第280話 紀伊・合衆国日本接触
「機動戦艦だと?」
美夜達の報告を受けた天鳳の山下艦長は仰天した。
続けて旗は日章旗、つまり日本の国籍を示す旗が示されているとのことだった。
「ほとんどの機動戦艦は皆、本土にいるはずだ。 他国の機動戦艦なら分かるがいきなり現れただと? アフリカに派遣されてる艦が戻ってきたのか?」
「はい、光と共に何もない場所からいきなりこの艦は現れたそうです」
「連絡はとっているのか?」
「やってますが通信設備を損壊している可能性があります。 返答がありません」
「よし、ヘリを飛ばすんだ。 発光信号で呼びかけてみよう」
そして、万が一にも備えて戦闘機隊を待機させておく。
とはいってもこの天鳳には今、40機余りしか搭載しておらず機動戦艦を相手にするにはいささか心伴わなかったが・・・
「う・・・」
激痛の中目を静かに開けた凛の目に真っ先に飛び込んできたのは
「凛! 無事か!」
日向 恭介だった。
彼は包帯をつけており、怪我をしてるのは明らかだった。
「きょう・・っ!」
激痛に凛は血だまりの中に再び落ちる。
「凛! そのままでいい! 痛い場所を言ってくれ! 特に痛みが激しい場所だ」
凛はそこを述べて行く。
艦魂が痛いと言う場所やおかしいと思う場所には異常があるものだ。
兵に伝達してその箇所に向かうように命令を下す。
まだまだ、余談は許されないが
「恭・・・介」
「しゃべるなって、痛いんだろ」
「うん・・・でも、なんで私・・・助かって・・・」
「ああ、それはな・・・」
あの時・・・フリードリッヒ・デア・グロッセの荷電粒子砲が放たれた時、日向は2つの命令を下していた。
時を越える鉱石を使用したいわゆるタイムマシン『クロノ』の使用と核の使用だった。
核はカモフラージュのための使用目的である。
結果的に成功したが失敗していれば核の炎に飲まれ全員死んでいた。
「むちゃするわね・・・恭介」
「まだ、安心できねえがな」
「え?」
凛がどういうことか聞こうとした時、兵がCICに飛び込んできた。
「長官、上空を2機の戦闘機が旋回しています」
「国は分かるか?」
「日の丸等の国籍を示すものはこちらからは確認できません」
「通信はできるか?」
CICの兵に日向が聞くと兵は首を横に振った。
「駄目です。 レーダーを始めとした機器は全損しています。 修理にどれほどかかるか見当もつきません」
「武器にいたってはほぼ、全滅です。 航空機も出撃は全不可能でしょう」
「完敗だな」
日向はふーと息を吐きながら椅子に座った。
「発光信号で戦闘機に呼びかけてみますか?」
「そうだな・・・どのみち、補足されてるんなら遅かれ早かれ艦隊がくるだろうし頼むよ」
古賀の助言を受け入れて紀伊は発光信号を空に向けて送った。
「ねえ、真也? あれ、発光信号?」
上空を旋回しつつ、ヘリが来るまで機動戦艦の監視に当たっていた真也と美夜は紀伊からの発光信号を見たのである。
「所属日本、艦名紀伊。 負傷者多数のため救助を要請する」
美夜が信号を読み上げた。
それは繰り返し続いている。
そして、その内容は天鳳にも伝えられた。
「紀伊だと!」
山下艦長は仰天した。
紀伊の名前を持つ機動戦艦の名を知らない日本人はいない。
紀伊は大東亜戦争を勝利に導いた艦で、今も沖縄のドッグにいるはずだった。
そう、100年近く1度もそのドッグを出たことはない。
そして、山下はある命令を思い出していた。
「おい、今から言う場所へ報告しろ」
紀伊という艦名の艦ともし、洋上で接触した場合必ず連絡せよ
そう言った命令が下されていたのだ。
その先というのは実は連合艦隊司令長官に直属という連絡先だった。
この後、藤堂大統領に報告が行くのはまだ、1時間以上後の話しである。
「ヘリはまだ、出撃できんのか?」
「後少しで終わります」
