表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
313/316

第300話 日本危機一発

<太平洋沖縄本島より北東500キロ『長門』『睦』>

資源運搬船明星が落ちてくる。

それを聞いた機動戦艦長門、睦は直ちに迎撃態勢に入った。

世界中に展開している機動戦艦群だが、迎撃する場所が理想的な連合艦艦隊の艦は存在しなかった。

仮に理想的な場所にいたとしても運搬船の完全破壊は不可能で小さくはなろうが津波の発生は防ぎようがなかった。

機動戦艦と同規模の質量の分でも小さな島程度なら壊滅状態にすることができる。

幸いにして離島の避難はほぼ、完了しておりわずかに残っているものが言えるとしてもその気があるなら空への退避は可能だろう。

「姉様。列空弾装填完了しました。後はタイミングを計るだけです」

「うむ」

機動戦艦長門の第一主砲の上で軍刀を杖のようにして持ち空を睨んでいるポニーテールの少女。

機動戦艦長門の艦魂であり、現役での日本の艦魂達のトップだ。

「美羽、気合いを入れろ。一撃必中であの運搬船を落とす」

「了解。姉様」

姉妹艦であるために睦の艦魂は妹に当たる。

真名は美羽だ。

「・・・」

長門の艦魂、緋野(あけの)は燃えるような強い瞳を空に戻す。

外すわけにはいかない。

外せば明星は地球の海に突っ込み日本を飲み込むだろう。

「日本は我々が守る」

そう緋野が誓った時光が見え彼女ははっとしてそちらを見た。

「!?」

               †

<横浜 三笠公園>

光が空に伸びていく。

それを歴戦の戦艦の艦魂は開けていない一升瓶を手に口元を緩めた。

ごとんと酒を地面に置くと

「さて・・・」

一升瓶の蓋を捜しながら彼女は言った。

            †

<宇宙空間『SU50』>

一体何が起きたというのだ?

