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第299話 破滅の鉄槌

人類は火星にまで進出し、資源を地球に運ぶ運搬船を運用していた。

その名は『明星』。

直系2キロもの超巨大資源運搬船である。

危険と隣り合わせの宇宙のため、近年では無人化され、地球と火星を行き来している。

「・・・」

明星はゆっくりと、だが確実に地球に向かっていた。

そのコントロールはすでに地球側になく、周りを旋回する数機のAIが掌握していた。

日本、アメリカにダメージを与えることだけを考えて明星を従えSU50達は地球を目指す。

青い星がだいぶ大きく感じられる頃、AIに警告が走る。

何者かがこちらに向かっている。

「・・・」

AI達は直ちに迎撃のための行動に入った。

                 †             

「ふぅ」

大気圏突破の衝撃も終わり大分、体が軽くなったと思った時、体がわずかに浮いていることに凪は気づいた。

「こんな時じゃなかったらなぁ」

宇宙遊泳なんてこともできただろうとベルトに固定されている体を見て思った。

そして、顔を上げるとその光景に凪は圧倒された。

「わぁ」

一面に輝く星星の光、地球から見上げるものと段違いの光景だった。

その光景は幻想的ともいえる光景である。

「ブルーインパルスリーダーより各機へ。状況を報告せよ」

「ブルーインパルス2異常なし」

「ブルーインパルス3異常ありません」

「ブルーインパルス4問題なしだ」

隊長の美夜の声と共に、藤堂、凪、ドミニクが返答する。

ちなみにリーダーが美夜、2が藤堂、3が凪、4がドミニクである。

ブルーインパルスのコールサインは彼方が決めたものである。

青は震電改を象徴するものだし、ブルーインパスはかつての航空自衛隊の花形の名前でもある。

この世界の日本空軍にはブルーインパスはないがそれに変わる名前で存在している。

「みんな問題ないわね。こちら、ブルーインパルスリーダーよりホワイトバード。大気圏離脱に成功。次の指示をお願いします」

全機の通信機越しに地上から声が返ってくる。


「ホワイトバード了解。そちらの位置は把握している。明星はブルーインパルス各機より月方面より地球を目指している。月を目指して

飛んでくれれば補足できるはずだ」

大統領官邸の地下にある危機管理センターからオペレーターの声が返ってくる。

大統領官邸のコールサインはホワイトバードである。

「ブールインパルスリーダー了解。聞いてたわね月方面に向けて加速するわよ」

宇宙空間でも圧倒的な存在感を持つ月を凪は見ると機体を加速させる。

「機体正常。問題なし」

「うん」

久遠の声に頷いてから普段と違う環境に凪は慣れようと務めた。

外は真空で無重力だ。

大気圏内の戦闘とはまるで違う機動が求められる。

もちろん、シュミレーターで訓練はしていたが宇宙に直接あがるのは始めての経験である。

「接敵まで30分ってとこかしらね」

美夜が計器をいじりながら言った。

「それぐらいだね」

藤堂と美夜の会話が聞こえてくる。

「宇宙空間の戦闘なんて初めてだがお前ら大丈夫かよ」

「誰に言ってるのよ」

「そうだね。僕らより自分の心配したら?」

「こいつらひでえ・・・凪ちゃんなんか言ってくれよ」

「ドミニクが一番心配です」

「ドミニクさんが1番心配だって久遠が・・・」

「うおおお飛魂にそういわれると自信なくなりそうだ・・・」

「はいはい、じゃあ、最終確認しとくわよ」