山下はなんだってこんなことになったんだと思いつつ、天鳳の進路を紀伊に向けるのだった。
その頃、上空を旋回していた紫電改と光神は徐々に煙が消えていく紀伊を見ながら
「ねえ、美夜ちゃん」
「ちゃんっていうな! 何よ」
天鳳に聞こえないように周波数を変えながら
「降りてみない?」
と、とんでもないことを真也は言いだした。
「はぁ? 馬鹿じゃないの!? 国籍不明の機動戦艦に降りるってあんた正気?」
「日章旗が見えるし、国籍は日本って言ってるじゃない。 それに、紀伊という艦名は興味あるな」
「それはそうだけど・・・」
100年前日本を勝利に導いた伝説の戦艦。
100年という月日誰もその姿を見ていないのだ。
興味を持つなという方が無理な相談だった。
「それに、僕らの通信機を使えば連絡もスムーズになると思わない?」
「否定はできないけど・・・ああ!もう、いいわよ! 降りればいいんでしょ!降りれば! なんかあったらまた、飛び上がればいいんだし」
「さすが美夜ちゃん、物わかりがいい子は好きだよ」
「ちゃんっていうな!」
「長官、戦闘機が降下してきます。 こちらに、着陸するようです」
「「降りてくるのか? 発光信号で後部、飛行艦甲板に着陸するように言ってくれ」
「了解」
日向の命令を兵は忠実に実行した。
そして、その内容を戦闘機の2人は見ると
その場所に機体を垂直着陸の態勢に持っていく。
紫電改と光神は場所を選ばず離着陸ができるのである。
「さてと」
紀伊の後部甲板に着陸した藤堂は風防を開けるとさっと外に降り立った。
「ちょっと真也! なんでいきなり出るのよ!」
美夜は光神から降りていない。
見るとヘルメットを上げ怒った顔の彼女がいた。
「だって、降りたんだから対面しないと分からないじゃない? 美夜ちゃんはそこにいていいよ」
「あんたがいるんだから私だって降り・・・」
「ドラゴン1! ドラゴン2! 状況を説明せよ!」
「やば!」
美夜はさっと冷や汗が出るのが感じた。
これは明らかに命令違反だ。
いや、正確には紀伊に着陸するなという命令は受けていないから違反ではないのだが・・・
「こ、こちらドラゴン2、現場の判断から対象との接触を図ります」
「なんだと! そんなことは許さん! 監視を続行せよ」
山下の言葉に美夜は内心勘弁してよと思いながら
「紫電改及び、光神に機体の不具合を発見。 そのまま、飛ぶのは危険と判断し着艦しました」
「着艦だと!まさか・・・」
「はい! 紀伊の後部甲板に着艦しました!」
これ、減棒で済むの!というか上官に殺される!
美夜は悲鳴のように言いながら通信をやけくそ気味に切った。
続けて、風防を開けると甲板に降り立った。
むろん、銃の携行は忘れない。
「ちょっと真也! 山下艦長めちゃくちゃ怒ってるわよ!」
艦を見回すように見ていた真也は振り返ると馬鹿にしたように微笑んだ。
「あれ? 美夜ちゃん怖いわけ? 兵は神速を・・・ってことわざがあるように情報も
早ければいい」
「ちゃんって言うな! というかこの艦の人間は?」
「来たみたいだよ」
真也が指さしたその先に数人の人影が見えた。
一人は包帯をつけ松葉つえをつきながら兵らしい男に支えられている。
残り二人は眼鏡をかけたいかにもできる女性という感じの女性でもう1人は血まみれの軍服を着る少女だった。
4人は真也達の前まで来ると敬礼した。
「日本国所属、機動戦艦紀伊の艦長日向 恭介大将だ。 君達は?」
2人はさっと敬礼すると
「合衆国日本空軍、教導隊所属藤堂 真也大尉であります」
「同じく風祭 美夜大尉であります」
2人が所属を名乗った瞬間、4人の目が見開かれた。
「合衆国日本だって? まさか・・・」
「風祭大尉、今は西暦何年の何月ですか?」
眼鏡の女性古賀が聞くと
美夜は不思議そうに首をかしげながら
