第287話 大元帥の決断
声が聞こえる・・・
「・・・で・・・なの?」
「・・・さ・・・僕・・・・だからね」
「ん・・・」
目を開けた未来は声のする方を向いた。
「あ、未来起きた?」
ツインテールの少女は言った。
「美夜?」
未来はベッドから上半身を起こした。
見ると藤堂も椅子に座り未来に微笑を浮かべている。
そして・・・
「やあ未来、大和へようこそ」
「!!!!!」
その瞬間、未来は自分が置かれている状況を知った。
なんと恐れ多くも大元帥の部屋の大元帥のベッドで自分は快方されていたらしい
「も、ももも申し訳ありません湊大元帥!」
未来は土下座した。
もう、地面に額をこすりつけるように
「こ、このたびの無断侵入等の罰は謹んでお受けします。 精神棒でも、ああ! なんなら切腹も」
「ちょっ! やめなさいよ未来!」
本当に小刀を手にした未来を慌てて美夜が止める。
「離して美夜! 私はとんでもないことをしたんです!」
「いいから刀をしまいなさいよ! 真也! 湊も早く止めなさいよ」
しかし、必死の美夜に対し二人は
「うん、面白い子だね未来も美夜も」
「見ていて飽きないよね」
と傍観者気分だった。
暴れる未来が落ち着いたのはそれから5分後、湊が気にしてないよと言うまで続いた。
そして、4人は椅子に座ると湊が紅茶を未来に出すと話が再開される。
「伝説の戦艦大和なんていうからどんな艦魂かと思ったけどまさか、僕ッ子だったとわね」
「僕の一人称が気になるのかい? 昔、大和にいた乗組員の言葉を聞いてからこの一人称が定着したんだよ。 まあ、大概の艦魂は私に直すんだけどね。 中には俺様と言っていた艦魂もいたよ」
「うわ、それはないわね」
美夜は過去に興味津津で湊に話を聞きまくっている。
湊もまた、過去を懐かしむように話を続けていた。
「ところで、艦魂ってなんで見える人と見えない人がいるの?」
ついには、艦魂の話まで美夜は質問しだした。
藤堂も少し興味があるのか顔を軽く上げた。
湊は微笑むと
「艦魂が見える人間は年々減っている。 それは分かる。 でも、艦魂が見える人間の基準は僕にもよくわからない。 艦を真に愛したものには見える等の所説はあるが研究する学者はいないからね」
実の所、合衆国日本でも艦魂に対する本は出ている。
だが、どれも人魚伝説のような根拠のないオカルト本である。
それは、艦魂達があまり、表に出たくないと言う意思が反映されているとも言われている。
艦魂が見えるものは艦魂の心を理解できるものという説があるがそれを信じるなら艦魂達の意志を裏切るようなことをする人間はいないはずだった。
「ただ、一つ言えることは・・・」
湊は寂しそうに
「僕らは呪われた存在かもしれないということだね」
「どういうこと?」
美夜が首をかしげる。
未来もそれを知ってかうつむいた。
「それはね・・・ん?」
湊はうれしそうに顔を上げた。
「どうやら、またお客さんのようだ。 今日はいい日だよ。 お茶と紅茶のどちらがいいかな?」
湊はうれしそうに立ち上がった。
「誰がきたんですか?」
未来が尋ねる。
艦の中なら全てを知る湊は
「君達も知ってる人だよ」
日向 恭介が目を開けるとそこは、暗い通路であった。
ここはどこだと思考が働くが一瞬のうちに違う感情が彼の中に現れた。
「帰って! 私あなたに会いたくない!」
凛の声が頭に響く。
明が死んだ時も自分は拒絶されたが今回の拒絶は前回以上に感じられた。
「くそ・・・なんなんだよ一体・・・」
せっかく元に戻りつつあった日常が再び壊れてしまう。
そんなことを日向は望んでいなかった。
共に歩んだ時間と同じように過ごしたいと・・・
たくさんの艦魂達と話をしてきた日向だが、多くはもういない。
戦死してしまったのだ。
そして、大日本帝国の艦魂達も今や、風前の灯となりつつある。
この紀伊の艦長になったその日から、この子とだけは最後までいようと誓ったのに・・・
「・・・凛」
日向が呟いた時だった。
「やあ」
声に振り返るとショートヘアーの女性が微笑を浮かべて立っていた。
「君は?」
「僕は戦艦大和の艦魂だよ。 凛の知り合いみたいだね」
「独立機動艦隊司令長官日向 恭介だ。 凛を知ってるのか?」
「さっき、会ったからね。 そうか、君が・・・」
何かを察したように湊は言った。
「?」
「いや、それより歓迎するよ日向長官。 まずは、僕の部屋に行こう。 お茶と紅茶はどちらがいい?」
「お茶がいいな」
「分かった」
湊はとんと日向の体に手を触れると光が当たりを包み、2人の姿は消えるのだった。
「あれ? あなたは?」
出されたクッキーを食べていた美夜達はいきなり転移してきた日向を見て慌てて立ち上がり敬礼した。
「お前らは・・・ああ、敬礼はいいよ」
「ありがとうございます」