ドミニクを無視して美夜が話を進める。

「敵の総数は情報では5機。しかも、全てがエース級の腕前を持つ化け物AIを持ってる」

「・・・」

AIはエースパイロットには適わない。


それは、確信にも近い。

だが、AIが日本空軍の紫電を落としていることも事実なのだ。

「現場での戦闘可能時間は5分。理想は3分以内に全て落とさないといけない。それ以上の遅延は機動エレベーターで待機している技術陣が突入不可能に

なるからね」

5分でエース級の戦闘機5機を撃墜。1機あたり1分しかない

通常なら正気の沙汰ではないが全員が教導隊の腕前を持つからこそこの作戦は認可されたのだろう。

あるいは、駄目もとの作戦とも言えなくもない

「5分か・・・無茶苦茶な時間だぜそれ」

これが大気圏内であっても簡単ではない任務。

まして、ここは外は死の世界の宇宙なのだ。

「やるしかないのよ。やらなきゃ地球が終わるだけ」

アイギスを張ったまま地球に激突すれば一切の分解なくその巨大な質量はとてつもない被害をもとらすことは

言うまでもない。

「くそ、ハードな数分になりそうだぜ」

「嫌なら帰れば?」

「帰らねえよ!そんなことしたら彼方ちゃんに殺される!」

そうだろうなぁと凪は怒り狂った彼方にドミニクが踏まれている光景を想像した。

それも、地球あってのことだが・・・

「数はこちらが1機少ないけど2機1小隊で当たるわよ。1機落としたらそれぞれ1対1に持ち込んで各個撃破1人30秒で平らげて技術陣を迎えること」

「「「了解!」」」

1対1の戦いは経験値も高い。ハルトマンや数々の戦場でそれを凪は経験していた。

それにしてもと凪は思った。

「美夜・・・」

緊張してると凪が言おうとした時

「じゃあ、美夜ちゃん勝負しようか」

「はぁ?こんな時。何言ってるのよ真也」

「何機落とせたかで判定。負けたら夕食を持つってのでどうかな?」

「そんな勝負なんてしてる場合じゃ・・・」

「負けるの怖いのかな美夜ちゃん」


「ちゃんっていうな!いい度胸じゃない真也!今日こそあんたに勝って夕食をおごらせてやるんだから!」

「アハハ、無理だよ美夜ちゃんじゃ」

「ちゃんっていうなぁ!」

「もう、お腹一杯だぜ夫婦漫才は」

「だ、誰が夫婦よ!こいつと夫婦なんて冗談じゃないわ!」

ドミニクにさえ呆れられる言葉に美夜が反論する。

きっと顔真っ赤だろうなぁと凪は思った。

「お似合いです」

「うん、私もそう思うよ久遠」

「な、凪!あんた久遠と何話してんのよ!つうか真也!あんたもなんか言いなさいよ!」

「そうしたら藤堂美夜だね美夜ちゃん」

「くっ・・・そうやってからかって!いい度胸じゃない!やってやるわよ勝負」

「それでこそ美夜ちゃんだ」

「だからちゃんっていうなぁ!」

通信越しに怒鳴る美夜の緊張は解けたようだ。

藤堂はそれを分かって美夜と話したのかも知れない。

「真也さん」

「ん?なんだい?凪ちゃん」

「いえ、なんでもないです」

聞くのはよしておこうと凪は思った。

「ホワイトバードよりブルーインパルス各機」

そんな時、地上から通信が入ってくる。

「そろそろ、目視で確認できるはずだ。状況を報告せよ」

「ブルーインパルスリーダー了解」

宇宙空間に対応した全方位レーダーには最初から巨大な光点が表示されている。

その方角に目を向ける。

明星は黒に近い色が大半を占めており目視では確認しにくく、ある程度は接近しないと見えなかった。

美夜達は目にその姿を捉えようと目をこらす。

