第289話 合衆国日本での日常
勝負しようか?
いきなり、言われ凪は言葉の意味を理解できなかった。
「あの、真也さん勝負って・・・」
「僕と君、どちらが最強のエースパイロットなのかの勝負だよ」
いきなりの勝負の申し出に凪は困惑した。
しかし、次の瞬間藤堂はふっと笑みを作った。
「嘘だよ。 君、まだこっちの戦闘機になれてないでしょ? そんな君を叩き潰しても面白くないからね。 それに・・・」
藤堂が見た方を凪も見ると数人のパイロットスーツを着た集団が歩いてくるところだった。
いずれも女性の集団だった。
「だから、さっきの模擬戦は・・・」
囲まれて歩いているのは・・・
「やあ、美夜ちゃんお疲れ様」
顔を藤堂に向けた美夜はぎろりと藤堂を睨みつける。
「真也ぁ! ちゃんっていうな! あんたなにさぼ・・・」
美夜と凪の目がある。
美夜の目がぱっと輝いて
「凪! 凪じゃない! ええ!どうしたの! ここに配属されるの!」
嬉しそうに凪に駆け寄ると凪の手をとってぶんぶんふる。
「ひ、久しぶり美夜。 うん、ここに、か・・・11か月配属されるの」
人目があるので過去に行くまでといえないのでそういうと美夜はツインテールをばっと揺らしながら藤堂を睨む。
「真也! 知ってたんなら教えなさいよね!」
「アハハハ、気付かない美夜ちゃんが悪いんだよ」
あれと凪は違和感を覚えた。
藤堂もさっきの反応からしてしらないはずだ。
ということはまた、美夜をからかってこの人はあそんでいるのだろう。
「あの、風祭大尉、藤堂大尉その方は?」
美夜と一緒に歩いていた3人の女性達が声をかけてくる。
「ああ、この子は神崎 凪中尉。 私の友達よ」
「か、神崎凪中尉です!」
敬礼すると3人の女性達も敬礼を返してくる。
「甲藤 美影少尉です!」
ポニーテールの女性が言った。
「新藤 歩少尉であります!」
「綾辻 美夏少尉です!」
「それで美夜ちゃん何してたの? 君、今日からしばらく休暇でしょ?」
「あんたもじゃない真也!」
「僕は今日は特に出かける用事もないからね。 基地で過ごすよ」
どうやら、藤堂と美夜は休暇らしかった。
「あ、そうだ凪、今日からの予定は?」
「え? 今日は、配属先の上司に挨拶して部屋に戻るだけだけど・・・」
「明日は?」
「えっと・・・決まってない」
よしと美夜は言うと後ろを振り返る。
「じゃあ、あんた達解散」
「はい!」
「お疲れ様でした!」
「失礼します」
3人のパイロット達が藤堂や凪に頭を下げてから廊下の向こうに消えてしまう。
「少しは使えるようになってきた?」
「うーん、どうかな? 私から言えばまだまだなんだけど・・・」
藤堂の問いに答える美夜。
「あの、美夜あの人達は?」
少しだけ、美夜より年上に見えたあの3人は美夜のことを上官してふつうに接していた。
「あの子達? 私の後輩よ」
「教導隊では教える立場の人間は自由とは言えないけどある程度教える人は選べるからね。 教えられる人間がずっと教導隊にいられるかどうかは別問題だけど美夜ちゃんの場合、実力が低い新人を引き抜いて教えてるからね」
「藤堂さんも誰か教えてるんですか?」
「僕?アハハ、まさか、そんなめんどくさいことしないよ」
凪の問いに藤堂は教導隊らしからぬことを言い笑う。
「真也は頼まれないと教えないけど鬼みたいに厳しいから大体のパイロットは逃げるわね」
と、美夜が補足する。
「まあ、それはそうと・・・」
美夜が荷物を抱え直すといきましょと凪を促すのだった。
それから、5時間後凪は今、東京にいた。
どういう手を使ったのかは知らないが凪の休暇は基地司令の許可によりあっさり降りた。
凪達は知らないが実は、独立機動艦隊の特にパイロット関連は行動を可能な限り束縛しないと約束があった。