3人はそういう椅子に座った。
日向も勧められた椅子に座る。
湊は簡易の台所に立ちお茶を作っている。
「うん、お茶なら玉露があるね。 温度は熱い方がいいかい?」
「いや、ぬるい方がいいな」
「分かったよ」
そんなやり取りの中、美夜が藤堂に小声で
「ちょっとどうするのよ真也! 大和に忍び込んだことばれたらまずいわよ」
「大丈夫だよ美夜ちゃん」
「その、自信はなんなのよ。 後、ちゃんっていうな」
「ひ、ひひひ、日向長官!」
声に美夜と藤堂が見ると未来が土下座していた。
「ちょ、何してるのよ未来!」
美夜が慌てて頭を上げようとするが彼女は頭を床にこすりつけている。
「こ、今回のことはどうか! どうか艦魂の司令部のみなさんにご内密に! 戦艦大和に
無断で入ったなんてばれたら殺されてしまいます! 美夜や藤堂さんのことも・・・」
「そ、そうです! 黙っておいてもらえないでしょうか!」
美夜も便乗して頼んでみる。
藤堂はそれをおもしろそうに見ているだけだ。
日向は3人を見ていたがふっと口を緩めて
「大丈夫だ。 言う気はないから心配するな」
「「ありがとうございます」」
藤堂も軽く頭を下げた。
「未来、もしばれたら僕の名前を出すといい。 上層部には僕は顔が効くからね」
「ありがとうございます!」
今度は湊に土下座する未来
100万の援軍を得た気分だった。
「うん、お茶が入ったよ。 さあ、話をしようか」
そう言ってだされたお茶を飲みながら
続きを話す。
艦魂は呪われた存在。
船を離れることもできずに一生、船に縛り付けられる。
恋すらも許されない存在なのだと・・・
「ひどい・・・」
美夜は未来を見ながら言った。
彼女はまだ、好きな人はいないようだがそれが本当だとすれば・・・
「一時は、艦魂は恋をしてはいけないと言う規律も作る動きもあったんだよ。 でも、僕は止めた」
「それはなぜ?」
藤堂が聞くと湊は微笑みながら
「確かに、艦魂と人間は結ばれたことは過去に一度もない。 少なくても僕の知る世界ではそうだ。 でも、可能性まではつぶしたくないんだ」
「可能性?」
湊は頷くと
「もしかしたら・・・もしかしたらだよ? 艦魂と人間が結婚して幸せな家庭を作った世界があるかもしれない。 やはり、死に別れた艦魂達もいたかもしれない。 例えば、沖縄に特攻するはずだった僕を守るように戦った戦艦の艦魂と人間が恋をしたかもしれない。 やはり、沖縄特攻の時大和の艦魂と人間が恋をして別れたのかもしれない。 この並行世界とでもいうのかな? そう言ったこともあるかもしれないから僕は禁止はさせたくないんだ」
「大和大元帥、でも近年規律こそ、ありませんがその風潮は強いです」
未来が言う。
「どういうことなの?」
美夜が聞くと未来が答えてくれる。
艦魂と人間は恋をしてはならない。
規律こそないがそれが艦魂達の常識となりつつある。
これが、今の合衆国日本の艦魂社会の常識となりつつあるのだ。
「それは悲しいことだと僕は思う。 だが、同時に完全に否定もできない」
湊は日向を見ると
「君はあの子を・・・凛をどう思ってるんだい?」
「俺は・・・」
もう、何年も一緒にいる女の子、様々な経験をして壊れそうになっている少女
大切な、誰よりも大切だと思える存在。
でも、それは恋なのか父親のような感情なのかまだ、分からない。
「普通と言う感情は上回ってると思う・・・だが」
「なるほどね」
湊はうなずくとお茶を口に流し込んだ。
「君達の行く末を見てみたくなったよ。 藤堂総理に頼んでもらえないかな? 僕も君達と行きたい」
「え?」
その場にいる全員が ? を浮かべた。
「分からないかな? 僕も大日本帝国を救うために過去の世界に行く。 そう言ってるんだよ」
それは驚愕の発言だった。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
ズドオオオオオオンン
ガガガガガガガガガガガガ
作者「助けてくれええええ!」
艦魂「方位2度修正! 撃ち方始めぇ!」
ドドドドドドド
作者「ぐああああああ!」
艦魂「目標に命中! 火炎放射器部隊進め!」
ゴオオオオオ
作者「あちちちちちちち!」
艦魂「まだです! 我々の怒りを思い知りなさい!」
美夜「な、何やってるの未来?」
未来「艦魂達の怒りの代弁です。1か月近くも他の作品ばかり・・・それも、高速で更新した罰なんです」
美夜「草薙の体ばらばらになってるけど・・・」
未来「ぬるいです! あの人はすぐに再生するんですから」
美夜「ま、まあほどほどにね」
未来「はい! 続けて戦艦部隊前へ! 塵も残さず消滅させます。 我々の怒りを思い知りなさい!」
艦魂達「おおおおおおおお!」
作者「ぎゃあああああああああ!」
こうして、草薙はしばらく沈黙することになるのだった。