第295話 紀伊・大和・震電改戦闘準備!
「久遠?それは私の名前でしょうかマイマスター」
「うん、嫌?」
「いえ、うれしいです」
無表情ながらわずかに喜んでいる目の前の少女に凪は言う。
「ねえ、久遠」
「はい?」
無表情のまま、久遠は首をかしげた。
「マイマスターって言い方じゃなくて凪って呼んでくれないかな?」
「それは命令ですか?」
「ううん、違うよ。私がそう呼んで欲しいっていうお願い」
「・・・」
久遠は少し考えるそぶりを見せてから
「分かりました凪」
もしかしたら・・・凪は思う。
ソラにそう呼ばれていたから久遠にもそう呼んで欲しいと思っているのかもしれない。
日本を守るために太平洋の空で散った大切な親友
もう、絶対に落とされはしない。
彼女が言ってくれた私のエースという言葉。
私はもう、絶対に負けたくない。
「ありがとう久遠」
「・・・」
久遠はわずかに口元を緩める。
ちょっと感情表現が苦手なのかもしれないと思った時
「凪!」
声に振り向くと彼方たち4人が部屋の中に入ってきた。
「どうよ! 私の最高傑作!」
「まだ、乗ってないからわからね・・いで!」
「殴るわよドミニク」
「もう殴ってるじゃねえか彼方ちゃん・・・」
頭を抑えながらドミニクが言う。
「へぇー!これが最新鋭戦闘機!凪!名前なんていうのこれ?」
「え?震電改って言うんだけど」
「震電改!へー!へー」
美夜は興味津々に震電改の周りを回る。
「あ!やっぱり可変翼なんだ!これはアイギスの発生装置ね!コクピットは・・・うわあ!複座式なんだ!ねえねえ!」
1歩間違えれば次世代機を奪われかねないのだが美夜は興味津々のようだった。
まあ、震電改のコストは大東亜戦争でいうなら大和級を作るようなものでとても不可能なレベルでつまり量産は不可能だ。
「美夜ちゃん。あんまりはしゃがないで凪ちゃんが困ってるよ」
「ちゃんっていうな真也! でも凪も対面したばかりなんでしょ?じゃあ、質問しても分からないか・・・」
という教導隊の2人を横目に彼方が口を開く
「で?凪飛魂はこの子にはいる?」
「うん、いるよ」
凪はまっすぐ久遠を見ながら
「久遠。蒼い髪の蒼い瞳の女の子」
「蒼い瞳?凪と同じ目の色じゃない。ふーん」
彼方には久遠の姿は見えないようだ。
飛魂は真のエースにしか見えない。
そして、宿る条件もエースと呼ばれるだけ相手を撃墜するという条件があるという話だ。
だが、なぜ久遠は生まれたばかりの震電改に宿っているのか・・・
それは分からない。
「ねね!凪!この子飛ばさないの?私の光神と模擬戦やろう!」
「美夜ちゃん。無茶言わないの。シュミレーターで慣らしはしてるけどまだ、実戦は無理だよ」
「そういえばそうよね・・・ってちゃんっていうな!」
がーと真也に殴りかかるが真也はひょいひょいとそれを避けている。
「アハハ・・・」
凪は苦笑しながらそれを見ながら久遠にちらりと視線を向ける。
「・・・」
久遠は無表情ながらもどこか笑ってるような感じだ。
仲良くなれそうだなと凪が思った時
「ちょっとごめん」
と彼方が通信が入ったのか右手でインカムのボタンを押した。
「はい?何よ今いいとこなのに・・・はっ?凪?いるわよ?・・・うん、追加装備は準備してるからできるけど?