と、それもあるがもう一つ、凪の上官になる人物は藤堂と美夜に彼女の面倒をみさせようとしていたので2人とも休暇なら行動を共にさせようと思ったのだろう。
さらに、違う思惑も動いているのだがそれは別の話。
「ああ、食べた食べた」
東京のとある定食屋から出てきた3人は町を歩きだす。
「ありがとうね美夜ちゃん」
「ちゃんっていうな! というか真也! なんで、あんたここにいるのよ! 基地にいるんじゃなかったの! 私が誘ったのは凪だけよ!」
「どのみち、明日には僕も東京に用があるんだよ。 それにこの子には興味もあるしね」
にこりと藤堂が凪に笑いかける。
「・・・」
その笑顔にドキッとしてしまう凪だが美夜は藤堂を睨みつけている。
「そ、それでこの後はどうするの美夜?」
慌てて凪は話題を変える。
「これから? うーんどうしようかな? あんまり時間もないし・・・」
タッチパネルの携帯端末をいじりながら美夜は言った。
時刻は午後5時、そろそろ空も暗くなりかける時間だ。
「今日はもう、解散でいいんじゃないの? 美夜ちゃん明日、蒼の園に行くんでしょ?」
「うーん、そうね。 できれば朝からいきたいし・・・ってちゃんっていうな真也!」
「蒼の園?」
凪は藤堂に聞いてみるが彼はふっと笑っただけで答えてくれなかった。
次の日、別行動をとると言う美夜についていくことになった凪はワゴン車に乗った美夜と共に林道を走っていた。
「真也さんはどうしたの美夜?」
「あいつは今日は来ないわよ。たぶん、 用事があるって言ってたから」
ツンテールは変わらないがGパンにシャツといった男風の格好をしている美夜が言った。
外を見ると木しかない。
道路はかろうじて整備されているがすれ違う車はほとんどなかった。
「その蒼の園ってどういうとこなの?」
昨日、藤堂にはぐらかされたので美夜に聞いてみると
「ああ、孤児院よ。 私の育った」
「ご、ごめん」
「アハハ、謝らなくていいわよ。 私、お父さんもお母さんのこと何も覚えてないし。 事故で死んだらしいだけどね」
軽く言う美夜だがそれは時間がたっているからだろう。
「だから、あの孤児院にはたまに帰るの。 パイロットになれたのもあの孤児院からの推薦状があったから。 国が援助してるのよあの孤児院」
どうやら、この国は凪が知っている日本とはだいぶ違うようになっているようだった。
軍島沖縄、独立機動艦隊、州制などだ。
まして、国が援助し、軍への入隊を推奨する孤児院など存在しなかったのである。
蒼の園、一体どんな所なんだろうと凪は思うのだった。
「ついたわよ」
美夜の言葉に凪が顔を上げるとそこには学校のような巨大な建物があった。
車から降りて、2人でロビーに入るとぱたぱたと40代後半ぐらいの女性が出てくるところだった。
「ただいま! お義母さん」
「あらあら、美夜ちゃんじゃない。 帰ってきたの?」
一言で言えば、やわらかい印象を受ける女性だ。
凪が会ってきた人で言うなら撫子がその、印象にもっとも近かった。
「うん、でもちゃんはやめてよ。 お義母さん」
「お母さん?」
凪が首をかしげると
女性はにこりと微笑み手を会わせながら
「あらあら、美夜ちゃん。 お友達?」
「あ! 神崎 凪です!」
「神楽坂 蒼樹です。 ここの管理責任者をやってます」
「蒼樹さんはね。 ここではみんなのお母さんみたいなものだからそう呼んでるのよ」
美夜が補足する。
とはいうがどう見ても20代前半にしか見えない容姿だ。
反則すぎる若作りに見える。
「2人ともゆっくりしていってね。 部屋は用意するから」
「あ、私達日帰りのつもりで・・・」
「せっかく帰ってきたのに美夜ちゃん・・・日帰りなの?
