第29話 決裂
「断る」
日向は銃を睨むようにして言った。
「そうか、なら死ね」
フレドリクは引き金を引いた。
目をつぶることなく日向はその瞬間を見ていた。
カチ
弾は出なかった。
そして、フレドリクは銃を下に下ろした。
「ふ、フフフ、アハハハハハ!殺すわけがないだろう?ここでお前を殺せば日本に攻め込むことになりイギリス侵攻が遅れる。断るというならお前達日本との決着は最後になるだろうな」
そういうとフレドリクは踵を返して扉を出て行こうとした。
「待て!」
日向が呼び止める。
「ああ、言い忘れていたがこの会談は俺とお前が会うために用意した茶番だ。残念ながら
父は来ないし誰も松岡や神の相手もしない。お前達が帰るのも邪魔しないから好きに帰るといい。それとエリーゼ!」
「はい」
声と共に現れたのは艦魂の少女だった。
長い金髪だが日向を見るその少女の目は冷たい。
その時凜も日向の傍らに現れてエリーゼを睨んだ。
「ほう、そいつがお前の戦艦の艦魂か?こいつは我がドイツの未来の戦艦の1つフリードリッヒ=デア=グロッセ。真の名はエリーゼだ。挨拶をしろエリーゼ」
「はい、よろしくお願いします。短いお付き合いになると思いますが」
エリーゼの顔は無表情であったがその目には憎しみが伺うことが出来る。
「…」
凜は何も言わずただ、エリーゼを睨みつけている。
2人の間に火花が散りそうな感じである。
「ふっ」
フレドリクはそのまま出て行った。
エリーゼもその後に続く。
「恭介…」
誰もいなくなった部屋で凜は日向を見た。
彼は怒りを隠しきれない表情でフレドリクが去った扉を見ていた。
そして
「日本に帰るぞ」
もはや事態はアメリカを倒すだけではすまない事態となっていることを認識させられる
出来事であった。
松岡と神は誰も現れない部屋で待ちぼうけを食らった。
日向が誰も現れないことを告げると2人は怒ったが日向は一刻も早く日本に帰ることを主張し
2人は誰とも会えないまま帰国の途に着いたのであった。
富嶽で東京に着いた日向は直ちに天皇に謁見を求めた。
さらに東條、山本といった未来を知るものが集められた。
そして、その話を聞いた3人は絶句した。
「その話は真か日向?」
天皇は驚きを隠せない様子で言った。
未来から現れたものがドイツにいる。
しかも危険な考えを持ち未来戦艦を伴って…
「はい、正直アメリカと戦っている事態ではないという状況ですがアメリカに説明しても
休戦は望めないでしょう。従ってこれからの方針ですが全力でハワイを取りアメリカへの休戦を迫るのです。もはや猶予はあまりありません。
ドイツがイギリスを落とせば次はアメリカです」
つまりこの戦いは日本がアメリカを休戦に追い込むのが早いかイギリスが陥落するかのどちらが早いかという勝負になる。
ソ連が解体される時間もあることからドイツのイギリス侵攻作戦には多少の余裕はあるだろうが予定を前倒しにしてでもハワイを攻略しなければならなくなった。
「結構なことではないか?未来の戦艦を持つドイツが協力してくれるならアメリカを無条件降伏にすることも不可能ではない。その連邦国家とやらを…」
東條が言った。
「東條!それは朕が許さぬ」
東條はびくりと縮み上がる。
「力で民を押さえつけて長く栄えた国はない。お前は日本を滅ぼすつもりか!」
天皇が怒鳴り東條は縮み上がった。
「お、お許しください陛下…私の失言でした」
「なら、すぐに日向のいう方針を取らぬか馬鹿者!」
「はっ!すぐにでも」
天皇はうなずくと次に山本を見た。
「山本」
「はっ!」
山本は天皇と目を合わせた。
「ハワイ攻略の準備はどうか?」
「予定では年が明けるのを待って作戦の実行に移る予定でしたが陸軍の戦車の数が足りません。
炎神の数は確保できましたが正直独立機動艦隊の援護なしではハワイ攻略は難しいという状況でございます」
天皇はうなずくと
「日向、そちは無論協力してくれるのであろうな?」
日向はうなずいた。
「もちろんです陛下」
日向は決意に満ちた目で言った。
天皇への報告を済ませ東京で山本は呉に、日向は沖縄に帰るために飛行場に東條の秘書が運転する車で山本と日向は今後のことを話し合っていた。
大本営の方は東條が天皇の言葉と共に説得することになるが日本はアメリカと休戦すれば
連合軍としてドイツと戦わなければならなくなるのである。
「大変なことになってきたな」
山本が言った。
「ええ、まさかこんな事態になるなんて…」
さすがに日向もこんな事態は予想していなかった。
アメリカと休戦をした後よく動いたとしてもノルマンディー上陸作戦を支援する程度
だと思っていたのだがこれはドイツと全面戦争になる。
未来の戦艦がいるとの事だから紀伊も尾張も死を覚悟して戦わなければならない。
唯一の救いはフレドリクのいた未来ドイツには核がなかったことだろう。
向こうが核を使うなら日向も覚悟を決めなければならない。
「大丈夫よ。私たちは必ず勝つから」
助手席に座っていた凜が振り返っていった。
「そうだな」
日向も窓の外を見ながら言った
運転している東條の秘書が怪訝そうに見たが山本は気にするなと言った。
「そういえば山本長官。そろそろ大和の改装が終わるはずですが?」
日向が言うと山本はうなずいた。
「ああ、確か明日だったかな?最後の公試運転が行なわれるはずだ。私は出席するつもりだが
日向君も来るかね?」
日向はぜひといいたかったが残念がらドイツの件を基地で説明しなければならない。
大和の生まれ変わった姿は琉球基地で見ることとなるだろう。
機動戦艦になったとはいえまだ、ミサイルは最低限しか組み込まれていない。
琉球基地でミサイルを積み込み、始めて大和は超戦闘力を持つ機動戦艦へと生まれ変わるのである。
そう世界最強の戦艦『大和』が生まれ変わるのだ。
日本の守護神として…
凛「よかった恭介…」
明「よくないわよ凛!新しい艦魂が出てきたじゃない!まさか…」
エリーゼ「…」
星菜「でた…」
明「あ!あああああんた!なんでここにいるのよ!」
エリーゼ「ここはすべての艦魂が出ることができると作者に言われてきました。文句はないでしょう?」
作者「いやぁ、そうなんですよみんな。ここもどんどんにぎやかになっていくなぁ」
カチカチカチ
作者「あ、あれ?皆さんなんでミサイルランチャーをこっちに向けてるの?わ、私は…」
凛&明&星菜「死になさい!」
作者「ま、また核!ぎゃああああああああああ」
ズドオオオオオオオン
エリーゼ「次回は生まれ変わった大和が出てきます。
ご意見・感想は毎日でも連続でもぜんぜんかまいません」