第281話 2つの選択
2044年の沖縄は軍島沖縄と呼ばれるほど軍の存在感が強い。
島の実に90%以上が軍の施設が占めている。
独立機動艦隊という組織があるのも原因の一つだが、合衆国日本では沖縄を南の防衛の拠点とし、島民を島外への移住を強く推奨し最終的には完全に軍の島とすることを目的にしている。
これは、日本が秘密にしている研究等も行うためである。
中華民国は大東亜の盟友だが南の防衛を厳かにはできないという考えからきたものだ。
もっとも、この島には今、機動戦艦は独立機動艦隊のものを除いていはいないという状況であったが実際は紀伊一艦のみしかいない。
それはそうとして、日向と藤堂は沖縄にある軍の施設のVIPルームで話を始める所であった。
他の兵達はいない。
あくまで1対1で藤堂は話す気らしかった。
「お帰りなさいというのはどうやら早計のようですね」
ソファーに座り藤堂は言った。
同じく日向もソファーに座りながら
「お帰りということはどういうことなんですか藤堂大統領」
「言葉通りの意味です。 紀伊を始めとする独立機動艦隊はアメリカに勝利する原動力となり合衆国日本の礎となりました。 しかし、あなたがたは未来への帰還を望んだ。 1945年のことです。 山本五十六首相は歴代首相に対して、紀伊が帰ってくることを記録に残しています。もちろん、口外無用の最重要機密ですが」
「山本長官が首相になったんですか?」
「ええ、本人は嫌がったようですが英雄が首相になることは運命だったんでしょう
「その山本長官は?」
「山本首相は72歳という年でお亡くなりになっています。 終戦から11年後のことです」
「そうですか・・・」
日向は寂しそうに言った。
72歳という年は今の医療技術から見れば若い部類に入る年だ。
「それで・・・」
藤堂大統領は両手を組みながら
「紀伊に何があったのか教えてくれますか? 記録とあまりに違うので」
「分かりました」
日向は話した。
ドイツが大艦隊を率いて過去の世界で世界統一を掲げ戦争を起こしていることを
アドルフ・フレドリクという男の戦いを・・・
藤堂大統領は相槌を打ちながらそれを聞いていたがやがて
「アドルフ・フレドリク・・・その男の名前は私は聞いたことありませんが1つ、つじつまがあう謎があるのです」
「というと?」
日向が聞いた。
「もう2、3年前の話ですが演習に出たドイツ艦隊が消滅する事件が起こったのです」
「それは・・・」
「ええ、過去の世界に飛び立ったのでしょう。 世界中は大騒ぎになり、ドイツやEUも艦隊が消えた海域を探しましたが何も残っていませんでした」
「その後、ドイツはどうなったんですか?」
「ドイツの首相を務めていた・・・ああ、ドイツは軍事政権だったんですがレイ首相はその艦隊消滅直後に行方不明になっています。 その結果、大戦力を失った軍事政権は崩壊し、今はドイツはEUの一つになっています」
「それで合衆国日本はどうしたんですか?」
「もちろん、我々は一つの仮定にたどり着きました。 ドイツ艦隊は過去に言ったんではないかという仮定です。 情報ではドイツのとある地方に隕石が落ちた情報があります。
あなた方の世界では日本に落ちたものがドイツに落ちたと我々は考えました。 日本にその隕石は発見できなかったのですから」
「まさか・・・」
「ええ、時をかける鉱石『クロノ』です。 もっとも、あなた方の情報を知った所でドイツを攻めることはできませんけどね」
「他の国に知られるとまずいからですね?」
藤堂は頷いた。
「今の合衆国日本はアメリカと正面から戦っても勝てるだけの戦力を持っていますが政治的に見てもその状況は最悪です。 したがって我々は表向きは黙殺します」
「それは、合衆国日本は過去の日本を見捨てると言うことですか?」
「日向長官、あなたの言う過去の日本はおそらく我々とはつながっていない」
「どういうことです?」
「未来は無数に存在すると言うことです。 過去を変えてもそれは新たな道が生まれ新たな世界ができる。 あなた方が帰ってきたことで私はそう仮定しました」
「それでも同じ日本です! それを・・・」
「日向長官」
藤堂はそういうと立ち上がり窓の前に立った。