・・・はぁ?・・・うん・・・なるほどいいわよ・・・それじゃまた後で」
ぴっとインカムのボタンを押してから彼方は笑顔を消した。
「紀伊に帰るわよ。凪はで。乗ってきた紫電で帰りなさい」
「え?」
思わず凪は久遠と目を合わせた。
「?」
久遠は蒼い目できょとんとした顔で凪を見ている。
「彼方、震電改じゃ駄目なの?」
「この子は輸送機に乗せていく。幸い大型の輸送機がこの基地にはあるからそれを使わせてもらう。1時間以内に搬入して離陸させるからね」
「んだよ飛ばしたほうが早いだろ?凪ちゃんも早く乗り・・・」
「っさいドミニク!連絡受け手緊急に調整しないといけない部分があるのよ。輸送機の中でやるわよ」
彼方は凪を見ると
「理由は後で話すとけど信じて凪。あたしはこの子を最高の状態で凪に渡すから」
「うん。分かったよ」
親友である彼女が言うのだ。
それに、特別がつくとはいえ階級は遥かに彼方が上。
下士官には言えないこともあるのだ。
「紀伊って・・・まだ、改装中でしょ?」
それを理解している美夜が指摘すると彼方は歩きながら
「これ以上は言えないわね。紀伊についたら教えてあげるわ。いいわね?」
緊迫した空気を感じる。
それほどの事態ということなのだろう
「了解」
話を打ち切るように藤堂が敬礼したので凪達もそれにに続いた。
行けば分かるのだ何が起こっているかが・・・
†
話は数時間前に撒き戻る。
まだ、ソ連軍機が韓国に入る前、琉球基地では日向や海道といった技術陣や実際に艦を動かす士官数人が紀伊に備え付けられた
武装の説明を行っていた。
「紀伊の改装は60%ほど完了しています。機関の核融合炉の稼動ができませんから海に出ることはまだ、出来ませんが今日の実験では荷電粒子砲の試射を行う予定です。まあ、試射といっても本当に発射するのではありませんけどね」
海道守の説明を聞きながら太いケーブルに直結された砲を見上げながら
「しかし、よかったんですか? 島内の電力を賄う大型核融合炉からエネルギーをもらうなんて。しかも、完成時の出力に近づけるために本土からも電力を供給してもらって」
「藤堂大統領の許可はいただいていますし、元々、この沖縄は大東亜戦争以後は東洋のパールハーバーと呼ばれるぐらい軍の影響力が
大きいですからね。それに、軌道エレベーターから経由されてくる電力もあるので島が停電になることはまずありません」
日向達のいた、日本では悲しいことに原発事故が発生してしまい大惨事を巻き起こしてしまった。
そのため、研究用や非常用のエネルギーとして核融合炉は日本の各所に存在している。
もっとも現在は軌道エレベーターからのエネルギー供給により、核融合炉の存在を疑問視する声もなくはなかったが・・・
「51センチ荷電粒子砲、我々は実験を重ねた結果荷電粒子砲という観点から七式荷電粒子砲、さらに訳して7式と呼んでますけどね」
「七式荷電粒子砲か!なんかかっこいいな」
日向も30近いというのに子供のように目を輝かせて荷電粒子砲を見上げている。
巨大な砲や最新兵器は男のロマンが詰まっているのだ。
もっとも、戦場の兵士は最新兵器よりも、信頼性が高い現状の兵器を好む傾向がある。
この七式荷電粒子砲も1年という無茶苦茶な期間で実戦投入可能なレベルで完成させようとしているのだ。
史実で言うなら信濃の時のようなものだが流石に、この世界ではあんな無茶はせず、急ぎつつ精密にことを進めていた。
口が堅いその道の玄人達を多く投入しているのも信濃とは違うところだ。
「ですよね!七式荷電粒子砲!七式って名前はやはり燃えますよね」
と海道と日向が盛り上がってるのを横目に紀伊の艦魂凜はため息をついた。
