第28話 超連邦国家構想
「2046年の世界だと?」
ヒトラーの山荘で松岡達と引き離された日向は別室にいたその男、アドルフ=フレドリクから驚愕の話を聞かされた。
「そう驚くなよ。ああ、敬語はもういらないよ。お互いにな」
そういいながらフレドリクは暖炉の前にある2つのソファーの内1つを日向に進めた。
「座れよ。残念ながら酒関連はない。タバコもな。父が嫌うんでな」
フレドリクの指すのは間違いなくヒトラーのことだろう。日向はソファーに座りながら
「俺はタバコも吸わないし酒もあまり飲まない」
「そうか?ならよかった」
フレドリクはどうでもいいというように2つコップに水を入れて持ってきた。
「ほら」
「ああ」
日向はフレドリクからコップを受け取るとフレドリクもソファーに座った。
「そう睨むなよ。説明はしてやるよ」
フレドリクは水を飲むと話し始めた。
「俺は2046年の世界から来たといったがお前達が来た世界からではない」
「どういうことだ?」
日向が聞き返すとフレデリクは分からないかと問うてきた。
「いや、分かる。日本がアメリカに勝った歴史…つまり俺から見るなら異なる2046年から
来たということだろ?」
フレドリクはぱちぱちと手を叩き
「正解だ。一応司令なんてものやってるだけのことはある」
フレドリクは微笑みつつ
「つまり俺はあんた達、独立機動艦隊がアメリカに大勝利を収めた世界から来たというわけだ。だからこの後のハワイ攻略作戦からアメリカを休戦に追い込むことも知っている。」
「日本は勝つんだな?」
日向が聞くとフレドリクはああとうなずいた。
「では2046年の日本はどうなっている?ちゃんと存在するのか?」
日向のいた日本は2042年に滅んだ。
そして、独立機動艦隊が戦っているのは未来にも日本という国を残すための戦いである。
「残っている」
とフレドリクは言った。
日向はほっとした表情になって微笑んだ。
「そうか…日本は」
しかし、フレドリクは急に睨むように日向を見て言った。
「だが世界は荒れている」
「なんだと?」
日向は顔を上げた。
「お前達独立機動艦隊の活躍で日本は大勝利しアジアは平穏に包まれた。
だが、ソ連という国は残りアメリカと日本を中心とするアジアとの間で冷戦が起こった。
「…」
それは日向のいた時代にもあったことだった。
日本は参加していなかったが…
「そして、ソ連が崩壊した後ロシア共和国が出来た。だが、その国も独裁国家と変わらない。2008年にグルジアを侵略したロシアはそれ以前にアメリカや日本が支持したコソボの
独立と同じだと言って2つグルジアの土地を独立させ、反発する世界と対峙した」
「…」
それも日向の世界と同じである。
「核はその世界ではどうなっている?」
日向が聞く。
「原子爆弾は俺達の世界にはなかった」
「原子爆弾がない?」
日向が怪訝な顔で聞くとフレドリクはうなずいた。
「ああ、戦後日本が国際連盟をアメリカと発足させた後、核の廃絶をうたったんだ。
日本は真っ先に核を放棄しアメリカもそれに習ったためソ連や他国も従わないわけには行かなかった。捨てなかったら世界の悪として見られるからな。核は全て国連で管理され核エネルギーは平和利用のみを許され核戦争が起こらないという意味では平和な世界だったんだろうな」
日向はフレドリクを見ながら
「だが、その未来は常に第3次世界大戦の危険性をはらんでいたわけだな」
フレドリクはうなずいた。
「ああ、核という抑止力のない世界はそうなる。お前がいた世界では?」
フレドリクが聞いているのは核があれば戦争は起こらないのかということだ。
「日本は水爆で滅んだ。それが答えだ」
「やはり人は愚かだな。国が多く存在すれば争いを起こす。数が少なければ
そんなことにはならないだろうに…」
「何が言いたい?」
日向はフレデリクのことを分からずに聞くと彼は笑んだ。
「ドイツはイギリスを陥落させソ連を解体しヨーロッパを制す。そして、アメリカを
解体する。お前達、つまり日本と俺達ドイツが戦うのは愚かだ。未来の技術を持つ日本とは出来れば戦いたくないからな。手を組まないか?」
「手を組む?」
日向は聞き返した。
「ドイツ第三帝国と大日本帝国。この2国で世界を手に入れないかと言ってるんだ」
「何!?」
日向は驚愕して聞き返した。
この男世界征服でもしようとでも言うのか?