「光を確認」

久遠が言い凪も同じ光を目にする。

明滅しているそれは・・・

「戦闘中!? 宇宙空間で戦える戦闘機は私達とあのファントムだけじゃ・・・」

「多分だけど、アメリカかEUだろうね」

藤堂の言葉に美夜は頷いて

「ブルーインパルスリーダーよりホワイトバード。明星周辺で戦闘らしき光を確認した。」

「ホワイトバード了解。可能なら所属を明らかにし不可能なら、ファントム撃滅を優先せよ」

つまりは、味方なら無視しろということだ。

宇宙空間運用可能な戦闘機は現在地球にはほとんど存在していないことになっている。

地球の危機といって秘密を暴露する気にはならない国家も当然あるだろう。

「ブルーインパルスリーダー了解」

通信を切って美夜はぺろりと唇をなめる。

「じゃあ、みんな行くわよ!先に戦闘しているどこの国かの戦闘機は基本無視。ファントムを5分で片付ける!」

「「「了解!」」」

いよいよ地球の命運をかけた戦いが始まる。

「緊張してる?」

久遠の声が聞こえてくるが凪は首を横に振った。

久しぶりの本気の命をかけた戦場。

怖いのではなく凪は高揚感に満ちていた。

そして、もう一つの決意。

「久遠私はもう二度と私の翼を失わない」

その決意を口にしさらに言葉を続ける。

「だから行くよ。久遠、引退するその日まで一緒に飛んで一緒に戦おう」

かつて、ソラに言った言葉に少し言葉を付け加え凪は言った。

「はい凪」

久遠は短くそれに答えてくれた。

「行くよ久遠!」

他の機体が加速し、震電改もそれに、続き加速し始めた。

                         †

こんな馬鹿なことがあるものかと合衆国航空宇宙軍アレクサンダー少尉は思った。

「サーカス2助けてくれ!ファントムがけつに!振り切れない!」

サーカス3は訓練どおりの機動でファントムをやり過ごそうとしたが宇宙空間という慣れない環境のため

容易に振り切ることができない。

「待ってろ!今・・・」

「うわあああああ」

宇宙空間の一角に紅蓮の炎が広がった。

音もなく光だけが瞬き、残骸が四方に飛び散った。

「サーカス3ぃ!ちくしょう!残った機は何機だ!」

「ブレイズ3、4!それと我々しか残っていません!」

アレクサンダーは悲鳴を上げるように叫んだ。

彼らの乗機は黒く塗りつぶされた機体だ。

F22Dラプター宇宙戦仕様。

先行量産型で秘密裏に量産されていた12機が今回のファントム迎撃に宛がわれた。

アメリカの意地という訳で日本や他国にこれの存在は明かしていなかった。

宇宙戦仕様のラプターは大気圏内での戦闘より宇宙空間での戦闘を重視した機体だったがファントムは最初の1機を失ってからは

信じられないような機動でアメリカ軍を圧倒していた。

「全員!俺の指示に従え!数は互角だ!押し返しようはある!」

「ぶ、ブレイズ3了解!「了解!」

動く明星の間からファントム2機が飛び出してくる。

「サーカス2ついて来い!はあああ!」

恐怖を気合で塗りつぶすように叫びながらラプターを加速させ正面からブライト中佐が機銃による攻撃を試みる。

相打ち覚悟の攻撃だ。

しかし、ここが宇宙空間であることをブライト中佐はわずかに失念していた。

「隊長!上です!」

通信越しからの声にブライトは上を見上げた瞬間、明星の上部から新たに飛び出してきたファントムの光に貫かれブライトのラプターが爆散する。

「た、隊長!」


アレクサンダーはもはや、勝ち目のないと思い始めていた。

数も下回り残された戦力は3機。

ピー!