何が燃えるのやら分からず
「男って馬鹿みたい」
「まあ、そういうものではないよ凛。兵器の名前は結構重要さ。兵の士気にも影響するからね」
と、呆れた様子はないが面白そうに機動戦艦大和の艦魂、湊は言った。
「知ってるわよ。男って神話とか中二病的な名前のもの好むんでしょ?」
「まあ、否定はしないよ。でも、それでいいじゃないか海軍は旧国名などお堅いイメージだが空軍は紫電とか
光神とかいかにも中二病的な名前だからね。アメリカの戦艦だって最近では銀河の名前をつけてるしね」
この時代のアメリカもどこで間違ったのかアンドロメダやペテルギウスなど銀河の名前が機動戦艦につけられていた。
そういえば、ドイツも北欧神話から戦艦の名前をとっていた気がする
「男って・・・」
まあ、別に軍は男ばかりではないのだが・・・
「七式荷電粒子砲。51センチ砲クラスまで小さく出来たはいいが試射に失敗すればこの兵器は諦めるしかなくなる」
「うん」
紅茶のカップを片手に湊は言った。
そう、今回の試射を失敗すれば大和と同様にレールガンを主体とした兵装に転換されるのだ。
「成功してもらわないと困るのよ。フリードリッヒ・デア・グロッセに・・・エリーゼと互角に戦うにはこの七式がいる」
凛は彼女の姿を思い浮かべた。
直接会ったのはあの、山荘の1回だけだが、誰よりも印象に残っている。
どことなく影があったあの瞳。
過去に何があったのか・・・
凛はこの半年で真実に至っていた。
無論、詳細な部分は分からないが、アドルフ・フレドリクは最愛の妻を満州でソ連軍に殺された。
フレドリクの妻が艦魂を見れたかは定かではないがもし、見えていたなら予想は出来る。
それを知ることで凛の胸は痛んだ。
もし、自分達が戻らずにドイツ神聖帝国が世界制覇すれば・・・彼女の願いは適うのだろうか?
「・・・」
目を閉じてそれを考えるが凛は首を横に振る。
「ううん、それじゃ、あいつの願いは叶わない」
願いが適わない世界に意味はあるのだろうか?
「ん?」
湊は首をかしげて凛を見るが凛は顔を上げながら言う。
「私はエリーゼを止めないといけない。あいつの願いは叶わない夢だから・・・」
「それが君の答えというわけかい?うん、理解したよ」
100年という時を生きてきた艦魂の言葉は凛の心に深く染みた。
三笠と並び伝説の戦艦とまで呼ばれた英艦。
それが機動戦艦大和であり湊なのだ。
「湊・・・あり・・・」
感謝の言葉を湊に言おうとした瞬間
「何?それは本当か?」
「?」
恭介?と凛は首をかしげた。
いつになく緊迫した声だったからだ。
「分かった。CICに行く。みんなを・・・そうか、流石だな古賀」
日向がインカムのボタンを押してから周りを見渡す
「どうかしたのですか日向長官?」
海道が言うと日向は口を開いた。
「紀伊と大和に戦闘待機命令が出ました」
「なんですって!」
「藤堂大統領より直接です。現在全世界の機動戦艦、戦艦及び空母が出撃、あるいは準備を進めています」
「せ、戦艦や空母ですって?て、敵はなんなんです?」
どこの国でも戦艦クラスが動くのは穏やかではない。
ましてや、全世界の戦艦空母が一度に動くなど普通では絶対にありえない。
「詳しくは後ほど、敵は暴走したソ連製のAIです」
「む、無人機ですか?しかし、暴走とは・・・」
「詳しくは分かりません。ですが、数時間以内に海上あるいは地上にソ連の無人戦闘機が撃墜した衛星やその他の構造物が降ってくる可能性があります」
「!?」
海道は驚愕した。
数キロクラスの衛星や構造物が海上に直撃すれば大津波を発生させ沿岸は壊滅する。
地上に落ちれば砂埃を撒き散らし核の冬が来る。