「そう熱くなるな。それに考えてみろ?今の世界の情勢と現在の状況を。ソ連はもう終わりだ。ドイツはイギリスを陥落させるだろう。日本はアメリカの戦いに勝利する。だが、それはアメリカの無条件降伏でだ。日本がアメリカ本土に攻め込めばドイツもそれに呼応してアメリカに攻め込む。アメリカの国土は確かに広大だが核を10個も落とせば降伏するだろう。日本の核もそうだな。西海岸の都市に落としてくれればいい。こちらは東海岸を叩く」
「核は絶対に都市部には使わない!」
日向は怒鳴った。
「そうだな。確かにお前達独立機動艦隊は都市部に核は使わなかったな」
フレドリクはそれが甘いと言って笑みながら日向を見た。
「俺のいた2046年の世界では核ミサイルなどは存在しなかったからな。
作り方は大体分かるんだが完成にあと少しかかる。まあ、お前がそういうなら核を使わずにアメリカを制圧してもいい」
「そういうことを言ってるんじじゃ…」
日向は口を開いたがフレドリクは首を横に振った。
「考えろ。お前達がアメリカに休戦という形で勝っても世界は争い続けるんだ。
確かに日本はアメリカと並ぶ1大強国となったがどこかの国だかに兵を派遣して泥沼になっていたぞ?世界を2分すればそんな争いは起こらないんだ」
「だがそうなればその2国で争うじゃないのか?」
フレドリクはコップの水を飲むと足を組んだ。
「なるだろうな。だが、調整してやればいい。2国が激突しないように抑止力として核を保有する。そうすれば互いに手が出せずに偽りかもしれんが平和な世界が出来上がるんだ」
「占領した国がずっと言うことを聞くと思ってるのか?反乱だって…」
「なら連邦国家にすればいい。少なくても近年に独裁者となるべくものは皆殺しにした」
「スターリンのことか?」
日向が聞くとフレドリクはうなずいた。
「ああ、2008年頃にロシアで独裁者となっていた先祖も殺した。後の北朝鮮だが
日本が勝つ以上は独立は適わないだろうが出来れば先祖を殺しておいてほしい。
中東方面の独裁者の先祖もいずれは皆殺しにする予定だ」
「お前は狂ってる」
日向は立ち上がった。
「そうだな未来のドイツがタイムマシンなんて考えなければこんなことにはならなかっだろうな?知ってるか?2046年のドイツは軍事政権なんだ。首相となった男は争いの耐えない世界に嫌気がさし過去のドイツを勝たせて世界を平和に導こうと考え付いた。
そして、ヒトラーの子孫である俺が選ばれた」
「ヒトラーの子孫!?」
日向は目を丸くした。
「ヒトラーはベルリンで確かに死んだ。だが、愛人がいたんだ。その子孫が俺だ」
「そんなこと信じられるとでも?」
「別に信じなくてもいい。だが、今俺はこうしてヒトラーの義理の息子としてヒトラーの後継者の位置にいる。未来の技術をヒトラーに渡したら喜んで息子にしてくれたよ。そして」
フレドリクは立ち上がると銃を日向に向けた。
「!?」
日向は立ち上がろうとしたがその場から動けない。
「返答を聞かせてもらおうか?もし断るなら独立機動艦隊は敵となるのは確実だ。
なら、天皇の信頼を得たお前を殺しドイツは満州になだれ込む」
さあ、返答をとフレデリクは言うのだった。
凛「恭介!」
明「何してるの凛!助けなさい!」
凛「恭介には出るなって言われてるけどでも!」
星菜「あの男危険…」
明「私達が勝った世界も争いは続く…」
星菜「人が争うのはとめられないのかもしれない」
明「でもあのフレドリクの言う世界は力で人を押さえつける。そんな世界は…」
凛「それより恭介を!」
作者「大変なことになってきました。次回日向の答えは…あ、今回は攻撃どころじゃないみたいです。ご意見・感想お待ちしております」