は変わってしまった。
信じられないことだが昔はエリーゼに対する彼の態度も日向の凜に対する態度に近いものがあった。
彼は独裁者の先祖に情けはかけない。
ヒトラーが独裁者であることから矛盾してはいるがドイツが世界を統一し、争いの起こらない世界を作る。
そのために彼は手段を選ばないつもりだった。
エリーゼはフレドリクに尽くす。
どんなことがあってもエリーゼは彼から離れるつもりはなかった。
残虐なのは今だけ、きっと世界を統一すれば彼は元の優しい彼に戻るとエリーゼは思っていた。
そのためならエリーゼはなんだってやるつもりであった。
「エリーゼ」
「はい」
フレドリクの言葉にエリーゼは答える。
「俺は…」
ピーピー
その時フレドリクの耳のインカム型の通信機がなった。
「…」
フレドリクは無言で通話ボタンを押す。
「フレドリク準総統!準備が整いました」
フレドリクの参謀の声が聞こえる
「そうか、ならやれ」
冷たい言葉で彼は言った。
「はっ!」
通信が切れる。
そして、彼は窓に再び向き直った。
大きな音が轟き彼の乗る船の窓をソニックブームを揺らした
空を未来戦闘機やメッサーシュミットが飛んでいく。
そして、すさまじい数のミサイル、ロケット兵器V3が飛んでいく。
そこはドーバー海峡、そして、霞んで見えるのは…
「日向、俺の勝ちだ。ふ、フフフ、アハハハハハ!」
フレドリクは狂喜に満ちた顔で笑いながら右手の拳を握った。
ついにドイツのイギリス侵攻作戦『シーライオン作戦』が開始された瞬間であった。。
そして、エリーゼは狂喜するフレドリクを悲しそうな目で見ていた。
凛「この男やっぱり…」
撫子「大変です!イギリスがなくなってしまいます」
星菜「これから行っても間に合わない…」
明「…」
作者「い、イギリスが陥落!?」
撫子「次回予告です。希望はあります。ご意見・感想お待ちしております」