およそ、戦闘機に搭載されたものの中では最高の人工知能である存在は混乱していた。

地球に落ちていく資源運搬船は地上の迎撃をあざ笑うかのように蹴散らして海に落下し津波が日本を飲み込むはずだった。

だが、そうはならなかった。

突如として日本の南から飛んできた光に跡形もなく消滅させられたのである。

わずかな、破片は大気圏に突入し燃え尽きていく。

「・・・」

人工知能はやがて考えるのをやめ地上に向けて降下を再開した。

ねつが彼女を覆っていく

行って情報を集めなければならない。

あそこには何かがある。

日本の沖縄と呼ばれたあの島に・・・

             †

<沖縄本島、琉球基地>

巨大な光が明星を消滅させた。

その光は荷電粒子砲の光であったがそれを放った紀伊はひどい有様だった。

荷電粒子砲を放ったであろう砲9門は全てが溶けておりもはや、使い物にならない。

太いケーブルが幾重にも紀伊に繋がっているがケーブルからは小規模ながら火災が発生してしている部分もあった。

当然CICは大騒ぎである。

しかも、CICの明かりは微弱なもので予備電源に切り替わり主機関の核融合炉は停止状態になっている。

「凛、被害状況はどうだ?」

紀伊の艦長日向は隣に立つ艦魂の少女に問いかける。

艦のダメージは本体がダメージを受けるとその部分が怪我をする艦魂に聞くのが一番早い。

「さっき、言った場所で最後」

その言葉を聞き日向は少し胸をなでおろしたが日向の参謀、古賀に睨まれる。

「何とかなったからいいものの下手したら紀伊も大和も消し飛んでましたよ。長官」

「これしか、方法がなかったんだからしょうがないだろ。まさか、明星に核ミサイルぶっ放すわけにもいかないし」

「それはそうですが新兵器を試射もしないで最大出力で放つなんて・・・」

「まあ、その結果がこれだな」

日向は苦笑しながら凛を見た。

あちこちが傷だらけだが致命傷ではない。

「しかし、荷電粒子砲・・・とんでもない欠陥兵器ですね」

「最大出力で撃たなければいいだけの話だろ?」

「最大を越えてました。沖縄中の電力と大和の核融合、紀伊の核融合炉、加えての10%ほどあれからももらいましたが・・・」


「本当に無茶ばかり」

古賀の言葉に同意するように凛がつぶやいた。

傷だらけで息が乱れているのは動力が空に近いからだ。

とはいえ、荷電粒子砲の欠陥が浮き出た形になったわけだ。

最大出力の荷電粒子砲の破壊力はおそらく海上の艦隊を薙ぎ払うことも可能だろう。

だが、それを引き換えに砲身が溶け落ち防御兵器を始めとする他の兵器も一切使えなくなる。

いや、正確には動くぐらいならできるだろうが戦闘力は大きく落ちることに変わりない。

ドイツとの戦いに戻ってもこの荷電粒子砲の最大出力は撃つなら紀伊の戦闘能力喪失を覚悟して撃たねばならないだろう。

「荷電粒子砲のデーターと合わせると80%ぐらいなら砲身が溶け落ちることはないけど今のような100%を超える出力だと砲身が持たないわけですね」

砲雷長の言葉に日向は頷いた。

「この最大出力撃ちまくれればドイツとの戦いも楽になるんだろうがな・・・」

日本で行われた実験でもその懸念はあったわけだが残念ながら今の日本には荷電粒子砲を最大の出力で連発する技術力がないというわけだ。

「でもこれがあれば、みんなを救える」

乾いた血濡れた右手を凛は握りしめた。

今、昭和のみんなはどうしているだろうと凛は思った。

あの男、アドルフ・フレドリクは日本へ侵攻するのは1年先だと言っていたが敵の言葉を完全に信じることなどできない。

紀伊は一刻も早くあの時代に戻る必要があるのだ。

「あれも、今回の件で理解しましたがとんでもないものです。耐えられる砲身さえあれば島1つくらいなら消し飛ばせるんじゃないかと思いますよ」

「天城博士の言葉でいうなら理論上は可能ってことらしいがもはや、それは荷電粒子砲じゃないな」

日向はそう言いながらモニター類を見回す。

「ま、とりあえず修理だな。事後処理もしないといけないがその辺は藤堂大統領に任せて・・・」

日向がそこまで言った時レーダーを見上げていた兵が叫んだ。

「大変です日向長官!未確認機、1機が本艦に向けて接近中です」

「何!なんで今まで気付かなかった・・・そうか・・・」

荷電粒子砲を撃った結果、予備電力で動いている通信やレーダーが機能を低下させていたのだ。

それに、未確認機にはレーダーをかいくぐるステルス機能があるのだろう。

紀伊の艦内に警報が鳴り響く