警告音が鳴り響きアレクサンダーは機体を右に傾けて光を交わした。

「サーカス2!ここはもう駄目だ!1度引いて!」

「駄目よブレイズ4!私達が引いたらこのでかぶつが地球に!」

「だがこのままじゃ・・・あああ!」

光がブレイズ4を貫き再び宇宙空間に爆発が起こった。

「ぶ、ブレイズ3!この野郎!」

「ま、待て!ブレイズ3!うかつに攻撃するのは危険だ!」

アレクサンダーは慌てて声を張り上げるがすでに遅かった。

機銃攻撃を難なくかわしたファントム達は連携し、その光でブレイズ3の機体を貫いた。

「そ、そん・・・」

ブレイズ3の声が耳に響き機体が爆散する。

残された機体はアレクサンダーのラプターのみだ。

ファントムが散会し包囲網を狭めてくる。

1機のファントムの光がアレクサンダーの翼をかすめ衝撃が走った。

機械が警報を鳴らす。

「い、嫌だ死にたくない!」

もはや、逃げることは叶わないだろう。

脱出しても救助される見込みはなく宇宙空間をさ迷うだけ

それでも、アレクサンダーは神に祈りながら操縦する。

そして・・・視界にファントムが飛び込んでくる。

その位置はこちらを撃墜するのは絶交の位置取りだ。

「ひっ!」

アレクサンダーが死を覚悟したとき

上部から細長い光がファントムを貫いた。

ファントムが爆発するのを信じられないようというように見て上を見上げた。

瞬間、アレクサンダーの目に飛び込んできたのは青い戦闘機と翼の日の丸だった。

「に、日本軍か?」

アレクサンダーがそういった時通信が飛び込んできた。

「こちらは、日本空軍教導隊所属、風祭美夜中尉。そこの戦闘機!一旦下がって体制を立て直しなさい!ここは、

私達が引き受ける」

「り、了解!1機だけは撃墜したはずだ!後は頼む」

すでにラプター隊は壊滅状態だった。

機体も損傷している。

アレクサンダーは直ちに離脱を始めた。

          †

アレクサンダーの離脱を横目に残りの敵を掃討するために4機は散会した。

相手は残り3機だけで数は上回る。

「なんて大きさよ」

美夜は横目に明星を見ながら機体を滑り込ませるように逃げていくファントムを追った。

全方位をカバーできる宇宙戦用のレーダーにはファントムは映っていない。

これはステルス機の特徴で、肉眼で相手を探すしかない。

「・・・」

美夜達はアイギスを起動させて敵のレーダーから自機の姿を消す。

これで、相手とほぼ互角の条件で戦えるはずだ。

ファントムが明星の影に逃げ込むのを美夜は確認するとアイギスを張ったまま追撃し影の部分に突入する。

現在、ファントムは新手を確認すると明星を目くらましに姿を隠すような行動をとっている。

巨大な明星は動いているのでそれを計算に入れて機動を取らなければならない。

おまけに実戦では始めての宇宙で時間もほとんどない。

本当に無茶苦茶なこと言ってくれると美夜は思った。

光神がファントムが逃げ込んだ影の部分に入る直前、美夜は右に操縦根を切った。

ファントムのレーザーが同時に光神の右側を通り抜ける。

「真也!」

美夜は通信越しに怒鳴ると光神から見て上空からファントム1機が滑り込むように降下し、攻撃に失敗したのを悟ると回避行動をとった。

しかし、それを美夜の後ろに続いていた紫電改がレーザーを発射しそれを貫くとファントム1機が爆散した。

「今には譲ったのよ真也!」

「ありがとう」

ゆずるんじゃなかったかと美夜は思いながら次の相手を探すために意識を集中させた。

               †

一方、震電改とヴィント・ドラッへは美夜達とは逆の方角に逃げたファントムを追っていた。

明星を盾にレーダーをかく乱しわずかにもレーダーに映らないように逃げる相手を見て凪は早く落とさないと

まずいと思った。

「ブルーインパルス4!右側から回り込んで!」

「了解!」


ドミニクが背後にいるのを感じながら凪は震電改を加速させた。

Gが体を襲うが震電改は全力で逃げているはずのファントムをあっさりと捕らえた。

ドミニクを警戒しているのかファントムは明星の影に逃げ込もうとした瞬間、凪はレーザーを発射する。

ガンポッドに似たものから光が発射されると明星に直撃するぎりぎりのところでファントムに直撃した。

黒煙を吹き出したファントムはそのまま、くるくる回りながら宇宙空間で爆発を起こして戦闘能力を失う。

「ひゅーさすが」

ドミニクの声が通信越しに聞こえる。

「久遠、もう1機は?」

「確認できません」

久遠の声を聴いた瞬間

「ブルインパルスリーダーより各機へ!こっちは1機撃墜!」

「ブルーインパルス3!1機撃墜しました!」

アメリカ軍との戦いで数を減らしていたファントムはこれで残り1機

「凪作戦、可能時間は残り2分です」

「ホワイトバードよりブルーインパルス。敵の掃討はまだか?」

久遠の声の後に地上から少し焦ったような声が聞こえてくる。

「ブルーインパルスリーダーよりホワイトバード、敵残存数1機だが、確認できない」

美夜は目で最後の1機を確認しながら言った。

「ホワイトバード了解。1秒でも早く敵を掃討せよ」

「ブルーインパルス了解」

簡単に言うなと美夜は心の中で怒鳴りながら敵を探すが時間だけが過ぎていく。

2分なんて地上にいればあっという間の時間である。

見ると地球が少し大きくなってきたのが確認できた。

残るファントムは1機。

だが、最初から確認できていたわけではない。