「西暦2044年4月ですけど? 何か?」
古賀はさらに質問を重ねる。
「変なことを聞きますが答えてください。 太平洋戦争は日本とアメリカどちらが勝ちましたか?」
「日本ですよ」
真也が答える。
「では、ドイツは?」
「ドイツですか? 1945年に日本を含めた連合国に攻め込まれて敗戦していますけど・・・」
美夜が答えると古賀と日向は顔を見合わせた。
「長官、私達は賭けに勝ったようです」
「らしいな。 後は・・・」
日向は2人を見ると
「この国のトップに話がしたい。 なるべく迅速にな」
「トップって藤堂大統領ですか? さすがに私達にそんな権限・・・」
美夜が言った時、真也が言う。
「まずは、僕らの上の組織、この近くに空母を含めた機動艦隊がいます。 そちらに話を通してもらえますか? 通信設備が壊れてるみたいなので僕らの通信機を貸しますよ」
「すまないな」
日向が言うと真也は
「いえ、上官に僕らの無断行動を多めに見てくれるということを言っていただければ構いませんよ」
「ああ、伝えておくよ」
「所で、その子は艦魂ですか?」
凛を見て言うと少女は目を丸くした。
「私が見えるの?」
「私も見えるわ・・・ます」
美夜が言うと日向は苦笑しながら
「別に敬語はいらないよ。 普通に話してくれていい。 この艦では当たり前のことだからな」
「そ、それじゃあ、私も艦魂の知り合いがいるのよ。 今から連絡する天鳳って空母の艦魂」
「ねえ、聞いていい?」
凛が言う。
「何?」
「連合艦隊の・・・あ、太平洋戦争で戦った艦の中で記念艦や現役の艦はあるの?」
「あなたがそうじゃないの? まあ、私も詳しくはないけど確か・・・」
「太平洋戦争で戦った艦は戦艦、空母共に独立機動艦隊のものを除けば全て解体されてるよ。 ああ、でも・・・」
「大和は記念艦として沖縄にいるはずだけど・・・」
「撫子が!」
凛の目が驚愕に見開かれた。
「ああ、艦魂の真名ね。 ええ、1990年までは現役だったけどそれ以後はドッグの中で保存されてるはずよ。 一般公開はされてないけど・・・」
「そうか・・・また、会えるかもしれないんだ撫子に・・・」
「?」
美夜は首をかしげつつも日向達に通信機の場所まで案内するのだった。
合衆国日本、大統領、藤堂が天鳳に到着したのはすでに夕刻の時間帯だった。
大慌てで出向かえる山下を適当にいなしてから直接紀伊繋がっている通信機に耳をあてる。
「合衆国日本大統領藤堂です」
「独立機動艦隊司令長官日向恭介です。 負傷者の受け入れを感謝します」
2人は初めてその会話をする。
すでに、紀伊からは負傷者をヘリで沖縄へ搬送する作業が始まっていた。
「お気になさらずに。 それよりもいろいろ聞きたいこともあります。 よろしければヘリをだしますので沖縄へ来てもらってもよいでしょうか?」
「願ってもない話ですが1つ条件があります」
「条件とは?」
藤堂大統領が聞く
「紀伊の沖縄への曳航と修理についてです」
「沖縄への曳航はお約束しましょう。 ですが修理はあなたと会ってから決まることとなります」
「分かりました。 では、沖縄で」
それだけで通信は終わる。
藤堂大統領は来たばかりだと言うのにすぐに2人乗りの戦闘機に乗るとさっさと天鳳を後にしたのだった。
作者「合衆国日本現実でもできないかな」
真也「無理じゃない? 君の世界では無能の民主党ととかがいるらしいしね」
作者「むう、確かに民主党はさっさと解体しろとは否定できん」
美夜「あんた、そこまでいうなら政界に進出したら?」
作者「無理さ。 そんなめんどうなことはしないさ」
美夜「でしょうね」
真也「んsら君はニートだね」
作者「違う! しゃかいじ・・・」
美夜「どうでもいいわよもう」
作者「ガアアアアアアアアアアア」
ズドオオオオオオオオオオオオン