このタイミングで仕掛けてくる可能性があるのは敵だけだ。

「対空戦闘用意!」

「本艦より南に200キロ!接触まで2分!」

「近隣の部隊に救援要請!」

日向は耳のインカムのボタンを数回押す。

「格納庫!敵機が接近中だ!出せる戦闘機はあるか?」

「無茶言わんで下さい長官!少なくても20分以内に出せる戦闘機はありません!」

「分かった」

敵が迫ってくる。

本来なら沖縄にスクランブルのため待機している戦闘機があるはずだが明星の破片迎撃準備のため出払ってしまっていた。

紀伊の艦載機も同様で残っているのは修理中のハリアー1機だけだ。

琉球基地にも迎撃ミサイルはあるが先ほどの荷電粒子砲発射で電力が死んでおり満足に反撃もできないだろう。

紀伊と大和はアイギスを張ることもミサイルを撃つこともできないただの的だった。

歩兵携行用の対空ミサイルならばあるがあのロシアの新型相手ではどうにもならない。

「日向長官!近隣の部隊に救援要請しましたが対空装備を積んだ一番早い紫電でも15分はかかります!」


遅すぎると日向は思った。

15分もあれば基地の機能や紀伊や大和に多大なダメージを与えることことは十分可能だ。

まして、今は紀伊も大和もケーブルでつながれている状況でそれを狙われたら・・・

「ケーブルの切り離しを急がせろ。機関室!アイギスを張るだけの電力だけでも確保できないか?」

「無理だ長官!アイギスはあきらめてくれ!」

機関室からの言葉に日向はすぐに頭を切り替える

「接触まで30秒!」

紀伊も大和も完全には改装が住んでいない。

反撃の手段はない・・・

こんなところでと凛が思った時だった。

頼もしい声が彼女の耳に飛び込んできた。

「こちらブルーインパルス3!現在ファントムを追尾中」

日向ははっとして、凪に指示を飛ばした。

「紀伊よりブルーインパルス3、本艦及び大和、琉球基地は反撃能力を失っている。ファントムの撃墜を頼みたい」

「了解」

凪はGに耐えながら更に震電改を加速させる。

レーダーに頼らずに目だけで前方を見ていると何かが光った気がした。

「凪、ファントムを確認」

「了解!久遠」

すでに両者は沖縄本島上空に迫っていた。

音速を超えた両者の距離はもう、ほとんど無いと言っていい。

「っ!」

両者が直線に並ぶ直前に震電改からレーザーが発射されるがSU50はそれを交わしてしまう。

「そうか、大気圏内じゃ・・・」

宇宙空間と違い真空ではないのでレーザーの威力や射程が減退してしまうのだ。

そして、レーザーにはまっすぐにしか進まないため、軌道が読まれやすい。

SU50はこれまでの戦闘からそれを理解していた。

両者が沖縄上空に差し掛かった。

いたとSU50は思った。

基地の端にある2つの巨大なドッグ。

天井が開き溶け落ちた砲を空に向けて沈黙している巨大戦艦だ。

あれは災いを呼ぶ船だとSU50は考える。

レーザーの出力を最大に設定しどこを攻撃すれば致命的なダメージを与えられるかを考える。

結果、巨大戦艦に繋がれたケーブルが有効とSU50は考え攻撃のための軌道に入ろうとするが背後に迫った戦闘機のレーザーに邪魔される。

しつこい奴だとSU50は思った。

右に左に機動し、相手を不切ろうとするが振りきれない。

ならばとハイGバレルロール、地上激突寸前の機動と恐ろしい機動を繰り返すが相手はついてきて攻撃を浴びせてくる。

なんなのだ奴はと思った時、光がSU50の翼を切り裂いた。

爆発の閃光の中SU50は思った。

これが死なのだと・・・

                 †

爆発してばらばらになったSU50を見ながら凪は心底ほっとした。

恐ろしい相手だった。

「ブルーインパルス3より紀伊。目標を撃墜しました」

「ブルーインパルス3よくやってくれた。着艦の必要があるなら手配するが他の部隊が来るまで警戒を頼む」

「了解」


通信が終わり震電改を少し傾け燃えているSU50を見ながら久遠に話しかける。

「ねえ、久遠」

「なんでしょう凪?」

「いつの日か空を飛ぶのは人間じゃなくてあんな機械になるのかな?」

人類の戦いはやがて戦闘機でさえ無人機が占めるようになっていくのかもしれない。

ドイツのヴィゾフニルや今の相手がその序章ともいえる。

いつか、パイロットは必要なくなる。

それはとても寂しいことだと凪は思った。

「そうかもしれませんね」

久遠もまた、SU50の残骸を見下ろしながら言った。

軍隊で一番コストのかかるのはやはり、人間なのだ。