あるいは、この宙域に存在していない可能性もあった。

「ブルーインパルス各機へ!ファントムは確認できないの?」

その答えは全機確認できないと言う返答だけだった。

いないと判断して技術者を乗せたシャトルを突入させるという判断を下すか難しい選択を地上では強いられた。

                †

「大統領」

危機管理室で全員が藤堂大統領の方を向いた。

技術者を乗せたシャトルを突入させるかどうかは藤堂の判断にゆだねられる。

明星を止めるための時間は残り1分を切っている。

「・・・」

わずか3秒、藤堂大統領は目を閉じると決断した。

「シャトルを明星へ。ブルーインパルス2機はシャトルの護衛。残り2機は引き続き探索を続けよ」

命令が伝達され、さらに藤堂は命令を追加した。

                    †

同時刻、太平洋

「長官、藤堂大統領から迎撃準備の命令が届きました」

機動戦艦『長門』のCICでに日本連合艦隊司令長官大熊 啓大将はその報告を聞いて頷いた。

「全艦砲撃用意!」

「全艦砲撃よーい!」

その海域にいる機動戦艦は2隻『長門』『陸奥』である。

いずれも、大東亜戦争を戦った戦艦の名を受け継いだ新造艦でその全てが46センチ速射砲を装備している。

現在の連合艦隊司令長官の立場である長門の艦魂は睨みつけるように空を見上げ、日本刀に手を置いて居合いの体制をとった。

「・・・」

必ず殲滅するという誓いを胸にその瞬間を彼女は待った。

それは、陸奥の艦魂も同じであり各海域に散っている機動戦艦の艦魂達も時同じくその瞬間を待っていた。

自分達に出番が回ってこないことを祈りつつもこの地球を守る最後の盾という自覚を持ち彼女達は

己の武具を構えその瞬間を待った。

                    †

このまま何事もなければいいと凪は思った。

技術者達を乗せたシャトルはまもなく明星に取り付く。

彼らが内部で作業できる時間はわずか30分しかない。

それ以上遅れればもはや、明星の大気圏突入は止められない。

ファントムは仕掛けてくる。

凪は最悪の事態を想定しつつシャトルを護衛する。

「・・・」

緊張のためかドミニクも何も言わずに成り行きを見守っている。


美夜達は明星の周りを探索しファントムを探しているが発見の報告はない。

シャトルが明星の速度にあわせて徐々に減速を始める。

緊張が頂点に達しそうに鳴った時、警報がなった。

レーダーに映っているのは小さな岩石だ。

だが、突如、その影から1機の戦闘機が飛び出してきたのだ。

「しまっ!」

止めるまもなくファントムはレーザーを容赦なくシャトルに向けようとしている。

「くっ!久遠!アイギス!」

凪は計器を叩きつけるようにいじるとシャトルの前に出た瞬間にレーザーがアイギスに直撃しまばゆい光を巻き釣らした。

ファントムのレーザーが震電改のアイギスの出力を上回れば撃墜される。

だが、凪は親友が作ってくれた戦闘機の力を信じてシャトルの盾になった。

「くっ!」

「凪ちゃん!」

ドミニクのヴィント・ドラッへがレーザーをファントムに向かい発射すると同時にファントムはそれを回避しつつ攻撃を

中断した。

結果的に震電改は無傷であったが

「シャトルが・・・」

久遠の悲痛な声を聞いて凪も同じような気持ちになる。

シャトルは回避のために明星から大きく離れてしまっている。

再度の接触は時間的に不可能だった。

後は、機動戦艦に全てを託すしかない。

だが、あの機体だけは撃墜しなければならなかった。

「行くよ久遠!」

「はい!凪」

凪がファントムを追おうとした瞬間、ファントムは加速しながら明星を追い抜くように地球に向かった。

同時に明星の背後から光を感じてそちらを見て凪は驚愕した。

メインの噴射口から炎が噴出している。

加速のためではなく徐々に機動が変わっていっているのだ。

地球からそれるのかと淡い期待を抱くが状況は絶望的だった。

地球側の数に限りある機動戦艦配備はそのまま突っ込んできた場合を想定している。

つまり、軌道変更されてしまえば理想的な位置での迎撃は非常に困難になる。

「お、おいこれまずいだろ」

ドミニクの声を聞きながら凪は地球を見て明星を見た。

あらゆる状況を考えるが明星を止めることはできない。

「どうすれば・・・」


どうすればいいのか分からない。

                    †

「技術陣の突入失敗!明星は軌道変更し地球に突っ込んできます」

危機管理センターでは悲鳴のようにオペレーターが叫んだ。

「このまま、突入してくればどこに落ちる?」

藤堂は目を閉じて言った。

「落下、予想地点は・・・太平洋種子島沖合いと予想されています」

「その周囲に機動戦艦は?」

頭を抑えながら大臣の一人が聞いた。

「1番近い機動戦艦は長門、陸奥です!しかし、烈空弾による迎撃地点には間に合いません」

絶望感が危機管理センターを襲う。

「このまま明星が突っ込めばどうなる?」

聞くまでもない。

巨大な大津波が発生し日本を飲み込むだろう。

そして、烈空での迎撃は出来ない。

避難は無駄だろう。

だが、希望はある。

藤堂は日本地図の下。

沖縄を見てから静かに目を閉じた。


作者「地球\(^o^)/」



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