うると泣きそうになる蒼樹に美夜はため息をつくと
「3日ぐらい泊っていくわ」
「すぐに部屋を用意するわね」
ぱたぱたと走り去ってしまう蒼樹
しょうがないわねと美夜が蒼樹の後ろ姿を見送っているのを見てなんだか凪は温かい気持ちを感じる。
ソラがいたらなんていっただろうな・・・
そんなことを思いながら
施設の中を案内してもらっている途中。
「おお! 美夜が帰ってるぞ!」
「確保ぉ!」
「え? 何? きゃっ!」
どーんと美夜の背中にぶつかってくる3つの影
「相変わらず子供っぽい髪型だな」
「うるさい! 気に入ってるんだから別にいいでしょ洋介」
「いつ帰ってきたんだよ! あ! 銃見せろよ」
「子供が触るんじゃないわよ! 恵一!」
「相変わらずぺったんこ・・・」
「どこ見ていってるのよ! 美咲!」
みんな12~14ぐらいの少年と少女だった。
美夜の知り合いらしい。
「あ、美夜が困ってるから・・・」
やめようねと凪は引き離そうとするが恵一と呼ばれた少年が凪を見る。
「なぁなぁ、この人美夜の同僚か? パイロットなのか?」
「そうよ」
「ってことは教導隊か! すげえ!」
洋介と呼ばれた少年が目を輝かせる。
「でもぺったんこ・・・」
少し表情が乏しい女の子が言った。
「そうだな。ぺったんこだ!」
「ハハハ、ぺったんこコンビなんだな」
ゴゴン
2人の頭に美夜の鉄拳が降りた。
「いてぇ!」
「ずるいじゃないか! 言ったの美咲だろ!」
「美咲は女の子だからいいの」
「ひいきだ!」
抗議の声を上げる2人だが美夜は無視。
「あ、あの美夜この子たちは?」
「ほら、あんたたち凪に自己紹介しなさい」
「はいはいっと、相沢 洋介12歳! 将来は撃墜王!」
「雪村 恵一12歳! 将来の夢は美夜を撃墜しまくること!」
「さ、斎藤 美咲11歳・・・将来の夢は・・・特になし・・・」
「この子は神崎 凪よ。 凪、こいつらはね。 私がここにいた時、同じ班だったの」
「班?」
「うん、ここはね。 多数の班に分かれて生活してるの」
美夜の説明によると言うならば、集団生活の訓練のような感じらしい。
いじめなどの対策のため、班員は結びつきを強くし、いじめられた子がいたら集団で反撃を行う。
もちろん公式にはそんなこと認められていないがそんな裏の制度があるため激突こそあるがいじめなどはこの蒼の園には存在していないらしい。
「なぁなぁ! また、空の話してくれよ! ロシアの戦闘機ともやり合ったんだろ?」
「俺はドイツとやり合ったあの話がいい!」
「・・・東京の話・・・」
それぞれ美夜の手を引っ張る3人を見てしょうがないわねと笑う美夜を見て凪は少しうらやましく思うのだった。
東京のとある場所に立つ大統領官邸。
今、藤堂 真也はその中の一室でソファーに座り周りを見回していた。
「変わらないね。 ここも」
そう言った時、扉が開きスーツ姿の男が入ってきた。
「待たせたな真也」
「そんなに待ってないよ。 父さん」
合衆国日本大統領 藤堂は迎えのソファーに座る。
「話とはなんだ? 戦闘機のパイロットを止めて政治家になる決心がついたのか?」
「僕は飛ぶことはやめないよ。 話っていうのは父さんが進めている計画に僕を参加させてほしいんだ」
「何を言っている? 話が見えんな」
「はぐらかそうとしても無駄だよ。 僕は戦艦大和の艦魂に会い。 全てを聞いた。 未来ちゃんに聞いて父さんが紀伊と大和、そして、空母1隻を過去に送り込む計画をね」
「また、艦魂か・・・私は見えないものは信じないんだがばれているならしょうがない。 だが、真也お前の目的はなんだ?」
「僕が世界で1番のパイロットだということを証明する」
はっきりと真也は言い切った。
「くだらん理由だ。 私の力で戦闘機から・・・いや、軍から追い出すことだってできるんだぞ?」
「その時は、僕はあなたを生涯憎み続けますよ」
「・・・」
「・・・」
言葉は短かった。
だが、この2人はどこか分かり合っているのだ。
「必ず帰ってこい。 紫電改のデータ―収集が目的ということで三菱重工には話を通しておいてやる」
「ありがとう父さん」
真也は薄く笑みを作ると言った。
「光神のパイロット・・・風祭 美夜だったな。 お前が希望するなら過去行きに編成してもいいが?」
「美夜ちゃんは・・・いえ、美夜はここにいるべきです。 生きて帰れる保証もない戦争に待ってくれる人がいる彼女が行く必要はないから・・・」
「分かった。 だが、本人の希望は聞くぞ? 彼女も蒼の園の出身者だ」
「希望するなら・・・反対する理由はありませんよ父さん・・・」
静かに真也は言うとコップの水を飲んだ。
作者「お久しぶりの草薙ですが今回はあまり話ができませんなぜなら・・・」
艦魂「準備完了です」
艦魂2「やれ!」
艦魂「はっ!」
作者「ぎゃああああああ!」
ざくり、ギロチンにより作者首飛ぶ。
桔梗「まあ、そういうことや。 作者の首は飛ばしといかたらまってた読者は勘弁したってな? それで次回なんやけど」
作者「未定です」
桔梗「首がしゃべるなぼけ!」
作者「ぎゃああああああああああ!」
ズドオオオオオオオオオオン