1人のパイロットを育てるのは膨大な時間とお金が必要だが無人機ならそれがいらなくなる。

そして、パイロットが死ねば周辺に対して影響が出るが無人機ならほとんど出ない。

上からすればこんな便利なものはないだろう。

「ですが」

久遠は続ける。確信していることがあるのだ。

「無人機はエースパイロットに勝つことは絶対にできません」

先代と今の自分のパイロットは無人機なんかに絶対に負けないと久遠は確信している。

「うん、私も無人機なんかに落とされたくないし負ける気もない」

確かに手ごわい相手だった。

長時間の戦闘でようやく落とせた相手だがなぜか、負ける気は一切しなかった。

恐ろしい機体であるが絶対に負けないと確信できるのだ。

「あの人だってそう思うと思う」

黒い戦闘機に乗り凪とソラを落とした世界最高のパイロットだって無人機には絶対に負けないだろう。

「あの人とはエーリッヒ・ハルトマンのことでしょうか?」

「うん、敵だけど私は尊敬してる」

「尊敬?恨んでいるのではないのですか?」

「うん」

確かにハルトマンはソラを殺した相手だ。

だが、あれは凪の技量不足と無理を押した出撃が原因だ。

ソラを殺したのはハルトマンではなく凪自身。

「私の腕が悪かったからあの人に負けた・・・だから、次は勝ちたい」

憎悪ではなくエースパイロットして彼に勝ちたいのだ。

きっと、ソラもそんな凪がいいと言うはずだ。

                  †

さて、その後の動きだが

ロシアは直ちに原因究明を約束したが関係者の多くは謎の死を遂げるか行方不明となった。

日本を始めとする各国は国連で痛烈にロシアを批判したがロシアは原因は調査中であり答えることはできない。しかし、ロシアにとってもこれは遺憾なことであり再発防止を約束するの1点張りであった。

そして、表と裏の件でも日本やアメリカは手の内をさらすことになってしまったのが今回の件だ。

アメリカは公式では宇宙空間で戦える戦闘機はないと言ったのにそれを翻してF22ラプターD型を派遣している。

日本は日本で荷電粒子砲で巨大運搬船を消滅させたため各国に質問される事態となってしまった。

つまり、事後処理は各国に取って頭の痛い問題となり混乱は続きそうだった。

ちなみにSU50の残骸は回収され解析されることになるが損傷がひどく、得られる情報はわずかであった。

ロシアはSU50の返還を要求しアメリカは日本に共同調査を持ちかけたが日本はアメリカには拒否を通達し、ロシアにはSU50を徹底的に調べてから返却することになる。

そして、物語の舞台は一時日本にとって絶望の過去昭和に戻る


作者「……」


艦魂達「……」


黙祷終了。


作者「1日遅れですが8月15日は日本の終戦記念日です。日本を守るため散った英霊に深く感謝いたします」


炎樹「だが草薙、お前達の戦争は終わってないだろう」


作者「ええ、天皇陛下の玉音放送で終わりは伝えられましたが8月18日にソ連が占守島に攻め寄せてきます」


炎樹「卑怯だな」


作者「しかし、占守島守備隊は奮戦しソ連軍を島から蹴り落として勝利します」


炎樹「正確には殲滅可能な状態になったが停戦命令によりそれをしなかったわけだな」


作者「最後には守備隊は武装解除しますが終戦記念日の後に起こったこの戦いを知っている人は少ない。いや、太平洋に興味もないしまして、第二次世界大戦はアメリカと協力して戦ったなんていう人達に限りますがね」


炎樹「作者の世界の今のアメリカは味方だがかつては敵国だった。それすら忘れているというんだな?」


作者「今や私達も中国、韓国という敵に拳を振り上げられてますが日本は決して引いてはならないと思ってますよ。太平洋戦争のことを調べてもそう言えます。中国の属国になった後の悲惨さはチベットやウイグルが証明してますからね」


炎樹「…」


作者「さて、次回ですが記念話やりますから物語追ってる人は必ず飛ばしてくださいね。警告はしました」


炎樹「ふむ、ところで作者」


作者「はひ?」


炎樹「貴様1ヶ月に1回更新する話はどうした?半年たってるぞ」


作者「ひっ!忙しいの」


炎樹「ほぅ、二次は書けても時間はないと言うんだな?」


作者「に、逃げろ!」


炎樹「待て貴様!今日こそ海軍根性叩き込んでやる!」


作者「次回は守りますから助けてぇ!」


スバアアアアアア


草薙の首が宙を舞う

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