太平洋に落ちれば日本は壊滅的な打撃を受けるだろう。
「じ、人類存亡の危機じゃないですか」
「七式の調整をお願いします海道さん」
「七式を使うことになるのですか?」
「いいえ、藤堂大統領は紀伊大和には出撃命令を出していません。もっとも出されても紀伊はまだ、動けませんが・・・万が一もあります」
「わ、分かりました」
海道が艦内に走り去るのを見てから日向はため息をついた。
「凛」
「何?恭介?」
いつになく真剣な声に日向は苦笑した。
「こうして、しゃべるのは久しぶりだな」
「う、うん」
三笠との対話で凜は覚悟を決めたが改装中ということもあり積極的には何もしておらず、話をするのも久しぶりだった。
「状況は分かるな?」
「うん」
自分の艦内に伝わる通信である。
当然、凛は事態を理解していた。
冗談抜きで日本滅亡の危機。
そして、過去に戻ることができなくなる深刻な事態だ。
「俺たちの出番はないと思うが神埼達が紀伊に戻ってくる途中だ」
「・・・」
「万が一の時は、俺たちがやろうぜ。なあ、凛」
「日向は昔のように笑うと凛は目を見開いてから
「当然よ二度と日本は滅ぼさせない!」
日向達の日本国は滅ぼされた。
だからこそ、この国、合衆国日本、そして大日本帝国を守り抜く。
そして、ドイツを・・・エリーゼを止める。
それこそが凛の決意だった。
そしてもう一つ・・・
「ん?」
「な、なんでもない」
顔を少し赤くして凜は転移の光に消え粒子となった。
作者「やっと会議が終わった」
凛「会議?」
エリーゼ「どうせアニメの絶対領域についてとかの会議ですね」
凛「うわ最低」
作者「違うわ!どこの世界にそんな会議があるんだよ!最近はかなり忙しかったの!会議の準備に!」
凛「ふーんあんたは家に引きこもって紀伊だけを書いてなさいよ」
作者「できたらやるよ!私は働いてるんだ!何もしなくても保険、税金税金税込!しかも増税!くそ!民主党め次回の選挙は貴様らの最後だ!いい加減子供みたいなことしないで解散しろ!」
凛「ま、あんたの世界の日本じゃ中華人民共和国とかいうゴキブリを料理に出してこれはネギだと言って口に放り込んで吐いたコックのいる国に負けるわね」
作者「民主党だと冗談抜きに危機感がありますよ。あんな野蛮人の国に負けたら日本は…」
エリーゼ「しかしあなたみょうに具体的ですね」
凛「料理にゴキブリとか日本じゃありえないわよ」
エリーゼ「もちろんドイツもです。ネフーィリアに、言わせれば劣等民族という言葉が相応しい」
作者「まあ、中華人民共和国の場合は政府が悪いだけで救いはあるんですけどね。ちなみに韓国は救いようがない駄目駄目です」
凛「び、ビックバンが韓国起源?なんなのこれ?」
作者「呆れてかわいそうな子を見る目になりますね」
凛「まあ、そんな国どうでもいいけど本編よ!」
作者「合衆国日本からすぐに戻らず大事件を起こしてみました!」
エリーゼ「読者にも言われましたが宇宙に行く気ですか?」
作者「ふっ、未来ではきっと大気圏を突破できる戦闘機ができるさ」
凛「それで、次回はいつに更新するのよ?」
作者「ん?来週の日曜かな?1週間後」
エリーゼ「ばつで…なんといいました?」
作者「え?1週間後」
凛「く、草薙あんた熱でもあるんじゃない?冷えピタ上げるわ」
作者「失礼な!更新は来週ですよ!」
エリーゼ「もはや末期なのですね」
凛「大丈夫よ妄想は衝撃で消し飛ばすから」
作者「へ?なんで紀伊とフリード・リッヒ・デア・グロッセの砲が私に!信じてください!更新は来週に!」
凛・エリーゼ「寝言は消し炭になって言いなさい」
作者「ぎゃあああああ!」
きゅあばああああああ