「我々は今、過去に援軍を送る余裕はありません。 我々はロシアをけん制するためにも艦隊の戦力を減らすことはできないのです」
「ロシア!?」
日向は軽く目を見開いた。
そう言えばドミニクが言っていた。
軌道エレベーター開発に出遅れたロシアは軍事力を背景に好き勝手やっているのだと・・・
「正直に言いましょう。 紀伊がこの世界に残るなら歓迎します。 その場合、あなた方には合衆国日本の戦力として活躍してもらいたいのです」
「ですがそれは!」
その選択は過去の日本を見捨てることになる。
あの強大なドイツ神聖帝国に日本や連合国は対抗しきれるとは思えない。
「紀伊1艦が戻ったところで戦局を覆せると思っているのですか?」
藤堂が振り返る。
「・・・」
日向は一瞬、黙るが決意に満ちた声で言った。
「道は厳しく、険しいものになるでしょう。 ですが私は戦友達を見捨てこの世界で暮らすことはできません」
「あくまで、過去に戻るつもりだと?」
「はい」
「・・・」
「・・・」
藤堂と日向しばらくにらみ合うように見ていたがやがて藤堂がふっと微笑んだ。
「なるほど、1度決めたことを変えない性格、艦魂達にも慕われていたという山本首相の記録に間違いはなかったということですか」
「そんなことが書いてあったんですか?」
「私は艦魂が見えない。 しかし、息子が見えるんですよ。 半信半疑でしたがどうやら本当のようだ」
「紀伊の修理を受諾してくれるんですか!」
「修理と並行して改装しましょう。 合衆国日本の総力を挙げて最強の戦艦紀伊として復活させます」
「しかし、予算などは大丈夫なのですか?」
そう、どこの世界でも予算を通すならそれなりの手続きが必要となる。
しかし、藤堂大統領は問題ないと言う。
「実はあなたがた・・・正確には違うのかもしれませんが日本の復興にと莫大な金塊を残していったのです。 その1部は使いましたがまだまだ、使え切れたものではありません。 紀伊が戻ってきてから使い道を決めようと思って言いましたがそれが幸いしましたね」
その額は紀伊を改装してもあまりある予算だった。
分かりやすく言えば現実世界の日本の借金の100倍以上いう桁違いの金額である。
「ありがとうございます。 藤堂大統領」
日向は深々と頭を下げた。
「お気になさらず日向長官、改装の案は5日後にしましょう。 また連絡を入れますがその間に体調を戻しておいてください」
そう言い藤堂は沖縄を後にした。
彼にはやることが山積だった。
マスコミへの情報統制や各国への説明など紀伊の帰還による混乱を収束だ。
もっとも、紀伊が帰ってくる事態は想定積みだし手は打ってあるのが現実なので軽い修正をいれるだけという状況であったが・・・
「・・・」
日向は休むために与えられたVIPルームの窓から夜空を見上げながらアドルフ・フレドリクのことを思い出していた。
(次は負けないからな・・・絶対に・・・)
そして、紀伊が戻るまで耐えてくれと過去の日本の人々を思うのだった。
作者「フフフ・・・アハハハハ」
美夜「何よこいつ気持ち悪いわね」
藤堂「ついに狂ったんじゃない?」
作者「予告しようなんと次話は明日の0時だ」
美夜「・・・」
藤堂「・・・」
未来「作者さん・・・もう少し現実を見据えてください。 今まで一週間に1話だったあなたが2日連続なんてできるわけありません」
作者「ひどい! 頑張って書いたのに! すでに予約システムに入れてあるんだ!明日の0時には次話が来るぞ! 感想を2倍だ!」
藤堂「君さ調子に乗ってるよね。 感想に浮かれてさ」
美夜「そうよ。 消えて行った人もたくさんいるじゃない。 最終話まで何人残ってるのかしらね?」
未来「さすがにひどいです2人とも」
作者「うわああああ! 死んでやる!」
未来「ああ! 作者さん! その海はマリアナ海溝で・・・沈んじゃった」
美夜「あいつなら生きてるんじゃないたぶん」
藤堂「たぶんだけどね」
未来「作者さん・・・」
藤堂「さてとここからは僕らの番だけど明日も更新するならまあ、明日でいいよね」
美夜「そうよね。 今日はぐっすりベッドで眠って明日話しましょ」
未来「そうですね。 それがいいです」